労働者派遣法改正法案に反対する声明(非正規労働者の権利実現全国会議) | すくらむ

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 ※非正規労働者の権利実現全国会議の声明を紹介します。


 労働者派遣法改正法案に反対する声明


 1 2010年4月6日、政府は労働者派遣法改正法案を衆議院に提出し、審議入りしました。派遣労働者はいつ雇用を打ち切られるかわからない不安定な状態のなかで正社員に比較してきわめて劣悪な労働条件の下で日々働いています。私たちは派遣労働をはじめとする非正規労働に従事する者の権利擁護のために全国の裁判所で活動する弁護士や研究者、争議当事者、市民等で構成されている団体です。


 私たちは、裁判活動や相談活動などをつうじて得た派遣労働の現状認識を踏まえ、今回の改正法案は派遣労働者の救済にとってきわめて不十分なものであり、国会において真の意味での改正がなされない限りその成立には断固反対であることを表明します。


 2 そもそも、労働契約は労務を提供する者と賃金を支払う者が対向関係にあるのが本来の姿であり、労働者に対して指揮命令する者が雇用責任を負わないことは労働者保護の観点から好ましくありません。仮に許容できるとしても許容対象はごく例外的な場合に限定されなければなりません。派遣労働が正規雇用の代替として機能することを認めることは慎まなければなりません。こうした観点から考察すると、今回の改正法案はきわめて不十分な内容となっています。


 3 今回の改正法案は、登録型派遣の原則禁止や製造業派遣の原則禁止を謳っていますが、その実体は登録型派遣や製造業派遣を温存するものです。登録型派遣は「専門」26業務については濫用の危険性が薄いとして禁止の例外としていますが、現行の26業務にはけっして専門といえない一般的業務が多数含まれており、このままでは登録型派遣を原則廃止したなどとは到底言えません。


 また、製造業派遣についても、「常時雇用する労働者」については派遣を認めています。改正法案において、「常時雇用」は「期間の定めのない雇用」とは区別されており、「常時雇用」が有期雇用を含むことは明らかです。改正法案には常時雇用の定義規定がなく、短期の有期雇用契約についても「常時雇用」であるとして濫用される規定となっており、大変問題です。


 4 今回の改正法案は、上記のとおり、登録型派遣や製造業派遣の存続を温存するばかりか、現行制度よりもさらに派遣労働を固定化する内容も含んでいます。「専門」26業務に従事する期間を定めないで雇用される派遣労働者については、従来派遣期間が3年を超えた場合に認められていた派遣先の労働契約申し込み義務が撤廃されています。派遣労働の固定化を認めるこうした改悪は許せません。


 5 今回の改正法案は、あらたに派遣先の直接雇用申し込みみなし規定を創設しました。現行制度の派遣先直接雇用申し込み義務規定が派遣労働者の救済に機能しないことを是正しようとするものです。しかしながら、直接雇用申し込みみなし規定が認められる場合は規定上狭く限定されているだけでなく、「専門」業務や「常用」雇用の濫用によって、違法派遣の実態が隠蔽され、直接雇用申し込みみなし規定の適用対象がさらに狭く限定されてしまうのです。直接雇用申し込みみなし規定が有効に機能する場合がどれだけ存在するか極めて疑問と言わざるを得ません。


 また、今回の改正法案は派遣先の直接雇用申し込みみなし規定が認められる要件として派遣先が違法派遣であることを認識していることを求めています。これでは、派遣先が違法であることを知らなかったとして言い逃れし派遣労働者の迅速な救済を阻害することになります。


 さらに、派遣先の直接雇用申し込みみなし規定が認められたとしても、その効果は従来の劣悪な条件下における不安定な有期契約の存続が認められるにすぎません。派遣先との間で成立した有期労働契約が期間の満了をもって雇い止めとされる危険が大きいといえます。派遣先との間で成立する労働契約は期限の定めのない契約とすべきです。


 なお、違法行為をした派遣先企業に対しては刑事罰も科すべきです。


 6 今回の改正法案は、わが国において派遣労働が拡がる大きな要因となっている正社員と派遣労働者の労働条件の格差の是正にむけて有効に機能する規定が存在しません。改正法案は、派遣元に対して、「同種の業務に従事する派遣先の労働者に賃金水準」との均衡考慮配慮義務を課しましたが、これだけでは具体的規制の基準として機能することは期待できません。派遣先正規労働者との均等待遇確保を図る具体的な規制規定を明示すべきです。


 7 上記のとおり、今回の改正法案は派遣労働者の処遇改善のために有効に機能することを十分に期待できないものですが、さらに、施行時期について「登録型派遣の原則禁止」、「製造業派遣の原則禁止」については3年以内、さらに登録型派遣については施行日から2年間は暫定措置として適用するとしています。 規定によっては3年ないし5年もの長期の猶予期間を設けており、到底認めることはできません。他の規定同様、改正法公布の日から6か月以内の施行とすべきです。


 8 私たちは、今回の改正法案について到底このままのかたちで成立することを認めることはできないのであって、国会において真の意味での改正がなされない限りその成立には断固反対であることを表明します。


 派遣労働者の権利を蔑ろにする現行派遣労働法の下において、各地の裁判所において、派遣労働者の権利救済に背を向ける判決・決定が相次いでいます。私たちは、国会において、劣悪で不安定な状態で働き続けている派遣労働者の権利がきちんと擁護される派遣労働法の真の意味での改正を早期に実現することを強く求めるものです。


   2010年4月6日 非正規労働者の権利実現全国会議第3回集会参加者一同