国際的にも歴史的にも不当な生活保護の扶養義務強化-貧困・餓死・孤立死を増やす生活保護バッシング | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ※全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)が作成した「生活保護の扶養義務に関する討議資料」がとても分かりやすかったので紹介します。


 生活保護の扶養義務に関する討議資料


                     2012年5月28日 大生連

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 ▲上の表は「扶養義務の範囲の国際比較」です。


 日本は、別世帯の親子・兄弟、その他の三親等内の親族に扶養義務を課しています。


 ヨーロッパ先進国は、親子であっても同一世帯(=保持義務)に限っています。そして、三親等は含みません。


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 ▲上の表は「生活保護の歴史」です。


 旧生活保護法までは扶養が優先されていました。しかし、扶養義務は明治時代の法律で、現状に合わなくなっています。


 現在の生活保護法は扶養の有無は関係ありません。


 扶養義務は生活保護の開始要件ではありません。生活保護を利用後、当事者のあいだの話しあいによっています。


 ◆日本の扶養義務


 扶養義務には「相対的扶養義務」と「絶対的扶養義務」があります。


 「絶対的扶養義務」には、「保持義務」と「扶助義務」があります。芸能人K氏は「扶助義務者」になります。


 「保持義務」は配偶者間と同一世帯の親子で子どもが未成熟(まだ働ける状況にない子)の関係で生じる義務です。「パンの一片いっぺんも分け与えてでも扶養をおこなう」(『生活保護の解釈と運用』)というものです。


 扶助義務者は、まず自分の生活を第一に考え、その上で当事者間の話しあいによって扶養援助を決めます。K氏の場合はこの手続きをふまえています。


 話しあいがつかない場合、保護実施機関が家庭裁判所に申し立てをします。K氏は母親との話しあいがついており、福祉事務所も扶養する金銭の援助額を了承していました。


 扶助額を正しく収入申告をしていれば返還はしなくてよいはずです。もし、保護費を返還するとすれば生活保護を利用している本人がおこなうものであり、扶養義務者のK氏が返還するというのは意味不明です。


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 ◆当事者間の実態を無視して扶養義務が強化された場合、どうなるか


 生活保護を利用している世帯の多くは親族も貧困世帯が多いのが現状です。K氏のような収入のある人は稀です。たいていは親族との交流がなく、「孤立・無縁」の中で生活している人が多いのです。


 K氏のケースは特殊な事例なのです。このケースを一般化して実態を無視し、強権的な扶養調査と強要をおこなえば、生活保護の利用をためらう人が出ることになります。そして、あらたな「水際作戦」となります。


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 ▲上の表は「生活保護の捕捉率の国際比較」です。


 日本の生活保護の捕捉率は20%(生活保護以下の世帯のうち生活保護で対応している率)しかありません。扶養義務の強要はこの補足率をさらに低下させます。


 ◆残る疑問


 女性国会議員は自らのブログでK氏の実名を出して「攻撃」「恫喝」していますが、もし、K氏の実名をこの国会議員が初めて出したとすれば、公務員の守秘義務違反ではないでしょうか。