雇用保険・雇用調整助成金の拡充、解雇・雇止め防止など被災者等の雇用対策の強化を | すくらむ

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 ※東日本大震災における被災者等の雇用対策についての全労連の追加要請書を紹介します。


                               2011年4月14日
内閣総理大臣 菅 直人 殿
 (緊急災害対策本部・本部長)
厚生労働大臣 細川律夫 殿
                            全国労働組合総連合
                            議長 大黒作治


  被災者等の雇用対策の強化を求める追加的要請


 3月11日の東日本大震災発生からすでに1カ月、被害の甚大さ、広範さのもとで、復興の槌音はまだ弱々しく、いまだ多くの被災された方々が生活再建の光を見いだせず、避難所等で過酷な状況に置かれています。被災された方々の生活に政治が責任をもち、生活費や義援金の早急な支給など生活を支える総合的な対策の早急な具体化が求められています。


 同時に、被災地域においてこれ以上の失業・失職をうまない雇用維持の対策とともに、新たな雇用を創出するなど対策を総合的に強化し、被災された方々が生活再建に踏みだす基盤をつくることが緊急課題です。


 被災地域以外についても、エネルギー不足や被災地域からの部品・材料等の供給ストップなどによって、操業の縮小、部分休業がひろがっており、対策の強化が求められています。


 私たち全労連は3月25日に要望書を提出して、震災対策の当面する課題を包括的に示し、その実現を求めてきました。大震災後1か月という現時点に立って、前記要望書を追加・補強する立場から、以下のとおり要請し、その早急な実現を強く求めます。


                   記


 1.雇用保険制度を抜本的に拡充し、被災によって職場も喪失した方々などに対する生活保障をおこなうこと


 津波によって職場そのものを喪失するとか、港湾等の基盤に重大な被害を受けるなど、大量の失業・失職がうまれ、復興・事業再開までにかなりの期間を要する深刻な実態です。被災と同時に仕事も失い収入の道を絶たれた(大幅な減収となった)方々の生活を支える制度の抜本的な拡充が緊急課題です。


 雇用保険制度の拡充が検討されていますが、伝えられる基本給付の60日程度の延長では不十分です。「60日延長は阪神・淡路並み」と言いますが、それ以降に制度改悪が数次にわたっておこなわれており、見劣りする給付しか実現されません。全国的にも、エネルギー等の不足や被災地域からの部品、材料等の供給ストップの影響で解雇・雇止めなどがひろがりかねない状況であり、失業・休業に対する総合的な支援の拡充を求めます。


 雇用保険制度については、給付日数を大幅に延長し、1年超の基本給付に改善するよう求めます。待機期間の撤廃や給付水準と上限額の引き上げなど、生活を支えるに足る制度の拡充を早急におこない、その財源は国と大企業の負担引き上げによって賄うべきです。


 また、津波等による関係資料の逸失や原発被害による立ち入りの困難性にかんがみ、提出書類等の弾力的取り扱い、暫定支給を拡充するよう求めます。制度拡充の周知の遅れや避難生活の長期化も踏まえ、認定日変更の限度(56日)の撤廃や遡及適用などの弾力的措置を実施し、被災された方々に不利益が及ばないようにすることが必要です。


 非正規・不安定雇用が増大し、失業給付の対象外の労働者が増えているもとで、給付要件の緩和に止まらず、失業扶助制度を早急に整備することを強く求めます。特に、大震災によって失業・失職した方々への総合的な制度の拡充・新設は待ったなしの課題です。別添の要請書「被災者等の生活支援にかかる追加的要請」で強く要請していますが、当面、被災によって大きな被害を受けた勤労世代を対象に、生活費を支給する休業補償制度を早急に創設するよう強く求めます。


 2.雇用調整助成金のいっそうの拡充など、中小企業等における雇用維持を支援する対策を充実させること


 雇用調整助成金等については、被災地域のみならず、全国的にも雇用情勢の悪化が明白なもとで、中小企業等に対する支給要件をいっそう緩和し、雇用の維持に迅速に活用できるようにすることが必要です。


 特に被災地域においては、震災によって甚大な被害にあいながらも解雇・休業せず、事業再興に向けた懸命の努力を続ける中小企業が多く存在しており、そうした実態を踏まえ、助成要件を「経済上の理由」に限定せず、震災を直接的な契機とした場合にも拡大するよう求めます。津波等の状況を踏まえ、提出書類等の簡略化、更なる弾力的取り扱いをおこなうべきです。


 全国的な経済情勢の悪化を踏まえ、中小企業に対する支援策をいっそう拡充することが必要です。被災地域を重点にしつつ、雇用創出事業を強化するとともに、政府保証によって無利子・低利子で返済期間が長期の震災関連融資制度を整備すべきです。また、返済繰り延べ制度を抜本的に拡充するとともに、被災地域を主な活動拠点とする中小企業を対象に、社会保険料等の減免をおこなうよう求めます。


 3.解雇・雇止め等を防止する対策をいっそう強化し、被災地をはじめとした労働者の雇用を維持するとともに、休業等による賃金カットを防止する対策を強化すること


 大企業、業界団体等に対する指導をいっそう強化し、雇用の維持に最大限の努力を払うよう徹底して、便乗リストラを防止する必要があります。また、大企業等には下請け単価の切り下げを許さず、適正な対価の支払いを担保する措置を強く求めます。


 エネルギー問題や部品等の調達の遅れなどによる休業がひろがっているもとで、雇用調整助成金の活用などによって、賃金を維持するよう強く求めます。その一環として、3月25日付要望書でも指摘したように、計画停電による休業について賃金カットを容認した3月15日付通知(基監発0315第1号)を撤回するとともに、労基法第26条の規定そのものを「使用者の責に帰すべき事由」から「労働者の責に帰することができない事由」に改正して、労働者の責任のない休業による賃金カットを禁止する措置をとるよう求めます(中小企業には雇用調整助成金等によって助成)。特に、派遣や請負等の非正規、時間給労働者については、生活の維持に直結する深刻な問題であり、要件の厳格化にくわえ、雇用調整助成金の拡充、活用によって賃金カットを来たさない措置と強力な指導を求めます。


 4.被災地域等における雇用の創出、確保対策を抜本的に強化するとともに、その基本に直接雇用・常用雇用原則をすえて、安定した雇用を実現すること


 被災地域における営業・操業の早期再開・再生のための政府支援を強化するとともに、新たな雇用の創出・確保対策を抜本的に強化するよう求めます。


 その際、直接雇用、期間の定めのない常用雇用を原則にすえることなどによって、被災によって仕事を失った方々が生活不安から、派遣等の短期の低賃金就労や寮付き・住み込み等の不安定雇用への就労を強いられ、全国散り散りになることのないようにすることが必要です。住み慣れた地域での就労先確保、生活再建を基本とし、別の地域への転職を選択する場合にも、生活支援が前置され、とりあえずの落ち着いた環境のもとで、将来設計からの決断としてなすことが保障される必要があります。


 そうした観点から、派遣事業者等に避難所での窓口開設を容認した4月1日付通知などを撤回し、ハローワークの体制強化(全国支援とともに、必要な大幅増員の緊急実現)による手厚い支援によって、安定雇用を推進するよう求めます。住み慣れた地からの転職・転勤を拙速に拡大しかねない「『日本はひとつ』しごと協議会」については、中止を含めた抜本的な見直しをおこなうべきです。


 短期・有期の雇用を前提とした現行のトライアル雇用、実習型雇用等については、長期雇用の場合のみに助成する制度にあらためるなど、直接雇用、期間の定めのない雇用を推進する助成金制度に改変するよう求めます。


 5.復興・再生事業等における被災された方々の就労の確保と適切な賃金等を保障する措置を実現すること


 住み慣れた地域での就労の継続、確保をすすめるため、被災した地元中小企業への支援を抜本的に強化するとともに、当面する復興・地域再生事業等においては、震災等によって職を失った被災者、地元住民、地元企業の優先採用を義務づけるべきです。そして、公契約法の制定などによって、直接契約を原則(復興事業における安全衛生確保のうえからも間接雇用は排除されるべき)とし、適切な賃金と処遇を保障することを明確にしたうえで、積算単価に基づく賃金単価の明示と全額払い(希望者への即日現金払いを含む)を確実に担保すべきです。


 被災地域における当面の雇用を確保するため、復興事業に止まらず、例えば、傷ついた自治体機能の回復への人材活用や地域の連絡網とお年寄り等への配送サービスの確立、漁港や農道・農業用水などの維持・管理、地域パトロールなど治安対策の強化など、公的就労を大規模に拡大(そのため、緊急雇用創出事業等の要件見直し、1年超の雇用期間等の実現)するよう求めます。

                                         以上