ツイッター議員の多くはSNSの特性を活かせていない-SNSを市民目線のフェアな政策論争の場に | すくらむ

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 9月15日に「SNS+MEETING Twitter・Facebookって、宣伝効果あるの?ないの?」(きかんし・タツミラボ主催)が開催されました。第1部の西田亮介さんの講演と第2部のトークセッションの要旨を紹介します。


【第1部 講演】
 ツイッター議員のコミュニケーション
 ――定量分析からの考察
 西田亮介さん

 (立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授)


 ◆日本におけるインターネットの普及
  ソーシャルメディアの普及


 日本におけるインターネットの普及状況は、世帯で見て93.8%(総務省2011年『平成23年通信利用動向調査(世帯編)』)となっています。ソーシャルメディアは、グリーやミクシー、モバゲータウンなどは2,000万人以上のユーザー、ツイッターとフェイスブックは1,300万人以上のユーザーがいるとされていますが、正確な統計を出すのは難しく、それ以上いるのではないかと思われます。


 ソーシャルメディアの普及は、グリーやミクシーなどの娯楽的な側面が強かったものに対し、ツイッターやフェイスブックによる転職活用や災害時の情報収集など実用用途への利用が可能になってきています。


 ツイッターやフェイスブックは、速報性、双方向性、相互浸透性といった特徴を持ち、「間メディア性」を促進します。「間メディア性」というのは、メディア、ジャーナリズム、産業、社会の諸側面に影響を与え、ICTと社会の相互依存の関係性を強くしていくということです。


 ◆「ツイッター議員」の登場
   ――その特徴とコミュニケーション


 政治の世界では2012年1月14日現在でツイッター上に公式アカウントを持つ国会議員は214名で全議員の3分の1。私は小野塚亮さんとの共同研究(※西田亮介・小野塚亮、「ツイッター議員のコミュニケーションー――定量分析からの考察」『人間会議』2012年夏号)を実施し、伝搬性(情報が伝わる力=ツイッター上ではどれだけ「RT」されているか)と双方向性(ユーザーとのやりとりする力=ツイッター上では「@」を利用しているか)を分析しました。「ツイッター議員」をK平均法によるクラスタリング(似ている特性を持つ議員を近づけていく方法)して9つのクラスタに分割した後、近い特徴を持つグループを統合して4つのクラスタを作成しました。その結果は次のとおりです。


 ◎第1類型「双方向性が高く伝搬力も高い議員」11.7%
 →ソーシャルメディアの特性を活かした情報発信とコミュニケーションを行っている議員たち


 ◎第2類型「双方向性が低く伝搬力が高い議員」16.7%、
 →他のユーザーとのコミュニケーションには積極的ではないが、伝搬力は高いことが特徴。ツイート読者がその情報を再転送したくなるだけの価値を持つ情報発信を行っている。当選回数の多い著名議員や有名人議員など


 ◎第3類型「双方向性が高く伝搬力が低い議員」18.8%、
 →他のユーザーとのコミュニケーションに対しては積極的であるが、伝搬力を持つ情報は発信していない。


 ◎第4類型「双方向性が低く伝搬力が低い議員」53.1%
 →他のユーザーとの双方向のコミュニケーションに積極的ではなく、伝搬力のある情報も発信していない。


 以上のように、ソーシャルメディアの技術特性を活かせていないのは、ツイッター議員の過半数、53.1%を占めており、国会議員がツイッターを活用できていないことがわかります。また、全体的にみてもツイッター議員1日あたりのツイート数は第1類型の平均でも3.28回となっており、一般的にみても非常に少なくなっています。


 ◆公職選挙法による制約


 この結果はただ単に国会議員がツイッターを活用しきれていないと断定しきれるものではなく、公職選挙法による制約も考慮しなければならないのではないでしょうか。もともと公職選挙法は、金権政治の払拭と公平な選挙環境を構築するためにできたものですが、第142条、第143条、第146条等による選挙運動における利用可能メディアの厳しい制約により、選挙活動には各種インターネットの利用は現状では禁止されていて、あとで選挙の不法性を指摘されないように、ソーシャルメディアを使わない傾向があるのではないかと思われます。


 公職選挙法改正による選挙運動へのインターネット解禁について、今出されている「公職の選挙におけるインターネットの活用の促進を図るための公職選挙法の一部を改正する等の法律案」原案を通すことがよいとは思いません。インターネットの選挙運動解禁には賛成ですが、公職選挙法の理念の改正、短期的には第146条の撤廃をはかることが必要ではないかと考えています。公職選挙法と社会の実態との「乖離」がすすんでおり、いろんな制限を加えながらインターネット選挙運動を解禁しても、新たな利権化を生み出し意図せざる方向への帰結となる危険性があります。フェアな政策論争を行える状況を作ることが大切だと考えています。


 ◆ソーシャルメディア・ポリシー
  ――課題と可能性


 ソーシャルメディア・ポリシーについて。多くの企業や行政機関が定めていますが、日本においてはソーシャルメディア・ポリシーがあいまいで担当者個人に過剰な責任がかかっており、結果としてソーシャルメディアが活かしきれていないと思います。


 たとえば、日本の企業と外資系の企業のソーシャルメディア・ポリシーを比較すると、日本のN社ではまず個人情報を守りますという道義と責任を真っ先に持ってきており、自社ブランドの向上につとめると帰結しています。一方、外資系のI社では最初に新しいものを学びなさいとしており、その学んだものを社会に還元することを目標としているとしてます。どちらのメディアポリシーが利用者本位のものか明確でしょう。


 ソーシャルメディア・ポリシーの課題は、担当者の判断依存が生じており、円滑な運用の妨げやトラブル対応への遅れが生じていることや、従来のニュースフィードをそのままソーシャルメディアに流しているだけで、技術特性を活かせていないという点です。


 そして、可能性としては、コミュニケーションのルールと、担当者の責任を一定程度軽減する制度設計が必要ですが、それを乗り越えると双方向性と伝搬性を通して企業であればブランドイメージ、政治家であれば政策を練り上げて向上させ広めていける可能性が大いにあります。企業においては、ソーシャルメディアの技術特性を最大限活かしつつ、担当者の負担と責任を回避できる文言を社会と社内に公開するとともに、課題発生時に迅速に対応可能な意思決定ラインも事前に決めておくことなどが必要です。


 ◆小括


 最後に私の話をまとめさせていただきます。


 ◎情報技術の普及に伴って、それらを使いこなす国会議員が生まれた。


 ◎ソーシャルメディアによって国会議員本人(およびスタッフ)の意図とかかわりなく、情報を発信できてしまい、公人という性格上、それらが信頼できる情報であることを期待されてしまう。


 ◎機能不全の背景には、公職選挙法という制度的制約も存在する。現行の改正案では混乱と新たな利権化の可能性がある。理念の変更が必要。


 ◎ソーシャルメディアの円滑な運用には、ソーシャルメディア・ポリシーの策定が必要。


 ◎担当者の過剰な負担と責任を一定程度軽減しつつ、説明責任を果たし、ソーシャルメディアの技術的特性を最大限活かす制度設計が必要。


 以下、講演後の質疑応答です。


 Q ツイッターをすることと投票動向との関連性はあるのでしょうか?


 A 国会議員がアカウントを持ち始めたのはここ2、3年のことであり、相関性はまだはっきりとしているわけではありません。


 Q 「RT」されやすいのはツイートの中身の問題だと思いますが、内容の分析はしているのでしょうか?


 A そういう分析も始めているが、まずはツイートの量を増やしていかないと慣れ親しまれるとか、信頼性を得るということは難しいだろうと考えています。


 Q ツイッターは匿名、フェイスブックは実名ということでかかわりも変わってくると思いますが、フェイスブックの解析はされていないのでしょうか?


 A フェイスブックへのアクセスは複雑で独自のアルゴリズムがあり、人によってウォールの表示が違うので、定量分析がとても難しい。すべての投稿が表示されるというわけでなく、どうやら間引きされて表示されたりもしています。世界的に見てもフェイスブックを定量分析する研究はまだあまりされていないようです。


【第2部 トークセッション】
 ▼SNS活用事例
  前川史郎さん(原水爆禁止日本協議会)

http://www.facebook.com/#!/tiro.maekawa


 フェイスブックで友だちが1,800人を超えています。基本は「友達リクエスト」が来たら断らないでいます。自分の趣味の映画や友達との交流などをアップしつつ、その中に政治的な自分の主張などをおりまぜ、見る人も自分も楽しめるものにするよう心がけています。


 仕事で原水爆禁止日本協議会の新聞を作っていて、フェイスブックにもページをつくっていて、そこでの発信もリンクさせています。


 フェイスブックの面白いところは、写真を載せるとタグ付けして自分と友達をリンクさせていくことができること。また投稿したものにどんどんコメントをつけていくことができるので、それを大いに活用しています。今も自分の投稿に講演内容をコメント欄にメモしています。


 フェイスブックのほかにはミクシィとツイッターを使っていて、二つをリンクさせてミクシィでつぶやいたことを同時にツイッターに投稿できるようにしています。


 ソーシャルメディア利用で気をつけていることは、自分の中のメディアリテラシーを研ぎ澄ますこと。裏を取れないものについては拡散しないようにしています。


 それから、発信する内容についてだけでなく、自分の常識は大丈夫かという疑いを常に持つことを心がけています。


 ソーシャルメディアは今、試行錯誤の真っ只中という感じです。アナログな部分も大切にしながらやっていきたい。紙媒体もなくならないと思います。ネットも紙も、全部ものごとはつながっている。そのときどきのライフスタイルに合わせて方法を見つけていこうと思っています。


 ツールというのはいかようにも使えます。それよりも何を伝えたいかが大切なのではないでしょうか。


 ▼SNS活用事例
  原田あきらさん(日本共産党杉並区議会議員)
https://twitter.com/harada_akira


 当初、議員活動でネットを主に利用したのは自分のホームページだけでした。ネットのいいところはビラでは字数に限りがあるので書けないことも自分のホームページには書けることです。自分の個性を思いっきり出すことができます。またホームページはアーカイブで過去のものがしっかりと残るのがいいところです。


 3.11後に友人がツイッターに自分のアカウントを勝手に作ったので、それからつぶやき始めました。今はフォロワーが3,000人を超えています。


 ツイッターで気をつけていることのひとつは、書いてから1時間は寝かせること。もうひとつは140字制限ですが、それでも長いと思うので20文字くらいは削っていることです。


 フォロワーが増えていろんな人から文句を言われたり訪ねられたりするけれど基本はあまり答えていません。「炎上」したときは無視しています。


 ツイッターは検索機能が充実しているので、区議会議員はこれを大いに使うべきだと思っています。「#」で検索すると地域や人名にかかわるつぶやきが一気に出てくるので、ここからつながりを広げない手はないと思います。


 脱原発杉並の活動で一緒にやっている松本哉さんがツイッターでつぶやくことは、確かにものすごい勢いで広がります。しかし、松本哉さんがいつも言うのは、ツイッターが広がる背景にはリアルでのつながりの広がりがあり、それこそが重要だということ。リアルでの人間的なつながりがあってこそ、ソーシャルメディアでの影響力も持つということです。日頃のリアルでの付き合いがない人間は、ネットでもつながりを広げることはできないということです。


 ▼二人の報告をふまえて、西田亮介さんの発言


 ソーシャルメディアの使い方に正解はありません。大切なことは、目的を何にするかを明確にすること。ソーシャルメディアは目的に応じた多様な使い方ができるツールです。


 また、政治家にとって魅力的なのは地域の潜在的なニーズが検索できること。特に都市部の無党派層に対して、語りかけをするのに欠かせないのではないでしょうか。


 原田議員で許されることが他の人で許されるとは限りません。原田議員本人はツイッターであまり質問に答えていないと言われましたが、「@」のメンション率が5割となっていて、これはかなりフォロワーとの交流をしていることを示しています。また「RT」されているツイートが4割を超えている点もすごいことです。


 政治活動におけるソーシャルメディアの利用について、現状の公職選挙法でSNSを使うメリットは今のところあまり無いように感じています。現実に投票行動に結びついていないからです。だから議員もあまり進んで活用するようになっていないのが現状です。


 現実に活用されているホームページは発信者優位のもので、ソーシャルメディアは双方向性を持つものです。その違いをうまく活用していくにはどうすればいいのか――今つかんでいるところで特徴は3つあると考えています。


 1つは、大手メディアになかなか登場できない若手の議員がソーシャルメディアを活用しています。これが投票行動に結びつくかどうかはまだ結果が出ていないので未知数です。


 2つは、都市部の無党派層に影響力を持っているという点です。


 3つは、国政よりも地方議員が利用しているソーシャルメディアは影響力を持ちそうだという点です。


 ソーシャルメディアと既存メディアをリンクさせているところに面白い結果が出そうです。実際、ラジオのリクエストとソーシャルメディアをリンクさせているところなどがあり、メディアの垣根が取り払われつつあることを感じています。


 仮に市民の目線に立つなら、ソーシャルメディアは政策論争をするフェアな場になる可能性があります。市民と議員がやり取りをして政策論争をすることで、投票行動に大きな影響を与えることができるのではないかと考えています。


(by rikoyy)