ワンストップの会が国・都へ「公設派遣村」を受けての要望書提出、「中間総括」発表 | すくらむ

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 ※ワンストップの会(年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会)が本日、「中間総括」を発表するとともに、国と東京都に対して「年末年始の生活総合相談事業を受けての要望」を提出しましたので紹介します。


                             2010年2月1日

        ワンストップの会・中間総括


 1.「つなぐ・つながる総行動」として年末年始行動を実施


 (1) 私たちは、昨年の「年越し派遣村」を一つの契機に、その成果と教訓をひろげ、派遣切りや解雇等で仕事や住まいを失った人々へのセーフティネットを構築しようと、共同したとりくみをひろげてきました。貧困と格差のひろがり、弱肉強食の「構造改革」路線への国民の強い怒りが自公政権を退場に追いこみ、新たに誕生した鳩山政権は、「年越し派遣村を繰り返さない」と、ワンストップ・サービスの構築に乗り出しました。こうしたもとで、昨年の「年越し派遣村」に結集した実行委員やボランティアを中心とした私たち有志は、「年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会」(略称「ワンストップの会」)を2009年11月に結成し、活動をすすめてきました。


 (2) 政府と東京都の「年末年始・生活総合相談」事業(以下、「公設派遣村」という)は、①年末年始にふたたび特別対策が必要になったことは、派遣切りや解雇等で仕事や住まいを失った人々への日常的な支援の遅れを示すものではありますが、②公的機関(政府や自治体)が屋根と食事を提供し、生活再建の場を確保したことは大きな前進だといえます。しかし、③その内容についていえば、「生活総合相談」と銘打ったにもかかわらず、相談態勢が極めて弱かったことをはじめ、後述するとおり、いくつかの問題点を抱えています。④総括をきちんとおこない、今後の恒久的なセーフティネット構築に活かしていくべきと考えるものです。


 (3) 「公設派遣村」は当初、①500名という人数制限や、②12月30日終了で12月31日以降の対策がなかったこと、③「求職中の生活困窮者」という要件が場合によっては大量の受け入れ拒否を招きかねないものだったことなどから、私たちは東京都と折衝し、いくつかの要件緩和を実現しました。その到達点を受け、私たちは①宣伝を徹底しておこない、「公設派遣村」に多くの人々をつなげていくこと、②利用者とつながり、生活再建の情報を提供・支援していくことを目的に、「つなぐ・つながる総行動」と銘打って、年末年始以降の活動をすすめてきました。現時点で振りかえれば、この方針は正しかったし、利用者の生活再建に大きな役割を果たすことができたと評価するものです。


 2.私たちの宣伝で、「公設派遣村」の利用者は900名を超える


 (1) 東京都が「政府の特別対策の一環」という消極的な姿勢を変えないなかで、ハローワークで受付票をもらい、実際の受付はハイジアでおこなわれるという変則的な形態となったため、大久保公園に出現した私たちの「年越し大相談会」は中間地点として、「ハローワーク→大久保公園→ハイジア」という大きな流れがつくりだされました。大久保公園で相談・学習した利用者が「ノイエ本」(正式名称:「路上からできる生活保護申請ガイド」、発行:ホームレス総合相談ネットワーク)を持って次々と「公設派遣村」に入っていったのです。


 (2) 私たちは新宿をはじめとした主要駅頭や繁華街、ネットカフェや公園などで1万枚を超える宣伝チラシを配布し、「公設派遣村」の利用を呼びかけました。この活動が900名を超える利用者につながったと確信しています。ビラ配布や誘導などには、チラシをみて駆けつけた若者を含め多くのボランティアが協力してくださいました。そうした草の根の力によって、今年の活動も支えられたと感謝しています。


 (3) 昨年と比較すればマスコミの取り上げ方も小さく、政府や東京都が街頭宣伝等をおこなわなかったなかでも、900名を超える利用者があったことは、東京の主要駅頭が毎晩、「派遣村」的な様相となっていることに示されるように、一昨年秋以来の雇用破壊がいっそう深刻化している現実の一端を物語るものです。宣伝が行き渡れば、数倍の利用者があっても不思議ではない厳しい状況がひろがっているのです。


 3.実数650名近い相談を受け、生活再建の方途決定を支援


 (1) 私たちワンストップの会が実施した相談活動には、オリンピックセンターを出た1月4日午前までに実数で550名強、今日までに約650名の利用者が相談しています。900名超の利用者のうち、東京都の運営のまずさや年明けの臨時的仕事の関係から大田区の宿泊施設に移動・宿泊しなかった約270名(うち100名超がワンストップの会の相談利用者)を除くと、85%程度が私たちワンストップの会の相談に頼ったことは重要な到達点です。


 (2) 私たちは当初から、「公設派遣村」への協力を東京都に申し出ました。しかし、東京都は受け入れず、年末の大久保公園の大相談会に続いて、1月1~4日にはオリンピックセンター前にバスを配車し、移動バスでの学習・相談活動という変則的な対応を取らざるを得ませんでした。ところが、東京都の運営のまずさへの怒りが高まるなかで、1月4日午前になってオリンピックセンター内への立ち入りが認められ、3回に分けた利用者集会では「生活再建のために、耐えて移動しよう」という呼びかけをおこないました。その後は様々な制限を受けながらも、大田区の宿泊施設内で相談活動を積極的に実施しました。相談員の人数や時間の制限から近隣ホテルの会議室での相談活動もおこないました。こうしたなかで、「ワンストップの会の援助があったから、私たちは生活保護を受給するなど、生活再建のメドがついた」と、多くの「公設派遣村」利用者から感謝の声が寄せられています。普段からこうした相談活動にかかわっている法律家や労組、市民団体役員などが結集して、生活・労働相談に止まらず、女性や医療、障害など各種相談体制を敷くなかで、利用者の生活再建の総合的な支援に大きな役割を発揮できたと感じています。


 (3) 一方、東京都の活動についていえば、「生活総合相談」と銘打ったにもかかわらず、その内容は不十分だったといわざるを得ません。「都の相談では、経歴などを聞かれたが、具体的な生活再建策の指導は何もなかった」とか、「私の意思を無視して、住宅手当へ誘導しよう、誘導しようという相談だった」などの感想が寄せられています。相談体制の弱さに加え、①タテ割り行政のもとで総合的な指導権限をもった相談員の制度的欠如、②「第2のセーフティネット」の不十分さのもとでの生活再建策の中途半端さという問題点を浮き彫りにするものです。東京都は「政府の緊急対策の一環」という消極的姿勢を変えませんでしたが、「屋根と食事は用意したから、あとはがんばれ」式の対応だったといわざるを得ないことは残念の極みです。


 4.生活保護の申請者は500名超、使い勝手の悪い第2のセーフティネット


 (1) 生活保護の申請は500名を超え、今回も生活再建の方途として生活保護制度が大きな比重を占めました。これは、「第2のセーフティネット」の不十分さを物語るものであり、その早急な改善が求められます。例えば、①東京都における住宅手当と総合支援資金に関していえば、窓口がいくつにも分かれることもあり※、日常的には、最初の申請時につなぎ資金10万円を借りても、住宅手当支給決定と総合支援資金住宅入居費(敷金・礼金等)の融資が1ヶ月後、総合支援資金生活支援費の貸し付けがさらにその1ヶ月後という運営が一般的です。そのため、迅速な手続きを強く求めましたが、それでも途中で生活保護に切り替える事例が続出しました。また、②そもそも仕事だけでなく、住居まで喪失した(またはそのおそれのある)人々への支援にもかかわらず、貸付が大きな比重を占める制度となっていることから、雇用情勢が厳しいもとでは利用そのものに二の足を踏まざるを得ないのが実態です。政府と東京都は今回の状況を教訓に、「第2のセーフティネット」の制度と運用を抜本的に見直し、給付制を基本とした恒久的な求職者支援制度を早急に構築すべきです。また、融資制度についてはその要件を大幅に緩和し、たとえばローン返済中であってもマイホームを手放すことなく生活再建が可能となる低利(無利子)融資制度の創設など、使い勝手の良いものとすべきです。


 (2) ワンストップの会では、年末の大久保公園の大相談会の時から、申請書の提出を呼びかけ、毎晩ファックス申請し、その大半を渋谷区に提出しました。これに対して、さまざまな意見が寄せられています。しかし、現在地保護という法の原則に基づけば、オリンピックセンターに宿泊する現実を踏まえた当然の措置です。ただし、年明けの迅速な事務処理の関係から、東京都の要請を受けて、私たちは利用者の合意を前提に、実際の手続きを各市区に分散させることに同意しました。私たちは同意に際して、各自治体でまちまちの対応にならないよう、東京都に統一的な対応を求めましたが、①一部自治体でアパート入居を制限するなどの不適切な対応があり、対策に追われたことは残念です。②そもそも生活保護制度の実施主体は市区であるとはいえ、支給する額や範囲に違いがあることは大きな問題であり、運用の統一が求められます。③また、ワンストップの会の相談を通した申請が比較的スムーズにすすんでいる横で、一般の希望者の申請を制限している福祉事務所がみられたことは重大な問題です。政府と東京都は、今日の雇用破壊と不況の実態を踏まえて、最後のセーフティネットとしての生活保護制度の適切な運用と、そのための財政措置と人員配置を早急に改善すべきです。


 5.東京都の運営の二重のまずさ


 (1) 「公設派遣村」を利用した900名超のうち、100名超が年明けに派遣などの臨時的仕事がはいり出ていったほか、150名超(どちらも推計だが、数の上では計270名程度が出ていったことは確か。)が東京都の対応のまずさから出ていったことが残念でなりません。


 (2) オリンピックセンターの運営などをみていると、住まいまで失い、やっとたどり着いた利用者に対する温かみに欠ける対応が色濃くありました。また、連絡体制も不十分で、次の予定が一向にアナウンスされないとか、利用者各自の担当がどの自治体になったかということが当人に伝わらないというような事態が最後まで続きました。「やっとたどり着いたのに、また路上に放り出されるのか」という焦りと怒りが「公設派遣村」から150名余りが出ていく原因となったのであり、東京都は真剣な総括をして今後に生かすべきです。なお、東京都が直接運営するのではなく、外郭団体に「丸投げ」したことも対応の不十分さの一因です。また、東京都が用意した不動産業者が高額物件を案内し、保護基準額を上回る家賃分を共益費に上積みするなどの不適切な事例も見られました。


 (3) 今回の事業は「生活総合相談」と銘打って実施されましたが、相談活動の実際は極めて不十分なものでした。利用者の状況の聞き取りが大半で、各種制度の説明も不十分でした。当事者の意向や生活再建の方途を把握できていなかったことは重大な問題です。また、オリンピックセンターでは、東京都の要請によって労働行政職員が派遣されていながら、大田区の施設に移る段階では、東京都は東京労働局に派遣要請を行いませんでした。生活保護の見通しが立ち、アパートが見つかり生活再建がすすむ段階こそ、今後の再就職に関する支援が必要であったと考えます。こうしたタテ割り行政の問題点とともに、東京都の意向や判断が基礎自治体である市区町村に伝わらない「ヨコ割り行政」の弊害も多々見受けられました。今後のワンストップ・サービス構築の上で、総合相談機能の確立は決定的に重要であり、体制改善を早急におこなうべきです。利用者の大半は私たちワンストップの会の相談活動を通して、生活再建の方途を決定したというのが実態であり、「つながる」活動の重要な成果といえます。政府や自治体は体制整備と同時に、こうした支援活動に日常的に関わっている民間団体や法律家の積極的な活用をおこなうという観点も必要です。


 6.虚偽情報の流布と自己責任論の克服の必要性


 (1) 「公設派遣村」に関して、「無断外泊200名」とか「2万円を持って逃亡」、飲酒事件など、利用者の不祥事に関する誇張もしくは誤った情報が広範に流布されたことは重大な問題です。一部の心ない利用者が飲酒などで貴重な生活費を費消したことは問題ですが、それを誇張して伝え、生活再建に真剣に努力する大多数の利用者の心を深く傷つけるとともに、アパート契約がダメになるなどの被害もありました。正しい情報の発信を怠り、誤りを是正できなかった東京都の責任は極めて重大といわざるを得ません。中には、見出しに「?」マークをつけるとか、今回の「公設派遣村」とは関係のない昨年の「年越し派遣村」の写真を掲載して無関係の脚注をつけるなどの報道もありました。マスコミ各社には事実を正確に取材した冷静な報道を求めるものです。


 (2) 今回誤った報道が続いたのは、宿泊施設における東京都の管理体制の不備が大きな原因です。「無断外泊200名」との報道についていえば、東京都は「その数字のもとは朝食と夕食を食べた人数の差ではないか」と言っていました。宿泊施設が辺鄙なところにあり、夕食時間が17時半であることから帰れず、食べられなかった人が続出したことが、無断外泊と伝えられたというのが真相のようです。実際に利用者らに聞くと、「夜にはほとんどの布団が埋まっている」というのが実態でした。また、福祉事務所で「2日ぐらいでアパートを探すように」と言われ、遅くまで探し回ったため帰ることができなくなったが、連絡先がわからなかったなどの報告も寄せられています。大田区の施設は、施設の性格から電話番号が公表されておらず、連絡できなかった人が続出しました。私たちの指摘に東京都もあわてて施設内に東京都本部の携帯電話を設置しましたが、その番号の周知徹底も最後までおろそかでした。


 (3) こうした誤った報道がひろがった背景には、弱肉強食の新自由主義に基づく「自己責任」論の影響が否定できません。しかし、「公設派遣村」にたどり着いた利用者についていえば、まじめに働いてきたにもかかわらず、派遣切りや解雇等にあい、長引く不況の中で失業状態が続き、制度的な支援もなくついには住まいを失った人々であり、「自己責任」で片づけるわけにはいかない政治的な問題です。昨年の「年越し派遣村」と比較して、今回は20代の利用者が大幅に増えましたが、それも不況の長期化と雇用破壊の反映です。今や若者も、雇用破壊のもとで職にありつけない状況がひろがっています。また、生活再建の早さも昨年の年越し派遣村と比較した際の大きな特徴です。1ヵ月前にはホームレス状態にあった人が、今ではアパートに住み仕事に就いているケースも少なからず見受けられます。これは、強い働く意志と高い能力を持っていても、何かのきっかけでホームレス状態に陥らざるを得ない現代社会を反映したものであり、「求職者支援」と「ホームレス支援」を区分する行政の姿勢が誤りであることを鋭く示しています。私たちは今後、彼ら・彼女らの実相をまとめていく予定ですが、セーフティネットの構築とともに、何より大企業の社会的責任を明確にし、雇用責任を果たさせ雇用破壊に歯止めをかけること、そして仕事づくりの国民的大運動が求められています。


 (4) なお、今回の施設環境にはさまざまな問題がありました。大田区の宿泊施設において、IDカードに加えて「荷札」が識別に使われたことは、人間味にかける東京都の運営の象徴といえます。ワンストップの会が指摘するまで貴重品を管理するロッカーが置かれず、ようやく設置されたロッカーの鍵は、入浴中手首に撒いておけるような工夫は一切されておらず、安全対策の不十分さも指摘できます。特に、医療体制の不備は深刻な問題でした。雑魚寝の集団生活にもかかわらず、健康チェックがなかったこと、急な高熱等で腕医療機関を受診したくても、なかなか救急車を呼んでもらえなかったなど問題が続きました。また、女性や障害者、病弱者については後半から別施設での対応がひろがりましたが、大田区の宿泊施設にも劣る支援体制、半ば放置の状況が続くなど問題でした。こうした点についても十分に総括をおこない、今後に活かすべきです。


 7.真のワンストップ・サービスの構築に向けて


 (1) 今回の「公設派遣村」でもう一つ教訓とすべきことは、年末年始対策の限界です。本年末こそはイベント的な年末年始の特別対策が必要ないよう、制度の改善と日常的な体制の整備が不可欠といえます。政府と東京都は、今回の教訓を活かして改善をすすめ、日常的なワンストップ・サービスの構築をおこなうべきです。


 (2) 今回の公設派遣村の利用者はまだ生活再建の途上ですが、私たちワンストップの会は引き続き支援を強めるとともに、各団体・個人の共同をいっそう強化して、真のセーフティネットとワンストップ・サービスの実現のために努力していくものです。

                                        以上



                           2010年2月1日

緊急雇用対策本部本部長
 鳩山由紀夫 殿
東京都知事
 石原慎太郎 殿
      年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会
      代表 宇都宮健児(弁護士)、略称:ワンストップの会
      TEL:080-3432-9023  Email:
hakenmura@mail.goo.ne.jp


     年末年始の生活総合相談事業を受けての要望


 私たちワンストップの会は、貴職らが実施された年末年始の「生活総合相談」事業(いわゆる「公設派遣村」)に際して、「つなぐ・つながる総行動」と銘打って、支援活動を実施してきました。


 今回、政府と東京都が協力して「年末年始の生活総合相談」事業、いわゆる「公設派遣村」が実施され、派遣切りや解雇等で仕事とともに住まいも失った生活困窮者に対して年末年始に屋根と食事が提供されたことは大きな前進であると評価するものです。しかしながら、その渦中に身を置いた支援組織として運営の実際をみていくと、いくつかの重大な問題を指摘せざるを得ません。政府と東京都が真摯な総括をおこない、恒久的な求職者支援制度確立に活かしていくことを強くもとめるものです。同時に、長引く不況を打開するためにも、大企業の雇用責任を明確化して雇用破壊に歯止めをかけること、仕事づくりの大運動が求められています。


 以上の観点から、以下のとおり要望事項を提出いたします。国と東京都が一致協力して、この要望事項の実現に真摯にとりくまれることを強く求めるものです。


                  記


 1. 東京都および全国の「年末年始・生活総合相談」事業の実施状況を集約し、正確な数字等を発表するとともに、その成果・問題点を明らかにすること。特に東京都においては、事業を中止した1月18日以降の進捗状況を利用者本人および市区町村等の実施機関から集約して、事業の成果・問題点を教訓化し、今後に活かすこと


 本年末年始には東京都をはじめ多くの自治体が「生活総合相談」事業等を実施しましたが、その全国的な実施状況を把握し、今後に活かしていくことが必要です。特に東京都においては、期間中の広報が不十分で「無断外泊200名」など事実に反する報道が続き、それが訂正されなかった点について強力な是正措置が必要です。また、1月18日をもって同事業が終了となりましたが、それ以降もワンストップの会には利用者からさまざまな相談が寄せられているところであり、18日以降の状況を集約して同事業の成果・問題点を教訓化することが求められています。


 2. 生活保護制度に関して、その適切かつ統一的な運用を再度周知徹底すること。特に、派遣切り・解雇等の影響で住まいを失った状況にかんがみ、アパートへの入居を原則とするとともに、生活困窮状態を踏まえて下記の取り扱いを徹底すること


 派遣切りや解雇等に起因して住まいを失った労働者は、それまで普通に生活し働いてきた人々であり、アパート等での生活を原則として速やかに住居の確保をはかることを大原則とすべきですが、今回も一部福祉事務所では一定期間の施設入所を原則とする動きがありました。この点で、アパート確保が原則であることを再度周知徹底すべきです。また、福祉事務所によっては家具什器費に特別基準を適用しないとか、被服費や携帯代を出さないなどの運用もみられるなど、利用を制限するさまざまなローカルルールが報告されています。利用者の速やかな生活再建を保障するために、適切かつ統一的な運用の徹底をはかるべきです。


 ① 住まいを失い所持金も底を尽きかけた労働者・市民の相談に際しては、職権で可及的速やかに保護決定をおこなうこと


 ② 派遣切りや解雇等に起因する生活困窮から住まいを失った労働者・市民については、速やかな住居確保による保護を原則とすること


 ③ アパート確保までの間は、ビジネスホテル等の個室をシェルターとして自治体が確保すること。それが困難な場合は、住宅扶助の1.3倍額を適用してカプセルホテルやネットカフェ等の利用を保障すること


 ④ 心身等の状況から、さまざまな支援制度を利用してもなお施設保護を一定期間おこなわざるを得ない場合も、本人の納得を前提とした上で、療養に適した公的な個室施設を確保すること。高額な利用料を徴収し、門限等の制限の大きい民間宿泊所の利用はおこなわないこと


 ⑤ 住まいを失い所持金も底をつきつつある窮迫状態の者の保護を開始する場合は、速やかな生活再建を保障するため、家具什器費等には特別基準を保障するとともに、被服費や公営交通機関のフリーパス等を速やかに支給すること。また、住居確保や就労活動に資するため、携帯電話代をすべての自治体で支給できるようにするとともに、連帯保証人や緊急連絡先の確保に関する支援を制度化すること


 ⑥ 心身の健康・栄養状態の悪化や医療中断等の状況を勘案して、保護開始時の健康チェックや必要な医療の提供等を徹底すること


 ⑦ 医療受診、入退院、医療単給で緊急対応した場合等も含め、症状を悪化させることがないように、速やかに通院移送費を支給すること。


 ⑧ 女性や障害者、病弱者等に対して、その特性を踏まえた相談機関、福祉制度への繋ぎ等、特別の支援体制を整備すること


 ⑨ 雇用状況に鑑み、過度な就労指導によって、利用者を追い詰めることのないように配慮すること。同時に、生活保護希望者に、自立支援センターや住宅手当の強引な勧誘は止めること


 3. 増え続ける住居喪失者への支援を強化するため、シェルターの確保を抜本的に強化するとともに、政治災害という今日の雇用破壊の状況を勘案して、生活保護費については全額を国の負担に改めること。また、住宅政策を抜本的にあらため、生活困窮者への安価な公営住宅の提供を大幅に増やすこと。


 住居喪失者の生活保護申請が増え続けていますが、シェルターの確保がすすんでいないことが大きな問題になっています。そうした整備をすすめた場合には「殺到する」などの不安の声が自治体関係者から出されているもとで、政府が全国的な数値目標を明確化するなどの強力な対策が必要です。同時に、今日の雇用破壊の状況を考えるとともに、最低生活の保障という観点からいえば、水際作戦を根絶するためにも、保護費の4分の1自治体負担をあらため、全額を国庫から支出すべきです。また、住居喪失者が増え続けるもとで、安価な公営住宅の提供や家賃補助制度の抜本的な拡充が求められています。


 4. 「第2のセーフティネット」に関しては、住宅手当等の手続きの迅速化をはかり、早急な住居確保、生活再建を保障することなど、今回の利用状況を教訓化し、運用を改善するとともに、貸付制度を改め、給付制を基本とした求職者支援制度を早急に整備すること


 東京都における生活再建の利用制度の大半を生活保護が占めたことは、「第2のセーフティネット」の不十分さを示すものにほかなりません。実際に、住宅手当・生活総合資金等の手続きに時間がかかり、途中から生活保護に切り替えるなどの事例も続出しました。手続きの迅速化をはかることが必要です。また、貸付制度が大きな比重を占めていますが、これは今日の厳しい雇用情勢のもとでは将来的な負債を負わせる危険が大きく、今後の恒久的な求職者支援制度の整備にあたっては、その整備を急ぐとともに、給付制を原則とした制度に改めることが必要です。


 5. 不況の長期化・深刻化を踏まえて、給付期間の延長など、雇用保険制度のいっそうの拡充を早急におこなうこと


 不況が長期化、深刻化するもとで、今回の「生活総合相談」利用者の中にも、失業給付も切れ、持ち金が底をつき、ついには住居を失った人が多数いました。雇用保険の対象を拡大し、すべての労働者を対象とした休業給付制度を整備するとともに、支給期間の延長や支給額の引き上げなど、雇用保険制度の拡充を早急におこなうべきです。「第2のセーフティネット」の拡充、恒久的な「求職者支援制度」の確立にあたっても、雇用保険制度の整備・拡充が前提とされるべきです。


 6. 日常的なワンストップ・サービス体制の構築をおこなうこと。特に実施機関の枠を超えた総合相談機能を確立すること。そのため、ハローワークや福祉事務所の定員を大幅に引き上げること


 年末年始においては、その特殊性から支援事業には制約が大きいのが実態です。日常的なワンストップ・サービス体制を早急に整備し、日頃から支援を強めていくことが必要です。ハローワークや福祉事務所等に各種制度に精通した総合相談員を配置するとともに、その人にあった生活再建策を提示・援助できる権限を持った特別相談員を配置した機関等を整備する必要があります。また、急迫状況にある方は速やかに生活保護につなげると同時に、増え続ける相談に対応し、支援体制を確立するため、ハローワークや福祉事務所の人員を特別に増やすとともに、専門性の向上をはかるべきです。


 7. 派遣切りの規制強化など雇用破壊に歯止めをかけるとともに、公的な就労確保を含めた雇用創出策を抜本的に強化すること


 セーフティネットの整備・拡充は喫緊の課題ですが、それだけでは不十分です。労働者派遣法の抜本改善をはじめ、大企業の雇用責任を明確化して雇用破壊に歯止めをかけることが不可欠の課題です。同時に、公的な就労確保など、仕事づくりの国民的な運動、中小企業への支援策を抜本的に強化し、雇用を創出する特別対策が必要です。


 8. 社会保障予算を増額し、生活困窮者への医療費の減免制度などを拡充するなど、経済的理由から医療、介護、社会保障から排除されることのないようにすること


 貧困と格差の拡大、制度改悪のもとで、経済的理由から医療、介護、福祉から排除される者が増え続けています。特に住まいを失った生活困窮者の心身の状態は深刻であり、特別対策の実施が不可欠の課題です。


                                        以上