もやいが石原都知事に公開質問状「一泊200円の宿?」「ネットカフェ難民はファッション?」 | すくらむ

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 石原慎太郎東京都知事が、10月3日の定例記者会見で、大阪市で発生した個室ビデオ店放火事件にかかわって、ネットカフェ難民に対する見解を述べました。これに対して、NPO法人自立生活サポートセンター・もやいが、石原都知事に「公開質問状」を送付し、「石原都知事の発言内容が知事の事実認識とするならば、都の政策の根底を揺るがすものであると考えます」としています。(※以下、公開質問状を紹介します)


                                2008年10月6日
東京都知事 石原慎太郎殿


          NPO法人自立生活サポートセンター・もやい
          代表理事:稲葉剛
          〒162-0814東京都新宿区新小川町8-20 こもれび荘
          電話:03-3266-5744 FAX:03-3266-5748
          
http://www.moyai.net


               公開質問状


 石原慎太郎東京都知事は、10月3日、定例記者会見の場で、大阪市の個室ビデオ店放火事件に関連した質問に対して、「大いに使っている人はね、帰り損なったサラリーマンだ。ただカフェ難民、難民って言うけれども、あなた山谷のドヤに行ってごらんなさいよ。200円、300円で泊まる宿はいっぱいあるんだよ。そこに行かずにだな、何か知らんけれども、ファッションみたいな形でね、1500円っていうお金を払ってね、そこへ泊まって、『俺は大変だ、大変だ』と、『孤立している、助けてくれ』って言うのはね。ちょっと私はね、人によって違うのでしょうけれども、カフェ難民なるものの実態とはとらえ難いね」、「やっぱり1500円の宿泊費を払えるんだったら、もっと安い泊まり宿がいっぱいあるよ、東京は」等と述べました。


 私たちは、生活困窮者の生活相談・支援を行なう団体として、現在、月に約100件の相談(面談、電話、メールなど)を受けています。私たちのもとには、生活に困窮し、アパートを借りるお金がないため、ネットカフェやドヤ(簡易旅館)、サウナなどを当面の生活の拠点とせざるをえない人たち(ハウジングプア)がたくさん相談に来られます。しかし、今まで私たちは、「200円、300円」の宿泊費で泊まっていた、という人に出会ったことがありません。


 私たちが相談活動で出会う人々は、わざわざ高いお金を払って、「ファッション」でネットカフェ等に宿泊しているのでしょうか? 私たちはそうは考えません。


 私たちの認識では、都内では山谷地域でも一泊1000円以下の簡易旅館は皆無に近く、1500円以下の宿泊先を見つけるのですら、困難な状況にあります。また、多くの人々が宿泊費の金額だけで判断するのでなく、交通費のことも考慮し、職場に近い地域や求職活動をしやすい地域で寝泊りする場を確保しているという実態も忘れてはなりません。


 東京都は、今年4月からいわゆる「ネットカフェ難民」等に対する支援策として、厚生労働省と共に『TOKYOチャレンジネット』事業を開始しました。これは、ネットカフェ等で寝泊りをしている人たちの窮乏状態を踏まえて始められたものだと、私たちは注目していました。


 しかし、その対策が事実誤認に基づく認識に支えられていたのだとすれば、対策そのものの有効性が問い直されなければならないと私たちは考えます。


 今回の発言は、都庁での定例記者会見における公式な発言であり、しかも事実認識に関わるものであるため、都の政策の根底を揺るがすものである、と私たちは考えます。


 よって、以下に都知事の発言の真意をうかがいたく、質問をさせていただきます。10月17日(金)までに文書、または都庁における記者会見の場でお答えいただくようお願いいたします。


1、東京都内において、実際に「200円、300円で泊まる宿はいっぱいある」ということであれば、そうした宿についての情報提供を具体的にしていただきたい。


2、「200円、300円で泊まる宿はいっぱいある」という認識が事実誤認であったならば、記者会見の場で公式に発言を撤回していただきたい。


3、事実誤認をもとに「カフェ難民なるものの実態」を把握されていたのであれば、ネットカフェや路上などで生活せざるをえない人々(ハウジングプア)に対する認識を改め、その新たな認識のもとに総合的・包括的な支援策を打ち出していただきたい。

                                        以上