なんだか、お話を書きたい欲がウズウズしまして。
久しぶりですので、うまくできてるかどうかわかりませんが、書いてみました。
よろしければ、お付き合いください。
久しぶりのお話投下。長くなってしまったらすみません。
・「約束~Valentine's day~」
~I Love you forever~
とある場所の施設の一室。
男は目の前で眠っている人物を眺めている。
もう何年になるだろうか。
その人は、ずっと眠り続けている。
彼は、毎年この日に訪れては一日をここで過ごして帰ってゆく。
それを何年も続けているのである。
まるでこの日に希望を見出すかのように。
✩
施設の職員は、彼が何者でどんな人物なのか?
室内で眠っている人物は彼とどういう関係なのか?
毎年この日に通い続ける訳は何なのか?
詳しく知っている職員はほとんどいないようで彼が現れると、退屈な施設内の格好の噂話の一つとして毎年職員の話のタネになる。
職員の詰所を会釈して通り過ぎていった彼に愛想笑いで返した職員たちは、
「ほら、また来たわよ。例の白百合の人」
「見た見た。やっぱり今年も来たわね」
「背の高いイケメンで素敵な人よねぇ。謎の多い人だけど、そこも影がありそうでいいわぁ」
などと小さい声で会話している。
「でもあの人、私が新人の頃から通っているからもう何十年と来ているはずなんだけど、変わらないのよねぇ。不思議」
「本当ですよねぇ」
「あの人、あの特別室の人のところへ行くんでしょ。それも毎年2月14日だけ」
「そうなんですよね。山田さんって呼んでますけど、本名かどうかもわからないですし」
「しっ!山田さんの話は禁句よ!詳しいことは所長と施設長しか知らないらしいし。私たちは黙って職務をこなすだけよ。下手に首を突っ込んで辞めさせられた人もいるんだから」
「えっ、そうなんですか・・・」
「そうよ、だからほら、もうこの話は終わり。仕事に戻りなさい」
「はーい」
✩
施設の一番奥にある「特別室」。
その部屋の扉には「近親者及び施設関係者以外立ち入り禁止」という張り紙がしてある。
特別室の前まで来た男は、部屋の前で少しの間立ち止まっていたが、意を決するように扉を開ける。
「やあ、元気かい?1年ぶりだね」
作り笑顔で声をかけるものの、眠っている相手は応えるはずもなく。
「すまない、本当はもっとたくさん来るべきなんだろうけどね。つい日常に追われて気が付くとこの日を迎えてしまうんだ」
「ほら、君の好きな白百合を持ってきたよ。これで少しはこの部屋も華やかになるかな」
男はそう言って、サイドテーブルのところにあった花瓶に持ってきた白百合を生ける。
殺風景で無機質な部屋に、白百合の香りが漂い出す。
そして、ベッドのそばの椅子に腰掛ける。
「さて、1年ぶりに来たんだ。何から話そうかな」
男はこの1年の間に起こった出来事を目の前の人物に語り始めた。
「最近は常連さんも出来てね。少しずつだけど店も軌道にのってるんだ。若い人たちも来て、賑やかなもんだよ」
「あの子は相変わらず、毎日元気に学校に通っているよ。友達も多いみたいだし、気になる先輩なんかもいるんだって」
「時々、あの子が君に見えることがあってびっくりするよ。年々君に似てきているよ、当たり前だけど」
「あの子も、もう少ししたら俺たちが出会った頃の年齢くらいになるんだ。なんだか不思議だよな」
しばらく他愛もない話を続けていた男の会話は、急に途切れ部屋の中には沈黙と白百合の香りだけが漂っていた。
「やっぱり、今年も目を覚ましてはくれないんだね」
悲しそうに呟く男の目は、目の前の人物へと注がれている。
「これはきっと、君から俺への『罰』なのかもしれないね。『一生忘れるな』っていう」
「今日は君と俺にとって『大切な日』でもあり、俺にとっては『贖罪の日』でもある。だからこうして毎年、この日はここに来るようにしてる。君が目を覚まさないのは、俺をまだ許してないっていうことなんだろう?そうなんだろう?」
その問いかけに応えがあるはずもなく。
ただ、その人に取り付けられた機械音のみが虚しく部屋の中に響いていた。
「あの時、『あの方』が手を差し伸べてくれなければ、君は今もこうして生き続けることはできなかっただろう。君は『馬鹿だ』って言うかもしれないけれど、俺はあの時の決断を後悔していないよ。君を失ってしまう恐怖に比べたら、何でもないよ」
乾いた笑いを浮かべながら、男は語り続ける。
「今の俺は、君が好きだと言ってくれた『昔の俺』ではなくなってしまったけれど、君とあの子を守るために俺は自分と『約束』した。君たちを守る為なら、俺は悪にでもなると。俺の目の前で君をこんな風にしてしまった『奴ら』を決して許しはしない!」
一気に捲し立てた男は、興奮していたのか深呼吸をして息を整える。
「ごめん、大きな声を出して。君は許してくれないかもしれないが、でもこれが俺なりの君に対する『愛の形』なんだ。だから、許されなくてもいいんだ」
「君がもし目覚めた時は、俺も覚悟を決める。過去と決別して迎えに来るからね。あの子にもちゃんと君のことを話すから。そうしたら、君とあの子と俺と新しい所でやり直そう。ただ、それにはもうしばらく時間はかかりそうだね。だって、君は今日もまた目覚めなかった」
部屋に来た時と同じ作り笑顔を浮かべる男は、椅子から立ち上がる。
「ごめんね、そろそろ時間だ。もう帰らないと、あの子が帰ってきてしまう。君がいない分、なるべく俺があの子の傍にいてあげたいんだ」
帰り支度をする男は、思い出したように口を開く。
「ああまだ言ってなかったね、誕生日おめでとう。俺は年を取っていくけれど、君はあの頃のまま、綺麗な君でいてくれる。それは俺への『罪』をはっきりと思い出させてくれるんだよ」
その人の耳元へ顔を近づけると、
「どんな君でも、愛しているよ。永遠に」
そう言うと男は、その人へ顔を重ねた。
荷物を持った男は部屋の扉へ手をかけながら、
「じゃあ、またね。いつか君が目覚めることを願ってるよ」
そう言いながら、振り返らずに扉を閉じた。
✩
「ありがとうございました。またしばらく来られないと思いますが、あの人のことよろしくお願いします。これ、良かったらみなさんでどうぞ」
男は職員たちがいる詰所に挨拶をして、持ってきた手土産を応対した職員に手渡す。
「あ、ありがとうございます。主任、いただいてもよろしいでしょうか?」
「せっかくのご好意ですから、いただきましょう。山田さん、ありがとうございます」
「店で作ったもので申し訳ないのですが、召し上がってください」
「お店をされているんですか?」
「ええ、喫茶店を。小さい店ですが、細々とやってます。父一人、子一人ですがなんとかやってますよ」
「お子さん、いらっしゃるんですか?」
「ええ、娘が一人」
「今度は、お嬢さんもこちらに来られるといいですね」
「そうですね、では」
穏やかな笑顔を浮かべ、軽く会釈をして男は去っていく。
「あの人子持ちだったんですね、主任。しかも喫茶店をしてるって、新情報です!それにしても美味しそうなケーキですね。喫茶店で出してるんですかね?」
「あまり人のことを詮索するもんじゃないわよ。さっきも言ったけど、事情はどうあれ私たちはただあの人のお世話をすること。それだけよ」
「はーい」
✩
「あれ?」
「どうした?はたピン」
「うん・・・、さっきそこの建物から『サンセット』のマスターが出てきた気がしたんだけど・・・」
「え?他人の空似だろ。だって、俺たちの本部からここってかなり距離あるし、俺たち朝に会ったじゃないか」
「うん、そう、だよね。似てる人だよね、きっと・・・」
「そうだよ、ほらもうすぐ現場つくよ!」
「終わったら、バレンタインでクリスにチョコ渡すんでしょ~。このこの~」
「イタタ、痛いよ~。うん、でも喜んでくれるかな・・・」
「ぼくは、みーちゃんにあげよっかな~♥」
「え?冗談だろ?もっちー俺よりモテるんだから、たくさんもらえるじゃん・・・。モテない俺を心配して、渡さなくてもいいよ・・・」
「でもさ~、よりによってこんな日に悪さする奴がいなくてもいいのにね!全く~」
「『こんな日』だから、かもしれないよ。他人の幸せを見せつけられる日、なんて見たくもないから頭にきて・・・、なんてこともあるのかもよ」
「そんなもんなのかな~」
この日、クリーンレンジャーの面々は清掃活動のためこの地へ向かっており、車内ではこの日のイベントのことでもちきりだった。はたピンは先ほどのことを忘れてしまったが、この日彼女が見かけた人物は他人の空似ではなかったのかもしれない。
✩
久しぶりに文章を書きました(^_^;)。
お付き合いいただいて、ありがとうございました。
最近は、子供のことに重点をおいているので、お絵描きやらお話やらの創作活動?(と言えるほどのものを作ってないですが)すっかりおそろかになっておりましたが、バレンタインでなんか絵でもと思っていたら、文章になってしまいまして(;^ω^)。
何日かに分けたので、当日に出せずじまいで大遅刻ですが、折角なので出してみました。
最近はブログよりも、ツイの住人になってまして。
タグで遊んだり、相変わらず妄想を晒したりなどしてますがなんとかやってます(笑)。
今回のお話。
あえて「誰」というのは、伏せさせていただいて(笑)。
最後にちょろっとヒント出してるので、分かる人にはわかっていただけるんじゃないかと思います。
クリーンレンジャーの面々を少し登場させてしまいました。
作者の皆様、勝手にお借りしましてすみませんm(_)m。
はたピンこと桃香さん→遊パチママさん
もっちーこと望月くん→けぽるさん
みーちゃんこと黄藤くん→にょへ子さん
あと、数名声の出演してもらいました(笑)。どなたか想像しながら読んでいただいて。
勝手にお借りしてしまい、事後報告になってしまいましてスミマセン。
素敵なキャラクターの面々に協力いただいて、今回も感謝です。
ありがとうございました(´∀`)。
いつか、この人のお話を書こうと思っていたのですがなかなかタイミングやら文章がうまくできず、なぜかこのタイミングで仕上げたら、けっこう病んでる設定になったような・・・。
ぼちぼちこちらもお話続けられるといいなぁと思ってます。
その時には、またお付き合いくださいませ。