国家公務員は民間労働者より賃金が1.5倍も高い?-理不尽な「公務員バッシング」に反論します | すくらむ

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 全労働省労働組合(全労働)が、「理不尽な『公務員バッシング』に対して反論します」(2012年1月)と題した見解を発表しました。この国公一般すくらむブログへの転載を快諾いただきましたので、きょうから各項目ごとの7回連載という形で紹介させていただきます。


 理不尽な「公務員バッシング」に対して反論します


                  2012年1月 全労働省労働組合


 多くのメディアが連日のように「公務員バッシング」を続けています。


 日本社会が抱える諸問題は、すべて公務員のせいと言わんばかりの論調も少なくありません。


 もとより、多様なメディアが公務や公務員を厳しく監視し、その問題点を広く発信(批判)していくことは、民主主義社会にとって重要な営みです。ですから、行政(公務)の側も情報公開に努めながら、多くの正当な批判を受け止めて、よりよい行政運営に努めるべきです。


 しかしながら、昨今の批判の中には、20年前のことを取り上げてまるで昨日のことのように描いたり、統計や制度を意図的にねじまげて解説したりするなど、およそ公正とは言えないものもあります。


 このような事態は、多くの国民に行政(公務)に対する「誤解」と「偏見」を植え付け、真に必要な改革方向を見いだすことを困難にするおそれがあります。ついては、メディアが好んで報じる代表的な「公務員バッシング」を取り上げ、事実に即して考え方を明らかにします。


 ▼人事院が公表している国家公務員(行政職)の平均年収は637万円。それに対して国税庁「民間給与実態統計調査」によると、民間サラリーマンの平均年収は412万円。単純比較で1.5倍もの給与を得ている国家公務員は「優遇」されている。


 公的な調査統計は多種・多様に存在していますが、それぞれの行政目的に即して設計(調査対象、調査時期等)されていることから、それを無視して利用することは適当ではありません。


 前出の国税庁調査は、租税収入等の税務行政の基本資料を得ることを目的としていますから、給与所得者のすべて、すなわち労働者1人以上を使用する事業所で勤務するパート・アルバイト等の非正規雇用を含むすべての給与所得者全員を対象としています。


 つまり、この統計の中には「半日勤務」の方や「隔日勤務」の方の給与まで含まれており、平均年収が低く出るのは必然です。


 また、国家公務員の場合、この間の定員削減、採用抑制の影響で若年層が極端に少なく、年齢構成はいびつになっています。こうした中で双方の単純平均をとれば民間給与の方が低くなる可能性が高いのです。


 他方、現在、国家公務員給与の官民比較で利用されている、人事院の「職種別民間給与実態調査」を見ると、公務と民間の同種・同等(役職段階、勤務地域、学歴、年齢)の者を対比させて比較する方式(ラスパイレス方式)を採用しています(約1.1万事業所、回収率約90%)。


 この方法は、国公法及び給与法が「職務給を原則」を定めていることからも妥当と言えるでしょう。もとより、非正規雇用労働者も官民比較対象に含めるべきとの意見もあるでしょう。この点では「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会報告書(座長:神代和欣横浜国大名誉教授、平成18年7月)が「非正規雇用及び派遣労働者は短期雇用が前提で、時給制が多く、賃金形態が常勤職員と明確に異なっており、官民比較の対象とすることは困難」と述べています。


 実際「常勤・非常勤(民間)」と「常勤のみ(公務)」と比較するのは、如何にも不合理です。「常勤・非常勤(民間)」と比較するなら、「常勤・非常勤(公務)」をもってこなければスジが通らず、この点でも適当な意見とは言えません。


 なお、公務員給与の在り方を不断に議論することは賛成です。


 その際、公務員の給与は、高ければ高いほどよいとか、低ければ低いほどよいというようなものではないので、各職務に応じた公正なものを設定すべきと考えます。


 とくに、公正の基準とは何なのか、考慮すべき要素や公正な給与決定のプロセスはどうあるべきかなどを広く議論し、その結果として導き出された給与に国民も、また国家公務員自身も納得できる仕組みが必要です。


(全労働省労働組合の見解「理不尽な『公務員バッシング』に対して反論します」より)