最賃引き上げは地域経済の立て直しの要 - 各地方最低賃金審議会の答申にあたって | すくらむ

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 ※全労連の談話を紹介します。


 最賃引き上げは地域経済の立て直しの要
  - 各地方最低賃金審議会の答申にあたっての談話


 8月6日の中央最低賃金審議会・目安答申から1カ月余、9月9日に沖縄県地方最賃審議会が結論を出したことで47都道府県すべての答申が出そろった。東京(821円)と神奈川(818円)が800円を突破し、最低額は佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄の九州各県と鳥取、島根、高知の8地方がいずれも642円に改定された。全国加重平均は、730円で昨年より17円引き上げられた。


 こうした各地の答申は、私たちの要求や、雇用戦略対話の「合意目標」からしても不十分であり、かつ、地域間格差を広げるという問題を含んでいる。しかし、不況を理由に賃上げ相場が抑え込まれた2010年春闘の経緯や最低賃金改定への使用者側の激しい抵抗があったことなどに照らせば、すべての都道府県で10円以上の賃金底上げを実現したことは、運動の反映であることを確認する。


 今年の中賃目安は、全ての都道府県での10円引き上げを基本に、最低賃金が生活保護水準を下回る都道府県ではその乖離幅の解消もしくは縮小を優先するというものであった。この中賃目安との関係で各地の答申をみると、目安に上積みする答申を多くの地方で実現した点が注目される。目安と同額もしくはそれ以下となった地方は5地方にとどまり、+2円から+6円の上積みを引き出している。審議会の中で、中小企業の厳しい状況はふまえつつも、「異常に低い今の最低賃金」は改善すべきという合意が広がった結果であり、賃金底上げを求める多くの労働者・国民の要求を大切にしてたたかってきたことの成果である。


 同時に、答申が示した最低賃金の水準はなお不十分である。東京の821円でも、月155時間(平均所定内実労働時間)働いても12.7万円にしかならず、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」(労働基準法第1条)からはほど遠い。あらためて、働くものの生活を支える最低限の生計費の検討や、生活保護基準をもとにした「正しい」最低賃金算定の必要性、全国一律時給1,000円以上と安定雇用実現の緊急性などについて、使用者を含めた社会の常識となるよう運動をさらに強めたい。


 この間の審議を通じて、最低賃金の大幅引き上げのためには、地域経済振興策、中小企業支援策の実施が不可欠であり、最賃と中小企業を改善する施策の具体化が、冷え込んでいる内需を拡大し、デフレ経済を脱却するための要であることが明白になった。


 そのことから政府には、最低賃金引き上げ効果を減殺する一方的な労働時間短縮や雇用削減などに中小零細企業が手をつけないよう、必要な経済対策・中小企業支援策の具体化を求める。


 全労連は、この間、国会に向けた最賃法抜本改正の請願署名と国会議員要請を柱に、中央・地方で数次の統一行動を配置し、審議会への意見書提出や意見陳述を行った。また、「最賃生活体験」や、東北、静岡、九州における「最低生計費試算」など、生計費に焦点をあてた取り組みも強めた。


 これらの取り組みによって、①時間給で10~30円、フルタイム換算で月額1,550~4,650円の「賃上げ」の獲得となり、②「最賃時給1,000円以上」を政労使合意を経た社会的目標とさせ、③隣県との賃金格差をなくす平準化の動きを広げ、④最低生計費に格差のないことを明らかにして全国一律最賃制への理解を広げた、などの結果に反映した。


 これらの到達点を確信に、秋の新最賃改定期での賃金底上げ運動を強め、公務員賃下げ阻止、年末一時金闘争へとつなぎ、春闘勝利の展望を切り開くべく、全労連運動への結集を呼びかける。


                      2010年9月13日
                      全国労働組合総連合
                      事務局長 小田川義和