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クラシック音楽レビュー

私個人の好きなクラシック音楽のレビューを書いていきます。
よろしければ、お読み下さい

まえがきとあらすじ

 

この作品はフィクションです、登場する人物は実在する人物とは一切関係ありません。

 

この作品は、以前に無料小説サイトのカクヨムで書いたものをリニューアルしました。

 

思い入れのある作品です。

ミステリーな部分が多く、いっけんホラーと思われますが、淡い純愛ストーリーになります。

途中がとても切ないですが、最後はハッピーエンドですので闘病生活を送られていらっしゃる方もご安心してお読みください。

 

 

高校生活を送っている、明は補習の帰り道に病院の病室から優しく手を振る美少女に恋をします。

しかし、病室の少女は謎めいています。

そして、ある日、明の学校に、病室の少女にうりふたつの水樹が登場します。

どんでん返しのどんでん返しになります。

 

私の自信作でカクヨムでも最もよく読まれましたので、よろしければ短編ですが時間のある時にでも読んでいただきますとうれしいです。

 

 

 

 

白い幻の中に僕はいたのだろうか、それとも現実が呼んでくれたのか。

それは、わからない。

遠くから想いが僕を呼んでくれた。

 

 

それは、最後の高校生活での出来事

 

僕は一人呟きながら自転車で自宅まで帰っていた。

ああ、今日も補習だったか、夏の時期に自転車で家まで帰るの辛いな。

なにせ自宅まで4キロあるからな。

そういえば、あそこに大きな病院があったか。

 

病室の窓から少女が手を振っている。

 

 

自分に?

そうだよな、俺しかいないから。

どうしよう?

恥ずかしいな。

少女は病気なのかな?

入院しているということはきっとそうに違いない。

色が白くてきれいな子だったな。

正直、うれしい。

 

翌日

 

また、今日も補習か、ところで、あの子はどうしているのかな?

そろそろ、病院だな。

 

 

また、手を振っている。

優しい笑顔だ。

可愛いな。

どうしようかな?

もしかして、僕に気があるのかな?

まあ、可愛いし、手を振ってみよう。

 

おお

 

優しく手を振ってきた。

どうしようかな?

まあ、いいか、恥ずかしいしな。

 

さらに翌日

 

今日はどうなんだろう?

やはり優しく手を振っている。

どうすればいい?

あんなにきれいで可愛い子が僕の彼女だったらな・・・

 

自宅に帰り僕は彼女の事が気になって仕方がなかった。

僕は明日病院に行って面会を申し出ようと決心した。

 

病院にて

 

「事務員さん、すみません、あの病室の女の子に面会したいのですが・・・」

 

「わかりました。」

「ちょっと待ってください。」

 

事務員は階段を上り彼女に聞いてきたみたいだった。

そして降りてきて僕に返事をした。

 

「実はそれは本人が出来ないと言っているんだよ。」

 

「ええ・・・」

「でも、病室から毎日のように僕に手を振るのですよ。」

 

「仕方ないね、君。」

 

「わかりました。」

 

僕は不思議でならなかった。

どうして、僕に手を振るくらいなら、僕に面会してもいいだろう。

何か事情があるのかな・・・

 

僕はせめて、名前だけでも教えてもらおうと再び翌日に病院へ行ったのだった。

 

病院にて

 

「事務員さん、せめて、名前だけでも聞いてきてもらえませんか?」

 

「どうだろう、教えてくれるかな?」

「聞いてくるから、待っていて。」

 

また、階段を上って降りてきた。

 

「名前も教えてくれなかったよ。」

 

悪戯が風に乗ってきたのだろうか?

僕はそうであってほしくなかった。

なぜなら、僕はさびしかったからだ。

 

それからも、毎日のように少女は優しい笑顔で手を振りつづけた。

僕は彼女に心を寄せていたから手を振った。

なぜだろう?

周りがみたら、どうみても恋人同士なのに、どうして?

 

そうだ、声をかけてみよう。

どうして、この事に気がつかなかったのかな。

僕って馬鹿だな。

でも、目の前に庭木があって距離があるな。

それに、2階に入院しているしな。

声が届くかな?

 

よし

 

「僕は明というけど、君は誰?」

 

あれ、悲しそうな顔をしている。

それとも聞こえないのかな。

仕方ないな・・・

何か理由があるのかな・・・

 

 

それは、学校での出来事だった。

 

キーン・コーン・カーン・コーン

 

「みんな聞いてくれ、今日から転校してきた生徒を紹介する。」

「鷲谷水樹さんだ、仲良くするように。」

 

 

あの子じゃない?

どうして?

退院してきたのかな?

でも、よかった。

これで話ができる。

 

勇気を出して声をかけてみよう。

 

「水樹さん、いつも手を振ってくれたね。」

「ありがとう、うれしかったよ。」

「これからも、仲良くしてね。」

 

「え、誰の事ですか?」

 

「ええ、僕だよ、わからないの?」

 

なぜだろう、もしかして双子かな?

そうか

 

「水樹さん、もしかしたらだけど、近くの病院に妹さんが入院している?」

 

「誰ですか?」

「私には妹も姉もいませんけど。」

 

「本当に双子じゃないの?」

「水樹さん、からかっているでしょ?」

 

「え、何をですか?」

 

「本当に僕を知りませんか?」

 

「はい。」

 

 

時は夏だった。

 

 

僕と水樹さんとよく話す機会が多くなった。

 

「明さん、暑いですね。」

 

「水樹さん、そうだね。」

 

「明さんは何か趣味とか、好きなものがありますか?」

「映画とかは見ますか?」

 

「そうだね、ホラー映画とか好きかな。」

 

「音楽は好きですか?」

 

「僕はこれでも、一応バンドを組んで活動しているんだ。」

 

「是非、聴いてみたいです。」

「私はピアノが弾けるから、キーボードくらいなら弾けますよ。」

 

「それなら、僕達のバンドに入らない?」

 

「はい、是非。」

 

言葉にならない切なさが僕を襲った。

 

水樹さんが転校してバンドに入ってから、病室の少女の姿を見かけなくなったのだ。

どうして・・・

 

バンドに入ってから次第に水樹さんと親しくなっていったのだった。

彼女は僕に興味あるみたいで、僕に日常の事をよく聞いてきた。

 

「明さんは誰か気になっている人はいますか?」

 

「まあ、いることはいるけど・・・」

 

「誰ですか?教えてください。」

 

「まあ、いいじゃない。」

 

「そうですね・・・」

 

それは、ある日のことだった。

 

病院に少女がいるではないか。

 

また、僕に手を振っている。

どうして・・・

突然、姿が消えたのに・・・

 

僕は大きな声で聞いた。

 

「久しぶりだけど、どうしたの?」

 

やはり、返事がなかった。

それだけでなく、暗い表情をして病室に戻っていったのだった。

 

どうして・・・

 

翌日になり、水樹さんが僕に問いかけてきた。

 

「やっぱり気になる人を教えてもらえませんか?」

 

「いや、それは言えないな、ごめんね・・・」

 

「そうなんですか・・・」

 

水樹さんの表情が悲し気だった。

 

自転車で帰ると相変わらず少女が手を振っている。

どうして、僕の想いは伝わらない。

手を振ってくれるなら、僕の想いにこたえてほしいな。

 

悲しさが僕の自転車を押してくれた。

 

僕が好きなのは君なんだよ・・・

病室から手を振る君だよ。

名前がわからないし、話しかけても返事がない。
 
どうして・・・
 
僕の事を好きなんじゃないのかな?
そうじゃないと手を振らないだろう。
病気だから寂しいだけなのかな?
それとも、何か理由があるのかな?
 
そうだ、手紙を渡せばいい。
どうして、今頃気づくんだ。
 
よし
 
そして、ぼくは病院へ行って事務員さんに手紙を渡すようお願いした。
 
「事務員さん、この手紙を入院している子に渡してくれませんか?」
 
「ああ、渡すだけならいいけど、読むかどうかはわからないよ。」
 
「きっと読んでくれると思います。」
 
「わかった、君の気持ちがわかったよ、手紙を渡してあげるから。」
 
「ありがとうございます。」
 
よし、明日、返事をもらいにいこう。
 
「事務員さん、手紙を預かっていませんか?」
 
「いや、預かっていないよ・・・」
 
どうして・・・
体の調子が悪いのかな?
 
翌日になって。
 
今日こそ手紙をもらえるぞ。
 
「事務員さん、今日は手紙を預かっていますよね?」
 
「いや、預かっていないんだよ・・・」
 
「どうしてですか?」
 
「そこまでは、わからないな。」
 
「じゃあ、読んだかどうかだけでも聞いてもらえませんか?」
 
「わかった、聞いてあげるよ。」
「明日、また来なさい。」
 
「はい。」
 
翌日
 
「事務員さん、どうでしたか?」
 
「それが、悲しそうで返事しないんだよ。」
 
どうして・・・
僕の想いは伝わらないのかな・・・
仕方ない、でも悲しいな。
 
後日になって
 
「明さん。」
 
「ああ、水樹さん、どうしたの?」
 
「一緒に帰りませんか?」
 
「ああ、いいよ。」
 
「どうして、最初に私を誰かと間違えたのですか?」
 
「それは、容姿が全く同じだったからだよ。」
「今も区別がつかないくらいだよ。」
 
「その女の子と私とどちらが好きですか?」
 
「それは言えないな。」
 
「そうですよね・・・」
「私は明さんのいろいろな事を知りたいです。」
 
「どうして?」
 
「それは教えられません・・・」
 
「そうなんだ。」
 
やはり、水樹さんは僕の事が好きなんだろうか?
それから、水樹さんは毎日のように僕の日常生活を聞いてきた。
 
見た目は同じでも僕が好きなのは君なんだよ・・・
どうして・・・
優しく手を振ってくれる君だよ。
 
そして、僕はいい方法を考え付いた。
 
そうだ、手を振っているだけじゃ駄目だ
声をかけるだけではなくて、違う方法で手紙を渡そう。
普通に渡したら届かないから、手紙を紙飛行機にして投げるんだ。
 
そうしたら、受け取ってもらえる。
いい考えだ。
 
そして、翌日
 
よし、手を振っている。
今だ。
 
僕は自転車から降りて準備した、手紙を投げよう。
 
あれ、彼女の笑顔が消えた。
不思議そうに僕をみている。
 
でも、投げるんだ。
しかし、庭木が邪魔だな、しかも2階だ、でも、勇気を出して投げるんだ。
 
ほら
 
あ、届かない。
 
すると、彼女の姿が見えなくなった。
どうして・・・
 
でも、明日もチャレンジしよう。
 
翌日
 
もう一度、投げてみたけど庭木が邪魔で届かない。
僕の想いは届かないのだろうか・・・
 
さらに翌日
 
今日こそは
 
 
彼女が紙飛行機を持っている、そしてこっちに投げた。
 
 
庭木に落ちた。
探さないと、どこだ、草むらと庭木でわからない。
どこだ、どうして・・・
 
僕は見つからなかったので、大きな声で気持ちを伝えようとした。
 
僕は明というけど、君は誰、僕は・・・
 
あ、姿を消した、どうして・・・
 
彼女の手紙には何と書いてあったのかな、気になって仕方がない。
彼女に会いたい。
どうすればあえるのかな・・・
 
どうして、彼女は僕の事を拒否するんだ。
でも、紙飛行機は投げてくれた。
全く嫌いではないはず、何か理由があるのかな?
 
僕の気持ちはどこに投げればいいんだ・・・
 
さらに翌日
 
僕が投げようとすると、また彼女が紙飛行機を投げてきた。
 
僕は必死に草むらと庭木を探した。
 
よし、見つけた、
なんて書いてある?
 
 
何も書いていない、どうして・・・
 
すると、彼女の目から涙が・・・
そして、姿を消した。
 
しばらくすると、水樹さんが病院から出てきた。
 
「水樹さん、どうしたの?」
 
「少し、体調が悪くて・・・」
 
「そうなんだ、顔色が悪いよ。」
 
すると、水樹さんの目からも涙があふれだした。
 
「どうして、泣いているの?」
 
「いえ、痛くて、痛くて・・・」
 
「どこか、悪いの?」
 
「いえ、悩み事もあったりして・・・」
 
「そうなんだ、何かあったら僕にいつでも相談してね。」
 
「もういいです・・・」
 
「どうしたの、急に?」
 
「いえ・・・」
 
 
水樹さんは走って帰って行った。
 
水樹さんはバンドでも元気がなかった。
 
「明、そういえば、最近は水樹さんが元気がないな。」
 
「そうだよね。」
 
少女と水樹さんとはやはり何か関係があるのだろうか?
僕は悩み始めた。
 
それより、もっと気になることがあった。
最近になって、病院の彼女の姿を見かけないからだ。
僕は寂しくてたまらなかった。
 
そういえば、何の病気なんだろうか?
辛いだろうな・・・
だから、僕に手を振っているのかな・・・
でも、どうして、優しい笑顔なんだろう。
 
僕は何度も手紙を投げた。
しかし、どうしても届かない。
僕の想いと同じじゃないか。
 
彼女もあれから紙飛行機は投げてこない。
話しかけても返事をしてくれない。
どうして・・・
どうして・・・
いつもあるのは優しい笑顔だけ。
僕はどうすればいいんだ。
 
ある日のことだった。
水樹さんが一人泣いていた。
僕は思わず声をかけた。
 
「水樹さん、どうして泣いているの?」
 
「いえ、何でもありません・・・」
 
水樹さんの姿が僕の目に悲しく映った。
 
それから、病室の女の子に変化があったのは・・・
 
彼女の笑顔がどことなく寂しい。
 
どうして・・・
 
何かあったのだろうか?
それとも病気が良くないのだろうか?
僕は気になって仕方がなかった。
 
すると
ある日のことだった。
彼女の方から手紙が届いた。
今度はさいわいに僕の足元に届いたのだった。
 
なんて書いてある。
僕は期待を胸に膨らませながら手紙を開けてみた。
 
何もかいていない・・・
どうして・・・
 
バンドでは水樹さんは元気そうに振舞っていたけれども、僕にはそう映らなかった。
 
 
そして、ついに卒業を迎えた。
 
卒業日の帰り道、少女ともお別れを迎えないといけなかった。
なぜなら、僕は進学するために大阪から東京へ行かなければいけなかったからだ。
 
僕は最後の祈りを込めて、少女に紙飛行機を投げた。
 
どうか、届いてくれ
必死に願った。
願いが最後に叶った
彼女の元へ紙飛行機が届いたのだった。
 
すると、彼女も紙飛行機を投げてきたではないか。
 
今日も何も書いていないのかと思いながら、手紙を開いた。
 
 
明さんへ
 
水樹は私の双子の姉です。
私はそのことを内緒にするようにお願いしたのです。
明さんの事をこっそり聞いてほしくて
私は毎日のように姉から明さんのことを聞くことができて、心をときめかせていました。
私は癌で長く生きることができません。
今からは次第にやせ細って髪の毛も抜けていきます。
ちょうど、明さんは東京の大学に進学するのですね。
もう、手を振ることができなくなる辛さもありますが、明さんに私の変わり果てた姿を見せることがなくて、良かったかもしれません。
明さんのことを想って頑張ります。
 
明さん、頑張ってくださいね。
 
美鈴
 
 
美鈴さん、どうして・・・
 
 
東京にて
 
僕は事情があって、大学に進学することができず就職することになった。
卒業して、2年の時を経過していた。
就職先では社会人として、厳しい世界が待っていた。
 
「おい、明、大学病院には営業に行ったのか?」
 
「いえ、なかなか、行く余裕がなくて、申し訳ありません。」
 
「馬鹿野郎、営業は時間を惜しんだら駄目なんだよ。」
「何回言えばわかるんだ。」
「あの病院で最新の医療機器を売らないと駄目だぞ。」
「お前の営業成績はいつも最下位じゃないか。」
「もっとしっかりしろ。」
 
「申し訳ありません。」
 
僕は落ち込みながら町通りを歩いていた。
すると、偶然にも水樹さんと出会ったのだった。
 
「水樹さんじゃない。」
 
「明さん・・・」
 
「元気にしていた?」
 
「はい・・・」
 
「水樹さんは確か、進学ではなくて就職だったよね?」
 
「はい、今は大学病院で受付の仕事をしています。」
 

「え、そうなんだ、偶然に今から大学病院に営業に行くところだったんだよ。」

 

「本当に偶然ですね・・・」

 

僕は水樹さんが寂しげにしている表情が見てとれた。

 

「どうしたの、元気がないじゃないか?」

 

僕は美鈴さんのことは聞くことができなかった。

辛くて辛くてたまらなかった。

やはりという想いが強かったからだ。

 

「でも、良かった同級生がいたら営業もしやすいな。」

 

そう言って会話の流れをかえるしかなかった。

 

「役にたつかどうかわかりませんけど・・・」

「ごめんなさい、私は早く仕事に戻らないといけないので・・・」

 

「ああ、ごめんね、水樹さん。」

 

やっぱり・・・

僕はやるせない気持ちでいっぱいだった。

大学病院には営業にいくことはしなかった。

しかし、社会はそう甘くはなかったのだった。

 

「おい、明、明日こそは営業の結果を教えろよ。」

 

上司からの命令だった。

 

僕は仕方なく、大学病院へと向かった。

大学病院へ着くとなぜか高校生のころの病院での出来事が思い出された。

 

 

大学病院の病室から、少女、いや、美鈴さんが手を振っている。

美鈴さん、どうして・・・

あの頃のままだ。

癌は良くなったんだね。

そうか、今は最先端の医療技術があるから、癌治療も順調に進んだんだな。

良かった。

 

今度こそ、話ができるかな。

仕事はどうでもいい。

 

しかし、水樹さんのことを考えると気持ちは複雑だった。

もしかしたら、僕の事を好きだったのかもしれない。

そう思ったからだ。

 

これ以上、美鈴さんのことに触れない方がいいのかな?

僕は悩み始めた。

水樹さんの気持ちも伝わってきたから。

だから、僕と町で会った時も元気がなかったのだろう。

 

それでも、僕はどうしても美鈴さんに会いたかった。

美鈴さんに会うにはどうしても、受付の水樹さんと話をしないといけない。

それでも、会いたい、そう思い水樹さんに声をかけた。

 

「水樹さん、美鈴さんは良くなったんだね。」

 

「はい・・・」

 

やはり、水樹さんの表情は暗かった。

僕はそれでも、美鈴さんに会いたい旨を伝えた。

 

「美鈴さんに会いたいのだけど・・・」

 

「はい・・・」

 

水樹さんは涙を浮かべていた。

僕の心は痛くて仕方がなかった。

でも、それ以上に美鈴さんに会いたかったんだ。

 

そして、水樹さんは病室へと向かった。

しかし、返事は悲しくも僕に会うのを拒否したかったらしい。

 

美鈴さんも、水樹さんの気持ちを察したのだろうか?

納得のいかない僕は水樹さんに理由を聞いた。

しかし、答えてくれなかった。

僕は仕方なく大学病院から会社へ帰った。

 

やはり、大学病院から美鈴さんが手を振っている。

 

どうして・・・

 

面会を断られたけど、僕はどうしても美鈴さんに会いたかった。

また、受付に水樹さんが座っている。

 

仕方ない・・・

 

「美鈴さんに会いたいのだけど、どうしても駄目かな?」

 

「明さん、どうしてわかってくれないのですか?」

 

「ごめんね、僕が好きなのは美鈴さんなんだ。」

「やはり、癌が進行して、美鈴さんは会うのが辛いのかな?」

 

「いえ、違います。」

「本当にわかってくれないのですか?」

「本当に・・・」

 

水樹さんは涙を浮かべていた。

 

「どうして、水樹さん、水樹さんの気持ちはわかるけど・・・」

「どうしても、会いたいんだ。」

 

「違います。」

 

「何が違うの?」

 

「明さんは女性のことがわからないのですか?」

 

「そうだよね・・・」

「僕は鈍感だから、ごめんね。」

 

「わかりました、案内します。」

 

コン コン

 

ドアをノックする音が寂しく響いた。

 

「あ、美鈴さん。」

 

「明さん、会いたかったです。」

「でも・・・」

 

「でもって、癌が進行しているの?」

 

「はい。」

 

「僕は美鈴さんが癌であろうとも、ずっと美鈴さんのことを想ってきたよ。」

 

「そうなんですね・・・」

「私は半年の命です。」

 

「美鈴さん、それでもいい、僕が支えるよ。」

 

「延命治療していないから、そんなに痩せ果てていないでしょう。」

 

「ああ・・・」

 

「もしかしたら、明さんに会えるかなと思って延命治療はしませんでした。」

「変わり果てた私の姿を見せたくなかったから・・・」

 

「明さんは、本当に女性のことがわからないのですね、これを見てください。」

 

「どうしたの、水樹さん。」

「え、僕が書いた美鈴さんに送った手紙じゃないか。」

「どうして、水樹さんが持っているの?」

 

「私は水樹ではありません、美鈴です。」

 

「え、どうして・・・」

 

「私は幸いに癌の治療が上手くいきました、でも、姉の水樹に癌がみつかって・・・」

 

「じゃあ、僕が今まで話していたのは美鈴さんだったの?」

 

「はい、どうして気づいてくれなかったのですか?」

「どうして・・・」

 

「でも、水樹さんも手を振っていたじゃない?」

 

「明さん、私は明さんに出会って、ずっと明さんのことを想ってきました。」

「美鈴が癌だとわかっていたから、私の気持ちを伝えることができなかったのです。」

 

「そんな、どうして・・・」

 

「どうして、私が水樹なのですか?」

「どうして、気づいてもらえなかったのですか?」

「でも、仕方ないですよね、双子ですから・・・」

「2年も経過すればもう、忘れてしまうのですね?」

 

「明さん、ごめんなさい。」

「どうして、大学病院から手を振ったかわかりますか?」

 

「いや・・・ごめんね、わからないよ。」

 

「私は美鈴になりたかったからです。」

「少しでも、明さんの気持ちが欲しかったからです。」

「でも、しょせん、私は水樹ですよね・・・」

「明さんが恋しているのは美鈴、でも、どうして気づいてあげられなかったのですか?」

「仕方ないですよね、双子ですから・・・」

 

僕は病室で立ちすくんだままだった。

どうすればいいんだ。

なんて言えばいいんだ。

わからない

僕はその場から逃げるようにはなれてしまった。

 

僕はそれ以来、大学病院へ行かなかった。

いや、行くことができなかったのだ。

 

しかし、社会はそう甘くはなかった。

 

「おい、明、大学病院の方がどうなっている?」

 

「それがなかなか・・・」

 

「なかなかじゃすまないだろう、もう一か月もたっているじゃないか?」

「よし、明、俺も一緒に行こう。」

「あそこは、大事なところだからな。」

 

ついに時が来た

 

どうすればいいんだ。

受付には美鈴さんがいるじゃないか・・・

水樹さんは病室に、僕が恋をしているの誰なんだ・・・

幻か、幻ならいっそのこと消えてくれ

僕も、いっそこの世から消えてくれ・・・

 

そして、再び大学病院に上司と行くことになった。

 

「大学病院になると、さすがに広いな、明。」

 

「はい、そうですね・・・」

 

「おや、あの病室から女の子が二人俺たちに手を振っているぞ。」

「まあ、俺はこれでもいい男だからな。」

「よし、俺が手を振ってみる。」

「あれ、手を振るのがやんだな。」

「お前に手を振っていたのか、お前が手を振ってみろ。」

 

「いえ・・・」

 

「どうしてだ、いいから振ってみろ。」

 

「いや、いいです・・・」

 

「これは上司命令だ、これも仕事の一つだぞ。」

 

「わかりました。」

 

僕は何とも言えない気持ちで手を振った。

 

「おおお、女の子達が喜んでいるじゃないか。」

「お前の営業も少しは役にたったようだな。」

 

「いえ・・・」

 

「おい、明、女の子二人がそれぞれ、紙飛行機を同時に投げたぞ。」

「まあ、お前への手紙だろうから、見てみろ。」

 

僕はおそるおそる、手紙を開いてみてみた。

 

 

明さんへ

 

明さん、やはり会えてよかったです。

これで、明さんに会うのも最後かもしれませんが、私は明日から闘病生活を送ろうかと思います。

やはり、髪の毛が抜けてもいいから、また、明さんに会いたいです。

それまでは、会いません。

それは、恥ずかしいからです。

明さんに、また会えて生き抜くことを決意しました。

美鈴には負けませんよ。

明さん、待っていてくださいね。

 

水樹より

 

 

 

明さんへ

 

明さんは女性に対して失礼です。

どうして、私が水樹なのですか?

怒りますよ。

せっかく癌も治ったのに、明さんは病気の女性が好きなのですか?

もう、大学病院へ営業にきても、受付の私は知らないふりをします。

冷たく対応しますからね。

でも

姉の部屋には案内します。

でも・・・

また、でもって書いちゃった

でも、明さんが営業が終わったら。

明さんの後ろ姿に手を振りますね。

お仕事は大変ですが、頑張ってください。

応援しますからね。

たまには美鈴のことも思い出してくださいね。

待っています。

 

美鈴より

 

 

そこに君がいて