サルタヒコさまに道案内をたのんで、ニニキネさまご一行が先を進んでいくと、なだらかで、とても歩きやすい道が、目の前にあらわれました。
ニニキネさまは驚いて、
「この場所は、険しい峠が続くと聞いていたが、この道は、そなたが切り開いたのか」
と、サルタヒコさまにたずねました。
「はい、さようでございます。迂回せずに、琵琶湖に沿っていけるよう、三つの峠をけずり取って、あちら側に移しました」
サルタヒコさまが指し示す方向を見ると、湖の反対側に、こんもりと三つの小山ができています(注1)。
「ほう、これは見事な」
ニニキネさまは、お日さまの光が輝く湖の向こう岸を、まぶしそうに眺めました。
「あまった土で、川をせきとめ、傾斜地に棚田(注2)も作っておきました」
「うむ。千里眼を持っている上に、これだけの大仕事を、あっという間にやり遂げたそなたは、ただ者ではあるまい。ほうびに、三尾の神(注3)の名を与えよう。そして、アメノウスメを妻とするがよい」
ニニキネさまのお言葉に、ウスメさまの頬が、ばら色に染まりました。
その後、サルタヒコさまとウスメさまは、おふたりで、お神楽の家元にもなられ、子々孫々まで栄えたということです。
サルタヒコさまが、ニニキネさまにみあえをご用意したお宮は、現在も白髭神社として残っています。
注1)滋賀県野洲市の三上山
注2) 山のしゃめんなどに、かいだんじょうにつくられている田んぼ
注3)三つのとうげ(尾根)を切りひらいたことから名づけられた。
崇尾青見先生が描かれた猿田彦命の神絵の画像
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