どうも、ご無沙汰しております。
最近めっきり創作系をしなくなっておりましたが、構想のようなものはずっとスマホのメモにつっくっていたりしまして。
 
先日某所に載せました文章をこちらにも出しておこうかと。
タイトルっぽいのを載せておきます。
 
「雨と傘と俺と貴方」
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その①
 
「痛った・・・」
殴られた頬が痛い。

自分の性分がつくづく嫌になる。
よく人からは「優しい人」だと思われている。

人と接する上で
なるべく波風立てずにやっていきたい。
そう思うからなるべく相手優先に考えてしまう。

その結果、
自分が損な役回りになることも少なくない。

ある夜の帰り道
酔っ払いに絡まれている若い女性がいた。
みんなは見て見ぬ振りをして通り過ぎていく中、自分の性分がそれを許さなかった。

「あんた、やめとけよ。嫌がってるだろ」

そう言って酔っ払いの肩に手をかけた途端、振り向いた相手の拳が顔に入った。

「うるせぇ、ふざけんな!」

酔っ払いは何かスポーツや格闘の経験者なのだろうか。思いの外力が強く、顔の次に入った腹への拳に倒れてしまった。

そんな様子に絡まれていた女性も隙を見て逃げてしまい、酔っ払いはそれにも腹を立てたのか倒れた体に蹴りを入れてきた。

「馬鹿野郎!」
酔っ払いは気が済んだのか、そう吐き捨てて去っていった。

痛くて動けない。
口の中も切れたのだろうか、血の味がする。

自分が損してしまうのをわかっているのに、困っている人を見ると放っておけない。
そんな自分が恨めしい。

深夜の歓楽街の片隅。
倒れている人間に関心を寄せる者などいるはずもなく。

余計な事に巻き込まれたくなければ通り過ぎていくだけの人達。
本来はそれが正しい姿なのだろう。

冷たい雨も降ってきたというのに痛みに唸っていると

「大丈夫?」

声をかけられた方に顔を向けると、
差し出された大きな傘の中に心配そうに覗き込む人の顔がうっすらと見えた。