すべての労働者に権利が保障されない社会で公務員だけ幸せになれるはずがない | すくらむ

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 ※「連合通信・隔日版」(2012年8月21日付No.8633)に、国公労連の岡部勘市書記長のインタビュー記事が掲載されましたので紹介します。【★「連合通信」の購読申し込みはこちらへ】


 「連合通信・隔日版」(2012年8月21日付No.8633)
 公務員バッシングとの闘い
 「働く者全体の権利擁護めざす」
   国公労連・岡部勘市書記長インタビュー


 国家公務員の給与を平均7.8%引き下げた「賃下げ特例法」に対する違憲訴訟が、8月に始まりました。国民の中には「公務員は高待遇だ」と批判の声も根強くあるなか、どう闘っていくのか。原告らが加入する日本国家公務員労働組合連合会(国公労連、全労連加盟)の岡部勘市書記長に話を聞きました。


 ──違憲訴訟を起こした理由は?


 この裁判は、国家公務員の置かれている無権利状態を司法に問う闘いです。賃金や労働条件は本来、労使が対等な立場で決めるのが原則です。民間の場合、ストライキを背景に交渉したり、交渉がまとまらないときは労働委員会を活用したりと紛争解決のためのシステムがありますが、公務員にはそれがありません。憲法で保障されているはずの労働基本権が法律で制約されているためです。その代償措置として、独立機関の人事院が給与などの労働条件を内閣・国会に勧告(人勧)していますが、2月に成立した賃下げ特例法では人勧制度が無視されました。特例法は憲法違反です。


 賃金の元は税金だからと言って、何でも政府のやり方に従うべきというものではありません。公務員も国民、労働者の一人です。


 ──国民の中には「公務員は給与が高い」と厳しい声もあります。


 今年の人勧によると、国家公務員の一般職の月額給与(平均42.8歳)は約37万円です。これは交通費を除く基本給と地域手当、扶養手当を含む総支給額です。年収(一時金を含む)に直すと、大体600万円になります。


 国税庁による民間給与実態調査結果(2010年は平均年収412万円)と比べられることがありますが、この調査はパート労働者も含んだもの。人勧の元になっている国家公務員の賃金統計には最低賃金ギリギリで働く非常勤職員は対象外です。比較対象の違うものを並べて議論するのは誤りです。


 裁判の原告の中には、勤続35年で手取りの給与が30万円を切っている正規職員の原告もいます。高給なのは、特権的人事運用のいわゆるキャリア官僚のごく一部の人たち。公務員だから給与がとりわけ高いわけではありません。


 ──給与は低くても、手当をたくさんもらっているという指摘もあります。


 職種によって爆発物の取り扱いや高所での作業などで手当が付きます。日額数百円程度で、限られた人たちが対象です。


 人勧で国家公務員の労働条件は随時、民間並みの水準に適応するように見直されています。むしろ予算の制約から超過勤務手当が支給されず、サービス残業が常態化しています。


 ──国の財政事情が厳しいから、賃下げはやむを得ないのでは?


 財政が厳しいのは確かにその通りです。しかし、公務員の給与が高くてそうなったのでしょうか。民間企業が業績悪化で賃金カットを提案する場合、会社はあらゆるデータを開示して赤字の原因や経営判断などの経緯や責任を明らかにしたうえで、「従業員の賃金を下げないと会社が持たない」と理解を求めるのが筋ではないでしょうか。


 株主配当や役員報酬には手をつけないで賃金削減だけを強行されたら、みなさんも怒るでしょう。それと同じで、政府が従来の公共投資拡大など「構造改革」路線を見直し、政党助成金や米軍への思いやり予算などを止めて、それでも「財源が足りない」と言うのであれば議論に応じる用意はあります。でも、一切説明はありません。


 ──なかなか公務員労働者の実態や思いが国民に広く伝わっていません。


 非正規雇用やワーキングプア(働く貧困層)が拡大するなど厳しい現状があります。もっと働く人たちの権利が守られなければいけません。


 組合に批判や激励の声が寄せられますが、国公労連は「自分たちの労働条件改善のためにも、全ての労働者・国民のみなさんの権利保障のために闘う」ことが結成以来の任務だと考えています。公務員だけが幸せになれるはずはありません。公務員は国民全体の奉仕者。ときの政府や政策が国民のためにならないと思ったら、われわれは声を上げます。そうした思いを共有する運動を組合員一人一人が広げながら、公務員に対する偏見・誤解を解いて、バッシングをはねかえしていきたいと思います。


 ──賃下げや退職金カット、定員削減、昇給幅の抑制など今後も厳しい闘いが続きそうです。


 「今年こそ正念場」と毎年言い続けている状況ですが、間違いなく歴史の転換点にあると思います。


 退職金や定員削減など交渉ごとなので、われわれの要求が全て実現するかどうかは運動次第です。だからと言って筋を曲げてはいけません。働く人が幸せになれるよう目標に向かって少しでも前に進む。常に原点を忘れない運動を続けていきます。