「地域主権改革」は新自由主義路線そのもの - 住民生活守る自治とは対極 | すくらむ

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 ※「連合通信・隔日版」(2010年9月30日付No.8376)からの転載です。


 「新自由主義路線そのものだ」
 「地域主権改革」で晴山教授が講演
  住民生活守る自治とは対極


 民主党政権が進める「地域主権改革」について、行政学が専門の晴山一穂・専修大学教授は、「自公政権下で進められてきた新自由主義型の分権改革をそのまま引き継いでいる」と語り、住民の福祉や権利を拡充する「地方自治」の考えとは対極にあると批判した。建設行政に携わる労組や研究団体などが9月25日に都内で開いた会合で講演した。


 ●原点は第2臨調


 晴山教授は「地域主権改革」の原点が、1980年代前半に行われた「第2次臨時行政調査会(臨調)」にあると言う。第2臨調は「増税なき財政再建」をうたう一方、「自立自助」を強調して福祉関連施策を削減するとともに、今日の民営化、規制緩和路線の先べんをつけた。


 この路線は90年代半ば以降の「地方分権改革」につながる。「官から民へ」「国から地方へ」をキーワードに、地方財政の疲弊をもたらした「三位一体改革」や、「平成の大合併」を推進。福祉や教育の最低基準を定める「義務付け・枠付け」の見直しや、国の出先機関改革も必要だとしていた。


 70年代には東京都や京都府などの自治体が、老人医療の無料化や、国の基準を超える公害規制など「国の悪政への防波堤」として独自の施策を実施した。地方分権改革は、こうした例と比べ、「住民の生存権や社会権を強めるという『地方自治』の考え方を根本から転換するものだった」と晴山教授は位置づける。


 ●憲法に反する役割分担論


 昨年誕生した民主党政権は、「地方分権改革」に代わる「地域主権改革」を打ち出した。6月に閣議決定した「地域戦略大綱」では、義務付け・枠付けの見直しをはじめ、国の出先機関改革、自治体を広域化する「道州制」の検討、ひも付き補助金の一括交付金化などを盛り込んでいる。


 同教授は「自公政権下で進められてきた新自由主義型の分権改革をそのまま引き継いでいる。ある意味、徹底して純化しようともしている」と述べ、生存権の保障や社会保障の縮減につながる内容であると警鐘を鳴らす。


 「大綱」は、国の役割を防衛や外交に移し、福祉や教育など国民生活に密接にかかわる分野は住民の「選択と責任」のもと、地方の責任とする考え方に基づいているのが特徴だ。


 こうした役割分担の考えに対し、同教授は日本の憲法が第25条(生存権)、26条(教育権)、27条(勤労権)で社会権を定めていることに触れ、「生存権や社会権を保障するのは国と地方の双方の役割だ。国の役割を国防や外交に特化するのは、憲法に反する」と指摘。こうした観点に立った国の組織、出先機関改革の検討が必要と語った。