2010-09-11 10:49:11

高齢者だけの問題ではない - 後期高齢者医療制度の根幹を温存する厚労省の中間とりまとめ

テーマ:医療・社会保障の問題

 ※「連合通信・隔日版」(2010年9月4日付No.8367)からの転載です。


 インタビュー高齢者医療問題
 どう見る 厚労省の中間とりまとめ
 「後期高齢者医療制度の根幹を温存」
 ――中央社保協・相野谷安孝事務局長


 後期高齢者医療制度に代わる新たな高齢者医療制度に向けて、厚生労働省は8月20日、「中間とりまとめ」を発表した。


 約8割の高齢者は国民健康保険(国保)に加入し、サラリーマンとして働く高齢者などは被用者保険(組合健保など)に入るというのがおもな柱。ただし、国保では75歳(または65歳)以上の高齢者について都道府県単位での運営とし、財政も別勘定としている。


 こうした「中間とりまとめ」の内容をどう見るか、中央社会保障推進協議会(中央社保協)の相野谷安孝事務局長に話を聞いた。


 ●医療費抑制の姿勢変わらず


 ――「中間とりまとめ」をどう評価するか?


 基本的な視点に問題がある。「中間とりまとめ」は後期高齢者医療制度について「かつての老人保健制度が抱えていた問題点を改善し、高齢者の医療費に関する負担の明確化が図られたこと」などは「一定の利点があった」と評価している。後期高齢者医療制度の根幹は温存するということだ。


 ――「高齢者自身に痛みを感じてもらう仕組み」は変わらない?


 75歳以上という年齢でくくって都道府県単位で運営し、高齢者が使った分の医療費が保険料にはね返るというのが、後期高齢者医療制度の仕組みだ。


 今回も、形の上では大半の高齢者は国保に戻るが、運営も財政も別建て。名前は国保でも、従来の国保とは異なり後期高齢者医療制度の仕組みはそのままだ。


 後期高齢者医療制度の導入にあたり、老人保健法を全面改正した「高齢者の医療の確保に関する法律」は、高齢者の「医療費の適正化を推進する」ことを目的に掲げている。私たちはこれを「高齢者の医療費抑制をねらったもの」と厳しく批判してきた。


 「中間とりまとめ」は同法について一言もふれていない。高齢者の医療費抑制という視点はそのままだ。


 ●国保広域化の問題点


 ――「中間とりまとめ」では、後期高齢者医療制度の廃止を契機に「国保の広域化」も打ち出された。


 民主党は、被用者保険も含め医療保険を地域保険で一本化することをマニフェストで掲げている。


 その土台づくりとして、現在は市町村単位で運営されている国保を都道府県単位にして、そこに協会けんぽを統合していくことが考えられている。組合健保も、大手企業を除けば都道府県単位になっているため統合は可能だ。これで約9割が地域別の保険になる。


 その第一歩として、先の通常国会でも国保の広域化推進などを内容とする国保法改正が行われた。


 これにもとづいて市町村は現在、広域化のための計画づくりを迫られている。


 ――国保の財政を安定させるには広域化は必要では?


 広域化によってねらわれているのは、保険料を統一するとして自治体一般会計から国保への繰り入れをやめること。これでは保険料がはね上がってしまう。


 規模を大きくすれば財政基盤が安定するのは確かだが、中途半端に都道府県単位にしても、人口規模などが違いすぎる。それなら国が統一すべきだ。


 ――ほかに広域化による問題は?


 国保の保険料減免には、国が行う法定減免のほかに自治体独自の減免がある。ここを統一しようとすると、「下」のレベルで統一されることになるだろう。


 そして、おそらく保険料は高い方で統一される。一般会計からの繰り入れがなくなることとあわせ、保険料は間違いなく高騰する。


 「広域化」「一元化」の一番のねらいは、医療保険制度を保険料のみでまかなう仕組みに切り替えていくことにある。この点に注意が必要だ。


 ●高齢者だけの問題ではない


 ――現役世代にも無関係ではないと?


 例えば、国保と協会けんぽを統合する場合、協会けんぽの傷病手当金や出産手当金などはなくす方向で考えられている。


 「保険料でまかない、その範囲内で利用する」という後期高齢者医療制度のやり方を、全体に広げることがねらわれている。そうなれば、保険料が高いと抗議しても「それなら医療費を抑えるように努力しろ」となってしまう。


 仮に医療保険を地域保険で一本化すると、保険料の事業主負担分が宙に浮く。企業が健保にお金を出す根拠はなくなってしまうのではないか。


 ●新たな差別も


 ――「中間とりまとめ」では被用者保険に移る高齢者もいる。ここでの問題は?


 約200万人が被用者保険に移るとみられているが、これにより新たな差別が生まれる。例えば、サラリーマンの子どもの扶養家族として組合健保などに戻る人は保険料負担がなくなるが、一人暮らしの年金生活者は保険料を払う。


 老人保健法の時と同じ問題が、また発生することになる。


 ●医療費抑制の転換を


 ――あるべき医療保険制度の姿とは?


 基本は、憲法25条に基づいた「誰でも安心して医療を受けられる仕組み」をつくること。そのために必要な費用は国が投入すべきだ。


 この間、国保への国庫負担は減らされてきた。民主党も野党時代、7,000~8,000億円を国保に投入すれば問題はかなり解決すると主張していた。せめて、この規模を国保に投入して財政の健全化をはかる。


 日本は、欧米並みに医療費にお金を回してもいいのではないか。これまで長く続いてきた医療費抑制政策の転換を強く求めたい。

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