雇用破壊の実態をふまえ労働者派遣法の抜本改正を(全労連が労働政策審議会に意見書を提出) | すくらむ

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 ※全労連が本日、労働政策審議会に対して、「労働者派遣法改正論議に対する意見書」を提出しました。その意見書を紹介します。


                               2009年10月20日
労働政策審議会 会長 諏訪康雄 殿
 同 労働力需給制度部会 部会長 清家篤 殿
                             全国労働組合総連合
                             議長 大黒作治


   労働者派遣法改正論議に対する意見
   雇用破壊の実態をふまえた抜本改正を


 長妻厚生労働大臣の「諮問」を受けて、労働者派遣法の改正論議がはじまりました。全労連は、雇用問題を最重点課題としてとりくみ、派遣切り等にあった多くの労働者を組織する労働組合として、改正論議にあたって以下のとおり、意見を提出するものです。


 1.この1年余の事態は何を明らかにしたのか


(1)厚生労働大臣の「諮問」でも、「我が国の雇用情勢は急激に悪化し、いわゆる派遣切りが多く発生し、社会問題化するなど、派遣労働者をめぐる雇用環境に大きな変化が生じた」と指摘されています。昨秋来の雇用破壊の実態は、社会的責任を放棄した大企業の冷酷非情な姿勢とともに、労働者派遣の構造的な欠陥と現行労働者派遣法の問題点を露呈するものと言えます。その特徴点をあげれば、以下のとおりです。


(2)第1に、製造業を先頭にして派遣労働者の解雇・雇止めが急速・大規模におこなわれましたが、これは労働者派遣が常用雇用の代替、「安価でいつでも切れる雇用の調整弁」として機能していることを物語るものです。切られた派遣労働者らの証言でも、これまでも毎月の生産量にあわせて解雇・雇止めが繰り返され、各地の工場を転々としていたという実態が明らかになっています。


 労働者派遣法の相次ぐ改悪によって、「臨時・一時的な業務に限定し、常用雇用の代替としてはならない」という原則が踏みにじられているのです。特に製造業においてはそれが顕著であり、派遣と期間工等を繰り返すなどの期間制限違反を免れるための脱法的行為まで横行し、常用雇用の代替として労働者派遣が広く使われていました。


(3)第2に、多くの派遣労働者が派遣契約の解除と同時に雇用契約も破棄され、契約期間中の中途解雇が横行しましたが、これは派遣元が雇用責任を果たす経営体力を持ちあわせておらず、派遣先の大企業が雇用責任を免れる装置として、労働者派遣が機能していることを明らかにするものです。労働者派遣における雇用責任のあいまいさ、派遣労働者の雇用の不安定さという構造的欠陥が露呈されたと言えます。


(4)第3に、解雇・雇止めと同時に住まいまで失い、路頭に迷う派遣労働者が大量に生まれたこと、「年越し派遣村」に止まらず、今も各地の主要な駅などが「派遣村」状態にあることは、セーフティネットの欠如とともに、派遣労働者が低賃金、不安定な収入状態に置かれ、経済的な貯めを持ちえない状況にあることを示すものです。派遣元企業によるマージン確保、二重の搾取が、派遣労働者を圧倒的な低賃金構造に置いています。


(5)第4に、不況が長引くもとで、登録型派遣の労働者は仕事が月に数日しかないなどの実態に置かれ、持ち金が底をつき借金を重ねる状況も広がっています。登録型派遣における雇用と生活の究極的不安定さを示すものです。


(6)第5に、契約期間中の雇用契約の破棄や期間制限違反であるとか、事務用機器操作やファイリングなどの専門業務をかたった違法な事務系派遣の横行など、法違反が広範におこなわれている実態が明らかになりました。これは、労働者派遣への法的規制、派遣労働者に対する保護措置の不十分さを如実に示すものです。


 2.雇用破壊を是正する労働者派遣法の抜本改正を


(1)労働者派遣法の改正論議にあたっては、上記に示したような雇用破壊と派遣労働者の生活の深刻な実態を改善する実効ある措置を取ることを中心に据えるべきです。10月7日の職業安定分科会や10月15日の労働力需給制度部会の論議では、製造業派遣や登録型派遣の「原則禁止」に疑義を呈す意見も出されましたが、これは労働者派遣の現実の姿、雇用破壊の深刻さを顧みない発言と言わざるをえません。特に公益委員からもそうした発言が飛び出したことは重大であり、その公平性などが問われる事態です。


(2)派遣法改正をめぐって最近、「労働者派遣を制限すれば、現に派遣で働いている人の職を奪うことになる」とか、「派遣を制限すれば、企業は海外に出て行き、不況がいっそう深刻化する」などの主張が流布されています。しかし、労働者派遣を制限しても、そこに労働力を必要とする仕事さえあれば、企業は労働者を雇用します。むしろ、派遣など非正規労働者の急速な拡大がワーキングプアを増やし、不況と内需の落ち込みを助長し企業に海外進出を促しています。賃金配分を増やし貧困と格差を解消することこそ、経済成長をみこんだ企業の国内活動を活発化させる道です。


(3)「諮問」は、「製造業務への派遣や登録型派遣の今後の在り方、違法派遣の場合の派遣先との雇用契約の成立促進等、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進のために追加的に措置すべき事項についても検討を行い、改めて法律案を提出する必要が生じている」としています。


 つまり、①製造業派遣の禁止、②登録型派遣の原則禁止、③派遣先企業の労働者との均等待遇の確立、④違法派遣等の場合の直接雇用みなし規定の創設、⑤派遣労働者を組織する労働組合との派遣先の団交応諾義務などは、深刻な雇用破壊の実態を是正する課題として、この間の論議を通じて大多数の労働組合や政党・国会議員が同意するものです。改正論議にあたっては、これらを少なくとも改正すべき前提項目に据えるべきです。


(4)その上で、労働者派遣の実態を踏まえれば、より抜本的な改正が求められます。①労働者派遣は臨時・一時的業務に限定し、常用雇用の代替としてはならないという原則に立った上での労働者派遣への規制の抜本的強化、②派遣労働者の雇用と賃金・労働条件を担保する保護措置の確立、③違法派遣等への規制、派遣先企業の責任の明確化などを柱とし、労働者派遣の原則自由化を元に戻すことや、現行26専門業務を見直し、賃金・労働条件が適正に担保され、安全かつ高度な専門業務に限定することなど、より踏みこんだ検討・論議が必要です。以上の観点から、全労連としての改正要求を別表のとおり示し、より踏み込んだ改正を強く求めます。

                                       以上