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【スポコン作品の台頭】

 

個人的この1作

 巨人の星 

 

1968年のアニメ『巨人の星』はスポ根アニメ時代の到来を意味する。

「原作・梶原一騎、作画・川崎のぼる」のタッグで、1966年より週刊少年マガジンで連載されていた人気漫画。

アニメを企画したのは東京ムービー、動画制作は業務提携しているAプロダクションが務めた。

東京ムービーとAプロのタッグは本作以降、翌69年に放送した『ムーミン』『アタックNo1』など飛ぶ鳥を落とす勢いでヒット作を生み出し、業界トップに躍り出た。

さらには大塚康生、長浜忠夫、宮崎駿、高畑勲ら優秀なクリエイターを同社に招くことに成功することになる。

 

巨人の星と言えば、主人公の星飛雄馬と並んで思い浮かべるキャラクターが、虐待クソオヤジこと星一徹だ。

安月給の日雇い労働者で大酒飲み、度々激高してはちゃぶ台をひっくり返し、娘と息子を振り回す最低の父親。

時には成長期の息子に「大リーグ養成ギブス」とかいう拘束器具を身に付けさせ、時にはガソリンを掛けたボールを息子にぶつける文字通り「火だるま千本ノック」

お巡りさん、こいつです。

 

とまあ、それらは現代なら放送禁止事案かもしれないが、当時のフィクション作品としては、この程度のスパルタは普通だ。

思い込んだら試練の道を行くが男のド根性…なのである!

 

 

その他キャラも魅力的で、親父にボロボロにされる弟をいつも木の陰から見て泣いてる姉さん。無二の親友となる義理人情の伴宙太。ライバルの花形満、左門豊作、アームストロング・オズマ。長嶋茂雄や王貞治ら実在の選手も登場する。

リアル世界の読売巨人軍の人気も相まって視聴率はうなぎ上りに上昇し、69年9月下旬~翌年3月までは常時視聴率30%以上を記録する怪物番組となった。

 

主人公の星飛雄馬を演じた声優は当時中学生の古谷徹で、本作が彼の出世作となる。

しかしながら、まさか55年後に40歳年下の不倫相手とスキャンダルを起こすとは当時誰も予想していなかったであろう(当たり前)。一徹もビックリとはこのことだ!

 

 

 

こんな作品もありました

 タイガーマスク 

 

 ひみつのアッコちゃん 

 

 サザエさん 

『巨人の星』以外にもスポーツを題材にする作品が流行り始める。

『アタックNo.1』はまさに「少女版巨人の星」と言え、一大バレーボールブームを巻き起こした。

そして忘れてはならないのは同じく梶原一騎原作の『タイガーマスク』だ。

アニメより早くテレビを彩ったプロレスをテーマにした作品がついにアニメ化。

当然「日本プロレス中継」を放送していた日本テレビ系列でオンエアされ、ジャイアント馬場やアントニオ猪木ら人気レスラーも実名で登場した。

ちなみに現実のリングに佐山聡扮するタイガーマスクが登場するのは後年の続編『タイガーマスク二世』のとき。

 

『ひみつのアッコちゃん』は赤塚不二夫による少女漫画が原作で、前年まで同枠で放送されていた『魔法使いサリー』に続く魔女っ子作品。

最初から魔法が使えるタイプの魔女っ子作を「サリー型」、後天的に魔法が使えるようになるタイプを「アッコ型」と分類される。

アッコちゃんが変身する際の「テクマクマヤコン~」の台詞は流行語となり、変身道具である鏡の玩具も大量に売れた。

89年と98年もアニメ化されるが、時代に合わせてキャラクターデザインが大幅に可愛らしく進化していった。

 

石ノ森章太郎の『サイボーグ009』も68年に東映が制作している。

先に2本の映画作品を前年に制作し、スタッフはそのままテレビアニメシリーズを作ることになった。

当時「サイボーグ」などという単語を知ってる日本人は誰もいなかったが、今日当たり前のように定着。のちに『仮面ライダー』や『スーパー戦隊シリーズ』の原型にもなる。

本作も根強い人気を保って79年と01年に再アニメ化される。

 

赤塚不二夫、藤子不二雄(F&A)、つのだじろう、石ノ森章太郎らが参画したアニメーション会社スタジオ・ゼロはこの頃1970年以前には事実上解散している。

『おそ松くん』『パーマン』『怪物くん』などの映像の一部を自社で請け負ったが、やはり大手には太刀打ち出来ず、経営もままらなかった。

また、設立者の鈴木伸一だけはアニメ制作に情熱を捧げたが、他のメンバーは漫画家業を優先し、そこまでアニメに関心を持っていなかった。

解散後も鈴木はアニメ業界に残った一方、他のメンバーは原作者の立場で皆大成功を収めた。

 

現在も続く超超長寿アニメ『サザエさん』は1969年10月よりスタートした。

今でこそホームコメディとして確立しているが、実は初期の磯野家は割と過激。

家族同士殴り合ったり、今では放送禁止の単語が飛び交ったり、やりたい放題である。

当初はアメリカの『トムとジェリー』のようなドタバタコメディを目指していたようだが、途中で平和な家族を描くよう路線を変更したことで半世紀以上続く長寿番組に成り得たのだ。

2013年、本作は「世界でもっとも長期に渡って放送されるテレビアニメ」としてギネス記録に認定された。

ちなみに放送開始時からサザエさんの声は加藤みどりさんである。すごい!!