世界経済危機の中でも大企業は内部留保を増やし続けている -09年度は前年比15兆円増の257兆円 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 一昨日、労働総研の労働者状態分析部会で、『2011年国民春闘白書』(学習の友社)の企画について議論しました。


 貧困を無くすために、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確立と、社会保障の拡充が急がれるわけですが、一足飛びに北欧のような「福祉国家」を目指すのは無理があるのではないかということで、少なくともフランス・イギリス並みの労働条件と社会保障施策をイメージしてみることになりました。


 なので今月末から来月にかけて、フランス・イギリスの現地調査を実施した上で、日本においてフランス・イギリス並みの働くルールと労働条件等を確立した場合、どれだけの雇用と内需が拡大されるかを産業連関表等で具体的な数字も出しながら、ディーセント・ワークのひとつのイメージを提起する予定です。


 そして、大企業の社会的責任と政府の役割を明確にして、とりわけ大企業の内部留保の社会的還元をはかることと、「小さな政府」と消費税増税・法人税減税路線への実証的反駁を重視することになりました。


 議論の中では、――民主党政権は結局、構造改革へ回帰しながら、「事業仕分け」にみられるような「小さな政府」路線となり、貧困解消への所得再分配強化とは逆の政策を打つ危険性が高まっているのではないか。「強い社会保障」を実現すると言って、貧困問題を逆手に取りながら、実際に打つ施策は、公的サービスの市場化を一層加速させたり、「地域主権改革」などによるナショナルミニマム破壊と自己責任地域社会の創出、そして、消費税増税で生まれる公的資金は、法人税減税の穴埋めと、「強い社会保障」を公的サービスの民営化・市場化で「貧困ビジネス」的に担う大企業に流用される危険性があるのではないか。そもそも、「小さな政府」で「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」を実現している国なんてあるのか? 「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」に近い国は北欧だと言えるが、北欧はみんな「大きな政府」だ。――などの意見が出され、それぞれ深めていくことになりました。(「小さな政府」の問題は、私がやらなければならないのですが)


 最後に、内部留保の2009年度の数字を労働総研で出しているので紹介しておきます。下の表にあるように、資本金10億円以上の大企業の内部留保は、世界経済危機の中でも、2008年度の241兆8,742億円から2009年度の257兆7,183億円へ15兆8,441億円(6.5%)も増やしています。全企業の内部留保は、2008年度の428兆5,834億円から2009年度の441兆228億円へ12兆4394億円(2.9%)の増加です。


 2008年度から2009年度の1年間で積み上がった大企業の内部留保15兆8,441億円は、年収500万円の労働者316万人分の給与にあたります。大企業の内部留保のほんの一部を活用するだけで雇用を増やし、内需を拡大することができます。


 『日本経済新聞』(2010年5月24日付)でさえ、「3月末の現預金と短期保有の有価証券を合計した手元資金は63兆円と過去最高を記録。日本の2010年度予算の一般歳出(53兆円)を上回り、企業は空前の金余り状態にある」と報道しているのです。


すくらむ-内部留保


(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)