立ち上がった派遣・請負労働者、外国人実習生たち | すくらむ

すくらむ

国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ※「連合通信・隔日版」2009年5月26日付No.8194、5月28日付No.8195から、「第17回パート・派遣など非正規ではたらくなかまの全国交流集会」の模様を転載します。


 労働組合の力を実感/全労連の非正規全国センター/京都の交流集会に500


 派遣や期間工など非正規労働者の解雇が社会問題となるなか、全労連の非正規雇用労働者全国センターは5月23日、京都府京都市で「第17回パート・派遣など非正規ではたらくなかまの全国交流集会」を開き、500人が参加した。派遣切りと闘う組合員の報告が行われた後、参加者たちは「違法な派遣切りはやめてんか」「ワーキングプアをなくさないとあきません」と声をあげて市内をデモ行進した。


 あいさつした非正規センターの大黒作治代表(全労連議長)は、昨年末以降の大企業による大量の派遣切りに対し、全国各地で非正規労働者が立ち上がっているとして、「堅い・暗い・怖いと思われていた労組と非正規労働者の距離が接近した」と指摘。労働者を分断する攻撃を乗り越え、人間らしい働き方の実現をめざそうと訴えた。


 京都総評の岩橋祐治議長は「私たちの運動は、主権者である国民の『憲法を守れ』の要求であり、正義の運動である」と強調。そのうえで、「労働者派遣法を抜本改正させ、最低賃金を大幅に引き上げる。不安定雇用を制限し、均等待遇の原則を確立する闘いを大きく前進させよう」と呼びかけた。


 組合員3人で派遣切りと闘い、退職金を勝ち取った女性が「組合に入って良かった。(周囲の人に)泣き寝入りせず、組合に相談するよう勧めている」と涙ながらに語る一幕も。


 集会では、神戸大学の二宮厚美教授の講演も行われた。二宮教授は、経済危機の原因は格差社会の進行であり、格差を克服しない限り不況を脱することはできないと指摘。政府に対して、①解雇規制の徹底②教育・職業訓練の保障と職業紹介③公的就労事業による職の確保──の実現を迫ろうと呼びかけた。


 ■たたかいの報告


 交流集会では、違法な首切りや賃上げの闘いの報告が相次いだ。


 ●組合ってすばらしい


 大分キヤノンで働いていた派遣社員の女性は、昨年11月突然、派遣会社から解雇を通告され、四回の団交の末、退職金を勝ち取った。集会では、声を詰まらせながら「会社は解雇するだけだが、私たち雇われる側は大変。労働組合に入って良かった。近く悩んでいる人がいたら、見て見ぬふりをせず、相談にのってあげて」と訴えた。


 ●県労連に感謝


 中国から熊本県にトマト栽培の農業実習生として来日。労組に加入して過酷な労働実態を告発し、裁判で闘っている中国人女性の3人からは「熱中症になっても病院に運ばれず、『殺すぞ』と社長にも脅された。思い出したくないけど、絶対に忘れることはできない」と話した。在留資格の都合で三日後に帰国する彼女たちは「生活を支えてくれた県労連やみなさんの思いは宝。この宝を胸に自信をもって歩いていきたい」と力強く報告した。


 ●600人で団交も


 春闘で大規模な団交に取り組んでいる京都生協パート労組の小寺美智子委員長は「昨年の春闘では600人で団交して11年ぶりに賃上げ。正規との格差是正を掲げ、一時金も上積み回答させた」と語り、「ストライキを構えてでも闘うことが重要。(今春闘の)次の団交で1円でも賃上げさせるつもりで闘っていく」と意気込みを語った。


 ●自分たちが先頭に


 いすゞの派遣切りと闘い、宇都宮地裁栃木支部から派遣会社に賃金の支払い命令を勝ち取った男性は、「非正規雇用労組ネット栃木を結成した。県労連や大学教授を交えて勉強会をしたり、裁判で闘う労働者の生活支援をしたりしている。栃木の自分たちが先頭に非正規切りをやめさせたい」と声をあげた。


 ●夢持ち仕事続けたい


 京都府内の養護学校で寄宿舎の指導員(臨時職員)を務める男性からは「正規と同じ仕事なのに、1年任期で13年目。臨時職員がどんどん増やされ、学校や子どもたちがどうなるのか心配」と述べ、「この集会に参加できて良かった。夢を持って仕事を続けられるよう、これからも幅広い連帯と協力をめざしたい」と語った。


 〈全労連の非正規全国交流集会・分科会〉/成果持ち寄り運動強化へ/立ち上がった派遣・請負労働者たち


 全労連の非正規雇用労働者全国センターは5月23、24の両日、京都市内で非正規労働者の全国交流集会を開催。2日目には、パートや派遣・請負、外国人労働者など7つのテーマで分科会を開いた。


 ●差額賃金支払わせた


 「立ち上がった派遣・請負のなかまたち」の分科会では、いすゞ自動車や三菱ふそうなどで派遣切りされ、団体交渉や裁判を進めている元派遣労働者たちが集まり、今後の闘いについて活発に議論した。


 いすゞ自動車が減産を理由に期間社員を休業させた際、賃金の六割しか補償しなかった問題で、宇都宮地裁栃木支部は4月、差額賃金の仮払いを命じた。全日本金属情報機器労働組合(JMIU)の三木陵一書記長は、この決定を紹介し、「まさに試験でいう百点満点と同じ。われわれの申し立てがすべて認められた」と強調。加えて、決定では、いすゞ自動車が組合活動を妨害したことを明確に認めている点などを挙げ、「良い決定が出るかどうかは運動と世論であり、それを私たちが作り上げることができた」と述べ、労組結成からストや集会、さらに幅広い全国的な大衆行動の必要性を訴えた。


 ●組合認めさせた


 差額賃金の仮払い決定を勝ち取ったJMIUいすゞ自動車支部の松本浩利委員長は、派遣会社八社との団交が和解などによって終了したと報告。期間工といすゞ自動車の団交についても「いすゞ側は職場への組合掲示板設置など組合活動を認めるようになってきた。正社員として登用させるよう継続して頑張る」と抱負を語った。


 ●闘って正社員化実現


 04年9月に組合を結成。違法な偽装請負と闘い、派遣から正社員雇用などを実現させたJMIU徳島地域支部光洋シーリングテクノ分会の矢部浩史さんは「この5年で組合が勝ち得た成果は、15人の正社員化、15人の契約社員化だ。残りの組合員13人の直接雇用もめざす」と話した。低賃金のため、2人の組合員が生活保護を受けていることにも触れ、「人並みの生活ができるよう賃上げも実現したい」と意気込みを語った。


 ●39人で早期解決


 昨年12月、突然の派遣切りに39人の組合員で立ち向かい、3回の団交でほぼ要求に沿った勝利解決をした福山シャープ関連労組の元組合員、大畑真理さん(26)は「早期解決ができたのは(同じ職場で39人という)国内最大級の人数を集めたおかげ」と感想を語った。広島県内で派遣切りが続いている現状について、「ボランティアで『福山派遣村お困りごと相談会』の準備を始めている。一人で問題や悩みを抱えても何も変わらない。私たちと同じ思いをさせないために、お互い頑張りましょう」と呼びかけた。


 ●メディアでアピール


 首都圏青年ユニオンに加入して、三菱ふそうに直接雇用を求めている元派遣社員の男性は、TV取材がきっかけで、メディアを通じ世間に組合活動をアピールできたと述べて、「テレビに出るのは恥ずかしいが、知らない人から声を掛けられるようになった。一般の方からの協力や理解はすごく大きい。アピールすることで政治など動かせるよう工夫した活動をしたい」と笑みをこぼした。


 ●指名解雇を撤回


 「東京三菱UFJ銀行の大阪テレビ窓口センターで働く派遣オペレーター80人の指名解雇を団交によって撤回させた」と報告したのは、金融労連傘下の銀産労(銀行産業労働組合)の男性。指名解雇通知で、心に傷を負った転職希望者には退職金(4カ月分)の支払いを認めさせ、就職活動のための勤務免除(6カ月間)と賃金保障も勝ち取ったと報告し、「引き続き頑張りたい」と話した。


 ●まず要求し運動を


 会場からは、「派遣先が話し合いに応じず、明確な法律違反もない。どうすればいいのか」と不安の声も。三木書記長は、過去の男女間定年差別やパートの賃金格差の取り組みでは、闘いの末、法改正を実現したことを挙げて、「当時はだれも勝てるとは思っていなかったが、裁判を起こして法律を変えることができた。労働運動は、要求が出発点。自分の『おかしい』という初心を貫ければ、必ず人を動かせる。法律は後からついてくるもの」と力強いエールを送った。