国家公務員人件費が財政赤字の原因だから賃下げは当然? | すくらむ

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 ※引き続き、全労働省労働組合(全労働)の見解「理不尽な『公務員バッシング』に対して反論します」(2012年1月)を紹介します。


 理不尽な「公務員バッシング」に対して反論します


                  2012年1月 全労働省労働組合


 多くのメディアが連日のように「公務員バッシング」を続けています。


 日本社会が抱える諸問題は、すべて公務員のせいと言わんばかりの論調も少なくありません。


 もとより、多様なメディアが公務や公務員を厳しく監視し、その問題点を広く発信(批判)していくことは、民主主義社会にとって重要な営みです。ですから、行政(公務)の側も情報公開に努めながら、多くの正当な批判を受け止めて、よりよい行政運営に努めるべきです。


 しかしながら、昨今の批判の中には、20年前のことを取り上げてまるで昨日のことのように描いたり、統計や制度を意図的にねじまげて解説したりするなど、およそ公正とは言えないものもあります。


 このような事態は、多くの国民に行政(公務)に対する「誤解」と「偏見」を植え付け、真に必要な改革方向を見いだすことを困難にするおそれがあります。ついては、メディアが好んで報じる代表的な「公務員バッシング」を取り上げ、事実に即して考え方を明らかにします。


 ▼国家公務員人件費が、国の財政逼迫の原因となっているから、官が身を削る国家公務員給与の引き下げを速やかに行うべきである。


 国の財政状況はたいへん厳しく、その再建が重要な課題となっています。


 そうであるからこそ、このような財政状況を招来させた原因がどこにあるのかを見極めることが大事です。


 まず、確認したいのは、国家公務員人件費は大きく減少しているにもかかわらず、その一方で財政赤字がふくらみ続けている事実です。


 具体的に見ると、平成12年3月から平成22年3月までの10年間に、国家公務員(自衛官を除く)は約84万人から約30万人まで減少していますが、その一方で国債等残高は約493兆円から約855兆円にまで急増しています。


 このことからも国家公務員の人件費が財政赤字を増大させた原因でないことは明瞭です。


 逆に、国家公務員人件費は先進諸外国に比べ、きわめて少ないとさえ言えます。例えば、公務員数(地方公務員等も含めた総数)を比較した場合、日本は人口1千人当たりで31.6人であるのに対し、ドイツ54.3人、イギリス77.2人、アメリカ77.4人、フランス86.6人でOECD(経済協力開発機構)加盟国中最低です(下図参照)



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 結局、このような財政状況を生じさせた主要な原因は、財政構造自体(赤字構造)にあると言うべきです。加えてこの間、数次にわたって大型の緊急経済対策や為替介入などが求められたことから、大規模な財政出動を何度もせざるを得なかったことも影響しているでしょう。


 国家公務員人件費を財政逼迫の原因とする指摘は、こうした歪んだ財政構造を温存したいがためのカムフラージュなのではないでしょうか。激しい公務員バッシングを演出し、世論を誘導したい人たちの思惑が見え隠れします。


 いずれにしても、財政状況の悪化をめぐる正確な議論(原因分析)が全く進んでいないことが最大の問題です。


 ※全労働省労働組合の見解「理不尽な『公務員バッシング』に対して反論します」を項目ごとに順次紹介しています。(以下は紹介済みの記事です)

 ◆国家公務員は民間労働者より賃金が1.5倍も高い?-理不尽な「公務員バッシング」に反論します