ワーキングプア解消への福祉国家づくり | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 4日から6日まで、中央社会保障学校の運営に携わりました。5日夜の中央社保協結成50周年レセプションではパワーポイントで自作した「写真でつづる50年史」を上映(国公一般委員長こと“焼酎ロック”氏所有のノートパソコンが大活躍!?)。たいへん好評でDVDにして欲しいという要望が寄せられています。最終日の昨日は、年金問題の分科会の司会を担当しました。3日間の学校でいろいろ勉強しましたので、当分の間!?ブログでもってそれを還元したいと思っています。


 5日の午後には、「社会保障の現在・過去・未来」と題したシンポジウムが行われ、都留文科大学教授の後藤道夫さんが「貧困急増の背景と福祉国家の不在」というテーマで話されました。以下、後藤さんが力説されたポイントを紹介します。


 貧困が急増した背景には、二つの問題がある。一つは、日本型雇用がほぼ破壊され、労働市場の巨大な転換がこの10年間で起きたこと。もう一つは、もともと日本の社会保障がたいへん弱い姿をしていたこと。ただ弱いだけではなく、勤労世帯を社会保障で支えるという構造がほとんどない特殊な形をしていた。ようするに日本では、賃金収入が下がればそのまま貧困世帯が増える構造になっている。こんな先進国は他にないのに、このボロボロのセーフティネットさえも構造改革で削り続けている。


 そして、年功賃金や新卒正規採用・長期雇用などを特徴とする日本型雇用の解体が、大きな転換点となった。2001年春、小泉内閣が登場し、不況下にもかかわらず、「不良債権処理」を打ち出し、巨大なリストラを強行。その結果、500人規模以上の大企業の労働者数が、2001年春から2002年春で125万人減った。全体で1000万人弱のところからたった1年間で125万人もの巨大リストラがやられた。2001年の6月以降の半年間で100万人減っているが、半年で100万人リストラされたのは日本では初めてのことだ。4年間で324万人がリストラされ、2004年春、財界は「企業収益が回復する条件をつくることに成功した」と勝利宣言を出し、実際に大企業の企業収益、役員報酬、株主配当は史上空前の水準となり、労働者の賃金は下がり続けた。


 しかし、大企業の労働組合はこれに抵抗せず、マスコミ、ジャーナリズムもこの問題を報道しなかった。ほとんど抵抗なく財界・大企業は、巨大リストラをなしえた。このことが今に続く「格差と貧困」の拡大を作り出した大きな原因になる。つまり、自分たちの思いどおりに“何でもできる”という感覚を日本の経営層は手に入れたといえる。これ以降、財界発の制度改悪や悪政は数え上げればきりがないほどだ。


 今後、日本型雇用が元に戻ることはありえない。となるとこれから先、何をすべきか。一つは労働組合運動を根本的に変えないとどうにもならない。今は残念ながら資本独裁、経営者独裁といえるような状況だ。労働組合がきちんと労資関係で規制する労働市場に変えていくことと、同時に福祉国家を本気で追求することが大切だ。


 日本型雇用が解体し、現在の企業別労働組合では規制できない弱肉強食の野蛮な19世紀型の労働市場が今の日本に出現したといえる。それをただし、規制するのはやはり労働組合しかない。いまの企業別労働組合を産業別労働組合につくりかえ、これまでの日本型雇用と年功賃金を前提とした企業内の賃金・雇用の運動から完全に脱却し、福祉国家づくりをめざす必要がある。


 格差と貧困の拡大、ワーキングプアの増大は、企業によって与えられていた家族手当を国による児童手当に、住宅手当を国の住宅政策の充実に、企業年金を国の年金制度の充実に、といった企業から国家への転換の必要性が大きな世論になりうることを示している。


 すべての労働組合は、新自由主義による教育・医療・社会保障・社会政策の構造的な改悪に反対しつつ、あるべき国の姿として福祉国家を労働組合戦略として掲げる必要がある。


(byノックオン)