「この子たちがお腹にいる間は、どうなることかと思ったけれど、こうして、無事生まれてきてくれて、本当にうれしいわ」
すやすや眠る三人の赤ちゃんを見つめながら、ハヤコさまがいいました。
「ええ。ひとりでも大変なのに、一度に三人も。よくがんばったと、わたくしも思いますよ」
「お姉さま」
モチコさまのお言葉に、ハヤコさまが胸をつまらせました。
「それにしても、こんなに小さな手をしているのに、びっくりするほど強い力でにぎりかえしてくれるのは、女の子も同じなのね」
モチコさまが、赤ちゃんの手を取っていいました。
「そうね。お姉さまに男の子が生まれた時は、なにもかもが初めてのことで、驚きの連続だったわね。小さくても、一度にぎったらはなしてくれなくて、お姉さまと顔を見合わせて笑ったものね」
「ええ、懐かしいわ」
モチコさまとハヤコさまが微笑み合いました。
「でも、大きな声ではいえないけれど、この子たちが、ソサノヲさまの子だったらと、つい、思ってしまうのよ」
ハヤコさまが、小声でいいました。
「ハヤコ、めったなことを、いうものではありません。あなたは、この国のアマカミ、アマテルカミさまのお妃なのですよ」
「もちろん、わかっていますわ。でも、なにもかもが完璧なアマテルカミさまよりも、三男坊の冷や飯食いの立場を楽しんで、のんびりしていらっしゃるソサノヲさまに、つい惹かれてしまって」
「ハヤコ、そのことは、心の中にしまって、アマテルカミさまに、しっかりお仕えしなければなりません。わかりますね」
モチコさまの言葉にうなずきながら、ハヤコさまは、小さくため息をつきました。
この三つ子の赤ちゃん、タケコさま、タキコさま、タナコさまが、後に宗像三女神と呼ばれるお姫さまたちなのです。
お母さまのハヤコさまは、なにやら心が浮ついているようですが、大丈夫でしょうか
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