「ところで、サルタヒコさまは、ニニキネさまがこちらに行幸されるのを、どうしてごぞんじだったのですか」
ウスメさまがたずねると、
「それはもう、わしは、千里眼だからな」
と、サルタヒコさまはいって、楽しそうに笑いました。
ウスメさまは、いっしゅん、おどろいた顔をされましたが、たのもしくて男前なサルタヒコさまに、うっとり見とれてしまいました。こんなにすてきな殿方と出会えて、なんてしあわせなのだろうと思いながら、ウスメさまは、つづけてたずねました。
「ここから先は、けわしい山がつづくと聞きますが、どの道をとおるのが、いちばんよいと思われますか」
「しんぱいにはおよばん。わしが、あんないしよう」
「心強いおことば、ニニキネさまも、およろこびになられることでしょう」
れいせいをよそおってこたえたものの、ウスメさまは、むねがドキドキしていました。
「サルタヒコさまは、ニニキネさまの行き先を、ごぞんじですか」
「もちろんだとも。筑紫へ行かれるのだろう」
「そこまでごぞんじでしたか」
「もちろんだとも。ニニキネさまに、おとりつぎくださるか」
「はい、よろこんで」
「それは、ありがたい。じゅんびばんたんととのえて、まっておったから、そなたも、ニニキネさまによろこばれるであろう」
こうして、ニニキネさまは、サルタヒコさまのごこういを、お受けになることになったのです。