※「連合通信・隔日版」(2010年7月27日付No.8353)からの転載です。
時の問題/人事院が不当労働行為!?/50歳代後半層の賃下げを表明/データ示さず説明も不十分
人事院が今年の人事院勧告で、50歳代後半層の賃金を一律に引き下げようとしています。労働条件の改悪となるにもかかわらず、労働組合に対して引き下げの必要性を示すデータを提示せず、まともな説明も行っていません。民間であれば、完全な不当労働行為です。労働基本権の代償機能を果たすべき人事院としてあってはならないこと。今後、団体交渉・協約締結権が付与されるとしても、同様の事態が繰り返されるのでは、と危惧されます。
●政府方針に追随か
人事院勧告は、国家公務員の賃金改定幅などを提起するもの。民間企業の賃金実態を調べ、民間より低い場合は賃上げを勧告する仕組みです。勧告は例年、8月上旬に出されます。
人事院は、連合の公務員連絡会や全労連の国公労連などと「交渉」を行っています。代償機関として、労働者・労働組合の意見を踏まえて努力することが求められているためです。
今年の交渉で人事院は、給与も一時金もマイナス較差になりそうだとの感触を表明。特に、給与でマイナス較差が出た場合、50歳代後半層を重点にして賃下げする意向を表明しています。「50歳代後半層では公務の給与水準が民間を大きく上回っている」というのが理由です。
●民間では許されない
公務員賃金は民間準拠ですから、民間の実態を踏まえること自体は必要です。しかし、人事院には、なぜ民間で50歳代の賃金が低いのかを説明する義務があります。出向や転籍などによって民間賃金が低くなっている可能性も考えられます。そうした事情をきちんと説明し、納得を得るよう努力すべきです。
民間企業では、データの提示と納得を得る努力がない場合、不誠実団交とみなされます。不当労働行為ということです。
たとえば、京都府医師会による不誠実団交事件。東京高裁判決(1999年11月)は、ベアゼロ回答の理由について「(医師会は)客観的な裏づけ資料を示して十分説明する等して納得が得られるよう努力すべきであるところ、示した資料はベアゼロの根拠としては不十分」と指摘し、「既定の結論を押し付ける不誠実な態度」は不当労働行為だと断じました。
今回の人事院の姿勢はこの京都医師会と同じ。人事院が不当労働行為まがいの行いをするなど、あってはならないことです。