「春の派遣村」東京で実施 - 362人が面接・電話でSOS、元「村民」もボランティアで参加 | すくらむ

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 反貧困ネットワークなどでつくる派遣村実行委員会は4月8、9日の両日、東京で労働や生活、医療などにかかわる「春の面談・電話相談村」を行った。9日時点での相談件数は362件。そのうち36人が生活保護を申請。派遣村村長で反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長は、生活保護制度の運用改善をはじめ、行政の積極的な対応が必要と訴えた。


 春の派遣村は、年度末の解雇や雇い止めで大量の失業者が住居を失ったり、貧困に陥る事態に対応するために開かれたもの。2日間で電話相談が248件、来場での相談が114件あった。そのうち36人は、区役所などに生活保護の申請を行った。


 医療相談では、2人の相談者が緊急入院。いずれもお金がなく治療を中断していたという。健康相談をした35人の相談者のうち25人が健康保険証を持っておらず、失業者が医療サービスからも遠ざけられている実態が明らかとなった。


 会場には多数のボランティアも参加。弁護士や医師などの専門家のほか、年越し派遣村の元村民らの姿も見られた。生活保護の申請に同行した元村民の男性は「恩返しのつもりで来た。僕らと同じように苦しんでいる人に、自分の経験が生かせる。一人よりも団結の力が強いことを伝えたい」と語った。


 友達に誘われて、初めてボランティアに参加したという大学四年生の男性(21)は「不況で困っている人に何か役立てればと思って来た。自分も現在、就職活動中。人は企業のコマじゃない。雇用の信頼関係を守ってほしい」と話した。


 多くの相談が寄せられたことについて、湯浅事務局長は、雇用対策の不十分さとあわせて、「自分で頑張らないといけないという自己責任の内面化と制度周知の不徹底、『どうせ何もしないだろう』という行政への不信がある」と指摘。そのうえで「周知のやり方を見直して、(生活保護の窓口に)早く来てもいいんだよとメッセージを発してほしい」と訴えた。


 派遣村実行委員で派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「昨年末に大量の派遣切りが出た。この年度末にはそれをはるかに上回る派遣切りが行われたが、国と企業は何の対策も行っていない」と批判。さらに、「事務や製造を問わず派遣が切られている。今はアパートに住んでいても、失業保険が切れた夏頃に行き詰まり、さらに貧困が広がるおそれがある」と懸念を示した。


 所持金は400円


 派遣村の元「村民」ら3人に付き添われて文京区役所に生活保護を申請した男性(39)は、派遣村のニュースを見て千葉から来たという。所持金は400円しかなかった。男性は、自動車部品会社に派遣社員として働いていたが今年1月中旬に退職。その後は建設現場で働きながら生活していたが、仕事が無くなったため相談にきた。申請が受理され、一時金の支払いと宿泊施設を確保できたことに、「今日の宿を確保できたので、とりあえず安心した」と話した。


 2日前に北海道からフェリーで来たという男性(42)は、昨年4月から農業のアルバイトをしていたが、11月で契約終了。道内で仕事を探したが見つからず、「東京に行けば何とかなる」と思い上京。船内で新聞を見て、派遣村にやってきたという。男性は「仕事を選んではいない。それでも就職できない。住まいと次の仕事が見つかるまでの資金がほしい」と訴えた。


 「派遣切り」に早急な対策を
 派遣村実行委が院内集会開く 政治の役割をアピール


 派遣村実行委員会は4月8、9日の両日、東京の参議院議員会館で集会を開き、春の派遣村の取り組み報告と国会議員への要請を行った。派遣村名誉村長で反貧困ネットワーク代表の宇都宮健児弁護士は「年度を過ぎても派遣切りが行われている。一緒になって支えたいが、民間では限界。政治で支えるよう早急な対策を」と呼びかけた。


 同ネットワークの湯浅誠事務局長は、生活保護申請での役所の対応について、普段は満杯で入居できない保護施設に、今回すんなり入れたことを挙げて「(他の入居希望者を追い返すなどの)派遣村シフトが組まれた。ただでは喜べない事態だった」と指摘し、「少ないパイを細かくするのではなく、全体のパイを増やすべきだ」と訴えた。


 生活資金貸し付けなどが補正予算で検討されていることについて、「一歩二歩前進した」と評価しつつも「今、緊急の問題をどう取り組むのか。食うや食わずの人たちには何も変わらない」として、即効性のある対策を求めた。そのうえで「使える制度になるよう働きかけが必要。普通に生きて普通に生活していけるようにしないと、誰一人幸せになれない」と訴えた。


 国会議員からは、「(雇用対策を拡充させる)補正予算を国会に提出して、政府・与党として全力で取り組みたい」(自民党の大村秀章厚生労働副大臣)、「派遣法の改正案を今国会に提出して、貧困社会を立て直す発火点にしたい」(民主党の菅直人代表代行)などの発言が相次いだ。


 年越し派遣村の元村民の男性は「何を言ってもムダと最初はためらっていたが、言わないと変わらない。派遣会社の実態をもっと分かってほしい」と強く要望した。【「連合通信・隔日版」09年4月11日付(No.8179)から転載】