「人は、自分のことを意外と分かっていない・・・」
というのが
辻村深月さんの『傲慢と善良』
読んでの感想でした。
この小説、タイトルからして気になりました。
「傲慢」と「善良」。
正反対に思える二つの言葉。
読み進めていくと、
「あー、これ自分の中にも両方あるな」と、
だんだん他人事ではなくなってきました。
恋愛や結婚、人との出会い、
家族との関係。
どれも特別な世界の話ではありません。
むしろ、
「こういうこと、あるなあ」と
思ってしまうほど身近な話。
だからこそ、
登場人物の言葉や行動に、
刺激されます。
「相手のためを思っているつもり」が、
本当に相手のためなのか・・・。
人は誰かのことを
「この人は優しい」「この人は自分勝手」
と決めてしまいがちです。
ただ、その人には、
その人なりの事情や過去がある。
本人にしか分からない不安や迷いもある。
そう考えると、
「人を見る」ということは、
ずいぶん難しいことなんだなと思いました。
ほめるというのは、
単純に「すごいね」「えらいね」
と言うことではありません。
その人の存在や行動の中にある
「価値」を見つけること。
誰かの短所に見える部分も、
見方を変えれば
長所の裏返しかもしれない。
慎重な人は、
臆病なのではなく、
失敗しないように一生懸命考えている
のかもしれない。
頑固に見える人は、
自分の大切なものを守ろうと
しているのかもしれない。
そうやって人を見ることができたら、
人間関係は少し優しくなれる。
『傲慢と善良』は、
恋愛小説であり、
ミステリー的でありながら、
実は「人をどう見ているか」
を考えさせてくれる物語でした。
読み終わったあと、
「自分は、人のことを決めつけていないかな?」と、
考えました。
人は完璧じゃない。
迷うし、間違うし、格好悪いこともする。
でも、その中にも必ず、
その人なりの「よさ」がある。
そして、自分の中にもね。
そんなことを、
少し苦く、でも温かく
教えてくれる一冊でした。
あなたの周りの「あの人」。
あなたは、
その人のどんな「善良」を
見つけているでしょうか?
そんなことを考えながら読むと、
きっとまた違った景色が見えてくると思います。
ラストシーンも素敵でしたよ。