私も読者のひとりであります 『名前のない金魚』 の 仁香さん のお呼びかけに、末席ながら参加させて頂きます。お題は... 薔薇。

 

 

#Flower薔薇_五十女こけ

 

 

『妻よ薔薇のやうに』という映画をご覧になったことはおありでしょうか、もちろん成瀬巳喜男の... 1935年の映画です。ヒロインは千葉早智子、彼女の母はいわゆる文化的な職業婦人で講演だの何だのと忙しく飛び廻っております。さて父は... その父を東京で見たというひとがあって千葉の心がこの数日落ち着かないのです。父は鉱脈を求めて山から山へそんな仕事ですからもう長く家にはいないのですが、そればかりが理由ではありません。父にはもうひとつ家庭があっていまではずっとそちらで暮らしているのです。父をもう一度母とひとつの家庭に住まわせたいと決死の覚悟で父の家を訪ねるとそこにいたのはとても気の優しい女性と気立てのいい千葉の妹弟に当たる子供たちです。この家庭の落ち着きに触れると千葉の心は揺れます。それでも父を一旦連れ戻しますがやはりほどなく父は家をあとにします。母のあまりに身構えた妻ぶりに同じだけ背伸びをして夫を続けることに耐えられないのです。父、母それぞれの悲しみが交わらないまま千葉の両手に残ります。それにしても<妻よ薔薇のやうに>、絢爛たる花束が咲きほころぶひと抱えの幸福に満たされた題名です。でも一体誰の言葉なんしょう、これを口にするのにふさわしい父はしかし妻の気高さの前に自分の身の置きどころが見つかりません。とてもこんな言葉を妻に投げかけることはなさそうです。妻よいつまでも薔薇のようにあれ、とこの題名を口にするひとが実はこの映画にはいない、実に不思議な題名です。いやこういうことなのかもしれません、この映画を見終えたらひと呼吸あけて世の男性諸兄に呟くように誘っているわけです、<妻よ薔薇のように>と。

 

 

成瀬巳喜男 妻よ薔薇のやうに 千葉早智子

 

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『 こけさんの、なま煮えなま焼けなま齧り 』 五十女こけ