日本で一番悪い奴ら
  監督 : 白石和彌
  製作 : 日本

  作年 : 2016年
  出演 : 綾野 剛 / YOUNG DAIS / 中村獅童 / ピエール瀧 / みのすけ / 植野行雄

 

 

白石和彌 日本で一番悪い奴ら 綾野剛

 

かつての実録のやくざ映画やテレビの刑事ドラマには<この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません>と掲げられていたものです。(本当に一切関係がないときにはそもそもつけようとはしないんですから、この但し書き自体が何となく関係しておりますよと告白しているようなものでそう考えるといままでこれは<実在の人物、団体、事件>の当事者へ(皆さまのことを描いてはおりませんと)弁明しているのだと思っていましたがそうではなく見ている観客に(当事者とはきちんと話がついてるんだから)いろいろと勘繰るなよと釘を差していたのだとわかります。)それからすると本編が口あけとともに<この物語は北海道警察の実在の刑事をモデルにしたフィクションである>と宣言するのは何とも挑発的です。まさにその刑事こそ本編の主人公で柔道の腕前を買われて(本人は補導歴を気にして身を竦めていますが)見事警察に引き抜かれます。(それにしても冒頭のこの場面、同じく道場で柔道に励む主人公が師範の口利きで内定していた警察への奉職を蹴ってやくざの世界に飛び込む『修羅の群れ』(山下耕作監督 東映 1984年)の始まりがゆらゆらと立ちのぼってきて... 白石がそう意識していたかはわかりませんが警察と暴力団が二匹の蛇となって絡み合う本編に何とも相応しい映画史的な谺です。)さて刑事になったとは言え調書ひとつ満足に書けず待ったなしの犯罪と捜査の毎日にまったく展望が開けません。その主人公に刑事部屋随一の凄腕の先輩が声を掛けて来ます。連れて行かれたのは夜を仰ぎ見る繁華街にあっても眩さにひれ伏すばかりの高級クラブでしてそこで面白いように女性をはべらせ面白いようにお酒を呷って笑いの止まらない自分のいまを見せつけます。刑事の給料でどうこうできる場所ではありません、しかしまるでこの街の頭上に土足の足を放り投げるようなわが物顔の自信が漲っています。彼が主人公に教えるわけです、警察という組織のなかでわが世の春を満喫するための裏のからくりを。闇にどっぷりと埋もれた拳銃や覚醒剤が普通に捜査してぽこぽこ見つかるはずはありません。法治国家の法令と令状は市民の権利を守りますがその守られた権利の内側に拳銃も覚醒剤も沈んでいてそこに手を入れるには何らかの法を犯す勇気がいる... 先輩刑事は言います、やくざの懐に飛び込めそしてその<糞まみれの>関係から情報を引っこ抜くんだと、そうです彼のこの輝かしい遊楽はやくざからの情報とやくざへの便宜というやじろべえに揺れていたわけです。しかしこの日を境に主人公は俄然自分の進むべき道に開眼すると脇目も振らず突き進んで道警のエースと謳われる成績と引き換えにだんだんと抜き差しできない泥沼に嵌っていきます。まさに題名のままですがそこは若松孝二の薫陶を受けた白石和彌ですから勿論<日本で一番悪い奴ら>とは主人公のような跳ねっ返りを手先に使いながら使うだけ使ってその姿を見せない黒幕でしてポスターのロゴでも題名のど真ん中を桜の代紋がぶち抜かれておりますよ。

 

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