鏡の中の少女 (原案) | クラシック音楽レビュー

クラシック音楽レビュー

私個人の好きなクラシック音楽のレビューを書いていきます。
よろしければ、お読み下さい

ABEMAプレミアム

 

おことわり

今まで、鏡の中の少女を連載してまいりましたが、原案ができましたので一度公開しようと思います。

ストーリーの中にはホラー的な要素がありますので苦手な方がご遠慮ください

なお、この話は完全にフィクションであり登場する人物、病院、団体等は一切関係ありません。

また、現代に医学とも相違しますのでご了承の上お読みください

 

 

 

 

ピーポー、ピーポー

お父さん、救急車が来ます

 

あなた

久美の様子が変です

 

どうした

さなえ

 

久美、どうした

 

お父さん、救急車のが庭に来ているの

ほら、音がするでしょ

 

 

久美、大丈夫か

救急車は来ていないぞ

夢を見ているんじゃないか

 

違うの、ほら

そこに救急隊の人もいるでしょ

 

 

あなた、どうしましょう

 

久美、しっかりするんだ

今から病院へ連れて行くから

 

だって、救急車が私を迎えに来ているじゃない

 

久美、しっかりしろ

 

さなえ、今からすぐ病院へ行こう

病院へ行くと言ってもどこへ

 

そうだな

精神的に正常じゃない

近くの白木川総合病院へ行こう

 

はい

 

 

白木川総合病院の精神科にて

 

先生、久美はどうでしょうか

 

そうですね、今も話をしていますが話がつながりませんし

独語、いわゆる、独り言を言ったりしています

幻聴や幻覚があるかもしれません

しばらく、入院した方がいいでしょう

 

わかりました、先生お願いします

 

 

 

一方、福山医療機器開発株式会社にて

 

 

鈴美さん

白木川総合病院への営業はどうなっているのかな

 

はい

 

村原営業部長が只今、医療事務担当者の方とやりとりをしております

 

鈴美さん

今回、わが社が開発した新型MRIの営業は社長である私自ら営業に行くべきだと思う

そう思わないか

 

そうですね、私もそう思います

 

じゃあ、村原君と鈴美さんと私で病院へ挨拶に行こう

鈴美さんは秘書として優秀で助かっているよ

今からもよろしく頼む

 

はい

 

 

白木川総合病院にて

 

ここか、やはり最近開設したばかりで建物も大きくきれいだな

村原君、各診療科には挨拶をしてきたのかな

 

はい、ただ、精神科だけは関係がないと思いましていっておりません

 

駄目じゃないか、全ての診療科に挨拶にいかないと

 

申し訳ございません

 

よし、これから挨拶にいこう

 

はい

 

ここが解放病棟か

おや、向こうの廊下から少女が歩いて来るじゃないか

 

 

 

「花束を落とされましたよ」

 

 

 

社長、気っと患者さんですよ

花束はここには無いじゃないですか

 

「この花束は僕にですか」

 

社長、相手にしない方がいいですよ

 

いいから、村原君

 

「そうです、あなた様が落とされました」

 

「ありがとう、わざわざ拾ってくれたんだね」

 

「いえ、どういたしまして、それでは失礼します」

 

 

 

社長、きっとあの少女は頭がおかしいんですよ

 

駄目だよ村原君、精神障がい者への偏見はいけない

 

そうです

村原営業部長

 

そうだよね

鈴美さん

 

はい

 

それじゃ、精神科へ向かうとしよう

 

 

ピンポーン

 

はい、どうされましたか

 

私どもは福山医療機器開発株式会社から仕事の挨拶でまいりました

社長の福山誠と申します

 

少々、お待ちください・・・

 

 

下地先生、下地先生・・・

 

どうしたの、田中さん慌てて

 

医療機器の会社の方が営業に見えられて・・・

 

ああ、忙しいんだから、あなたが適当に相手していて

 

それが、下地先生、社長が超イケメンなんです

 

あら、本当

すぐにここに通してちょうだい

 

初めまして、福山医療機器開発株式会社、社長の福山誠と申します

今回はわが社での新型MRIの紹介をさせていただけないかと思いまして挨拶に参りました

 

まあ、素敵

ああ、言い遅れました

私はこの精神科の責任者の下地和美と申します

おばさんだけど、一応ここの女医になります

 

いえ、とんでもない

素敵な先生です

 

まあ、社長はお世辞が上手なのね

早速、製品を紹介してください

私はこれでも内科との責任者とも仲がいいから私がプッシュしますよ

 

本当ですか

下地先生

 

そうよ

あ、勘違いしないでね

下心があるんじゃなくて

社長みたいに若くで頑張っている男性を応援したいだけ

それに、精神科と内科とは医療的に密接な関係もあるから

そうそう、よければ、今からランチに一緒に行かないかしら

大勢で行くのもなんだから

私と社長でどうかしら

 

ええ、喜んで・・・

ありがとうございます

 

ここが病院のすぐ近くのオープンしたばかりの洋食屋なの

私も初めて行くから楽しみ

それに、社長みたいな素敵な方と・・・

 

いえ、僕はそんなに大した男ではありませんよ

 

とんでもないです

よろしいのでしょうか

私みたいなおばさんで

 

先ほども申し上げましたが素敵な方ですよ

 

まあ、社長ったら

ランチが終わったら、早速、製品を詳しく紹介してくださいね

 

はい、ありがとうございます

 

 

福山医療機器開発株式会社にて

 

鈴美さん

とてもうれしいんだけど困ったよ

どうやら・・・

 

わかりますよ

社長は素敵ですから

内科の責任者にも話を通してくれるからよかったじゃないですか

 

ただ、嫌な予感がするんだよな

それに、なぜか、あの少女にも気になるんだけどね

 

ああ、あの廊下での花束の少女ですね

 

きっと幻覚があるんでしょう

 

そうだろうけど

僕も同じくらいの妹がいるからね

なんだか可哀そうでね

 

社長は優しいから

 

 

白木川総合病院にて

 

お父さん、お母さん

ごめんなさい

久美は嘘をついているの

本当は救急車も見えていないし

演じていただけなの

だって、お父さん

お父さんの会社の今の経営状態が悪いでしょ

お父さんは私を法科大学院へ進学するようにすすめるけど

お金がいくらあっても足りないじゃない

私は心に病があることにするから、退院したら大学は辞めさせてね

嘘をついてごめんなさい

 

 

翌日

 

下地先生、下地先生

福山社長が見えられました

でも、診察の予約時間ですね

 

ああ、田中さん患者さんの予約時間だけど

なんとかごまかしてちょうだい

 

大丈夫なのですか

 

いいのよ、気にしないで

 

 

失礼します

先生、診察等でお忙しいのではないですか

 

大丈夫よ、ちょうど、今の時間は休憩時間で設定してあるの

早速、打ち合わせをしましょう

それから、どうしようかしら

私が料理は下手なんだけど、お弁当を作ってきたの

よかったら、お昼に一緒に食べないかしら

 

ええ、本当ですか

ありがとうございます・・・

 

 

「花束を落としましたよ」

 

 

君はこの間の

僕は福山というけど

 

私は松山久美と言います

 

久美さん、どうしたの

あら、大変、田中さん、久美さんがどうして診察室にいるの

ちゃんと見守っていないといけないじゃない

そういえば、福ちゃんは久美さんを知っているの

 

ええ、初めて病院に来た時に同じように、実際にはない花束を僕に渡そうとして

 

ああ、あれは幻覚よ

病気だから気にしないで

もしかして、福ちゃんは久美さんのことが気になっているの

 

いえ・・・

 

そう、それならよかった

あ、今のは独り言よ

私は若い社長を応援しているだけだからね

わかってね

 

はい・・・

それより、昨日のランチ代をやはりお返ししないと

 

駄目よ

人の好意はそれより、福ちゃんの財布が少し破れているわよ

そうそう、今日、仕事が終わったらデパートに行きましょう

私が社長に相応しい素敵な財布を買ってあげるから

 

いえ、それは・・・

 

私みたいおばさんみたいじゃ駄目なの

 

いえ、そんなことはありません

ありがとうございます・・・

 

 

 

翌日、福山医療機器開発株式会社にて

 

鈴美さん、困ったことになったよ

 

もしかして、下地先生のことでしょうか

 

そうなんだ

僕にどうやら好意があるみたいで

昨日はデパートに行って、その後食事をして、しまいにはバーで付き合わされたんだ

新型MRIはわが社が独自に開発した、いわばうちの目玉商品だからな

ところで、他の医療機関での営業はどうなっているのかな

 

それが、村原営業部長の話だと

全然、相手にされてくれないみたいで、唯一の望みが白木川総合病院だけなのです

 

それは不思議だな

なぜ、あの製品が・・・

 

わかりません

 

 

数日後

 

社長、どうやら、内科の斉藤先生も製品をとても気にいってくださったみたいで

ただし、条件があるの

 

条件とは何でしょうか

 

うちの病院は開設したばかりで、あのMRIを最初に取り入れたいの

他の病院にもあったら、遅れをとるからと斉藤先生が言うのよ

でも、しばらくの間だけだということだから

お願い、我慢して

 

わかりました

他の医療機関では全く相手にされないみたいですから大丈夫です

 

そう、それならよかったわ

 

 

「花束を落としましたよ」

 

 

あら、どうして久美さんが

田中さん早く来て

それから、久美さんと後で診察をするから打ち合わせが終わったら呼んでちょうだい

 

わかりました

 

 

 

打ち合わせ後の診察において

 

 

久美さん、あなたは福山社長に何か気持ちがあるのかしら

 

いえ・・・

 

あなたは幻覚や幻聴があるの

 

いえ、実は事情があって・・・・

私はそのような症状はありません

 

そんな嘘をついたら駄目よ今日から特別室で治療方法を変えるからね

わかったわね

 

はい

でも、私は本当に嘘をついていました

 

駄目よ、田中さん、田中さん

早く来て、久美さんを特別室に入れて鍵をしてちょうだい

 

わかりました

 

それから、あの薬を使って

 

え、先生あれは効果が強い薬で副作用が大きいのではないでしょうか

 

いいから

それから、明日から朝食後に睡眠導入剤を味噌汁にまぜていれて

 

先生、それは・・・

 

いいから、あなたは

私の紹介でこの病院には入れたんでしょ

このことは誰にも言ったら駄目よ

 

はい

下地先生

 

 

翌日

 

おはよう

久美さん、昨日は強く言い過ぎてごめんね

私はあなたの味方だから

ここから早く退院できるようにお互いに頑張りましょうね

そのためには、ちゃんと食事と睡眠をとって治療に専念しましょう

 

はい・・・

 

病院の食事は塩分を控えめにしてあるから薄味だけどちゃんと食べてね

 

はい・・・

 

 

そうよね

私が嘘をつくからいけないの

早く退院しないと

 

 

久美さん

カウンセリングの時間よ

 

すみません

先生、なんだか眠気が強くて

 

あら、おかしいわね

昨日はちゃんと眠れたの

睡眠が大事なのよ

 

ちゃんと眠れたはずなのですけど

 

そう、仕方ないわね

ベッドで横になっていなさい

夜はちゃんと寝るのよ

 

はい

 

 

数日後

 

先生、夜が全く眠れません

その代わり日中がとても眠くて

 

あら、おかしいわね

 

それに、壁の向こうから声が聞こえたりします

 

それは、幻聴かしら

 

いえ、私は本当に嘘をついてここに入院してきたのです

退院させてもらえないでしょうか

 

駄目よ

あなたは、幻覚や幻聴、妄想などがあるの

しばらく入院が必要なの

 

先生、お願いします

退院させてください

 

 

わかりました、後でちょっと検査をしてみましょう

 

はい

 

 

 

ナースステーションにて

 

田中さん、佐藤さん

今から、あの休憩室の奥の壁に大きな時計があるでしょ

そこの下に立っていて

 

どうしてですか

 

いいから

私の言う通りにして

 

 

田中さん、何をするつもりかしら

 

わからないけど言われた通りにしないと下地先生は怖いから

 

そうね

 

 

 

休憩室にて

 

久美さん、検査を始めましょう

休憩室に今から行きますから

 

はい

 

ここは休憩室よね

この部屋には私と久美さんしかいないのだけど

 

いえ、奥の時計の下に看護師さんが二人立ってこちらを見ています

 

それが、幻覚というの

実在しないものがみえるのよ

じゃあね

田中さん、佐藤さん、いたら返事をして

 

 

「はい」

 

 

久美さん、何も音はしないでしょ

 

いえ、看護師さんが「はい」と言いました

 

それが幻聴というものよ

夜に壁の奥から声が聞こえてくるのでしょ

それなのよ

わかった

本当でしょ

私が嘘をついているかしら

 

いえ・・・

 

私は久美さんの味方よ

早く退院できるように頑張りましょう

そのかわり、今まで通り、しばらくは特別部屋での生活だからね

 

はい・・・

 

 

特別室の中で

 

お父さん、お母さん

福山さん

助けてください

夜が眠れません

部屋が狭くて暗くて壁から人の声がきこえたり、何かの物音がしたりします

本当に病気になってしまいました

恐いです

助けてください・・・

 

 

 

福山は思い悩む

 

僕はどうすればいいんだ

あの女医の操り人形なのか

だけど、あの新型MRIは・・・

僕と親友の片山とのやっとの想いで開発した物

 

 

 

おい、片川どうだ

 

ああ、もう少しだ

ここをこうやってあげれば

ほら、見て見ろ

福山

 

おお、ここまで把握できるのか

 

ああ、これができたら多くの命が救えるぞ

俺達の夢が完成した瞬間だ

 

 

 

片川、お前どうして・・・

 

 

 

社長、また思い出しているのですか

あの頃を

 

いや・・・

それより今日も打ち合わせに行ってくるよ

 

頑張って下さい

 

ありがとう

鈴美さん

 

 

 

 

とある場所にて

 

わかっているわね

 

はい

 

計画通り進んでいるから

そのつもりでね

 

 

 

 

白木川総合病院にて

 

 

下地先生、下地先生

大変です

 

どうしたの、田中さん

 

久美さんが病院にいません

どこにもいません

 

どうして、特別室の鍵は閉めてあったのでしょう

 

はい

 

すぐ、ご両親に連絡して

 

はい

 

 

先生、福山社長が打ち合わせに見えられました

 

困ったわね

どうするかしら

田中さん、福山さんを通して

 

大丈夫ですか

先生、こんな時に

 

いいから

 

わかりました

 

 

福ちゃん、打ち合わせなんだけど・・・

 

どうかされました

 

実は久美さんが行方不明になって

福ちゃんは心当たりはないわよね

 

いえ、二回会っただけですから

 

そうようね

福ちゃん、私ねこのMRIいや福ちゃんのことを考えると夜も眠れないの

実は昨夜は内科の責任者の斉藤先生と・・・

いや・・・やっぱりなんでもなかった・・・

ごめんね、私はどうかなりそうなの

 

下地先生・・・それは

それより、警察に捜索願いを出した方がいいのではないですか

 

そうね

そのとおりよ

 

田中さん、ご両親を通じて警察に捜索願いを出すようにして

 

わかりました

 

下地先生、打ち合わせは今日は止めましょう

 

そうね

そうしましょう

 

 

 

久美は町をさ迷い歩いていた

 

 

知らない人に助けてもらったけど、どうしよう

きっと病院もお父さんとお母さんに連絡しているよね

心配しているに違いない

でも、今更病院位は帰れないし

どこに行けばいいのかな

とりあえず、家に行ってみよう

あ、パトカーが来ている

逃げないと

どこか隠れるところがないかな

でも、どこに行っても見つかってしまう

やっぱり帰るしかないのね

そういえば、家の近くに新しく鉄道公園ができたみたいだから

そこで少しだけ休憩しよう

もう、こんな時間周りも薄暗い

昔の機関車が2台置いてあるのね

薄明りがあるって座るスペースがあるわ

行ってみよう

 

 

福山医療機器開発株式会社にて

 

いやあ、鈴美さん実はね下地先生から・・・

 

やはり、そうでしたか

でも、それは・・・いえ・・・

私の口から何とも言えません

あの、新型MRIは福山さんの夢ですよね

 

そうなんだよ、そうなんだよ・・・

 

社長、思いつめないでください

そういえば、近くに鉄道公園ができましたから

気晴らしに入ってこられたらどうですか

 

そうだね

 

私は社長の優しい笑顔を見られることが一番幸せです

 

ありがとう

鈴美さん

 

 

鉄道公園にて

 

ここか、新しく出来た公園とは敷地の中に二台の機関車が置いてあるのか

もう、夕日が沈むな

この機関車も昔は頑張って活躍していたんだろうな

今の僕はなんだ、なんなんだ

ここにおいてある機関車と同じでただの飾り物じゃないか

僕がいなかったら新型MRIは見向きもされないのか

夢を取るべきなのか、それとも自分の心をとるべきなのか

僕は通勤の途中や仕事の途中ふと考える人がいる

どうすればいいのだろうか

おや、あそこの列車の空きスペースに座っているのはもしかして

どうして・・・

久美さんじゃないか

 

「久美さん」

 

福山さんじゃないですか

 

そうだよ

どうしたのこんなところで

 

私、私・・・

わあああ

 

どうしたの、泣かないでいいよ

隣に座るよ

どうしてここにいるの

たまたま病院に営業に行って先生から聞いたのだけど

病院に帰らなくてもいいのかな

 

今日は花束は落ちていません

いえ、今まで嘘をついていました

助けてください

私はどこも悪くありません

ただ、父の・・・

わあああ

 

泣かなくてもいいよ

ゆっくりでいいから話してごらん

 

そうだったんだ

しかし、困ったことになったね

 

家に帰ったら警察の方達が大勢いて

ここに逃げてきました

どうすればいいのでしょうか

 

そうか

でも、すぐにここにいることは分かってしまうね

 

恐いです

 

大丈夫だよ

それまで僕がそばにいるよ

 

どうして、私はこんなことをしてしまったの

お父さんやお母さんを悲しませて

病院には迷惑をかけて・・・

私は駄目な人間です

ただ、今の私は鏡に映った偽りにすぎません

 

いや、僕もね

夢のためとはいえ

自分を売ってまでして

ごめんね

話せば長くなるから

ほら、空をみて

満天の星空だ

天の川も流れているよ

僕達は気っと解決できるよ

そして良い方向にいける

必ずそうなるから

ほら、これで涙を拭いて

 

はい、ありがとうございます

 

しばらくの間になると思うけどそばにいるよ

 

はい

 

 

「おい、いたぞ、彼女じゃないか」

 

はい、私です

病院へ帰りますから

 

わかりました

私達が送っていきますので

さあ、帰りましょう

 

はい

 

 

「久美さん、僕が必ず助け出すから待っていて」

 

 

君は誰だね

 

この方はここでたまたま出会った方です関係ありません

 

そうですか、わかりました

それでは帰りましょう

君は本当に関係ないんだね

 

はい、あの人は関係ありません・・・

 

いえ、彼女は僕の大事な人です

 

そうか、後で事情を伺いますので

あちらの車に乗って下さい

 

はい、わかりました

 

福山さん

 

久美さん、待っていて

 

はい

 

 

白木川総合病院にて

 

あら、久美さん

どこに行っていたのかしら

どうして、この特別室から逃げ出せたの

 

それは言えません・・・

 

わかりました

今日から治療方針を変えますから

しばらく入院期間は長くなるかもしれませんよ

 

わかりました・・・

 

 

福山は思い悩む

 

僕はどうすればいいんだ

ああ、言ったものの

何もできないじゃないか

 

 

翌日

 

下地先生、福山社長がお見えになりました

 

すぐに通して

 

はい

 

あら、福ちゃん会いたかったわ

 

下地先生、久美さんと面会したいのですが

 

どうして、彼女は精神状態が悪くて今は面会できません

何かあったのかしら

福ちゃん

 

いえ、会わせていただけないでしょうか

 

福ちゃん、MRIはどうでもいいのかしら

 

そういう訳ではありませんが

僕は彼女に会う理由があります

 

今日は駄目よ

 

そうですか、私は今日は帰らせていただきます

 

福ちゃん、どうして・・・

 

それでは失礼します

 

福ちゃん・・・

 

 

特別室にて

 

恐い、どうして電気がつかないの

壁から物音がするし

福山さん

助けてください・・・

 

 

病院内にて

 

下地先生

 

あら、斎藤先生どうされましたか

 

久美さんを退院させてあげてください

彼女は精神的な異常は無いのではないでしょうか

 

あら、どうして

精神科医である私にそのような事が言えるのですか

しかも、斎藤先生は内科医で彼女とはまだ会ったことはないはずなのに

 

実は精神科の看護師から事情を聞きました

可哀そうではないですか

 

誰が先生にそのようなことを言ったのですか

 

それは言えません

 

私も精神科医としてキャリアもプライドもあります

先生からそのようなことを言われる筋合いはありません

 

福山さんのことも聞きました

だから、MRIのことで私に近づいてきたのですね

 

いえ、それは誤解です・・・

それに、MRIの件はもう理事長からの決済はいただいています

もう、斎藤先生には関係ありません

 

私には一人娘がいました

久美さんと同じくらいの年頃でしたが

事情があって自ら命を落としてしまいました

 

そうでしたわね

可哀そうでしたね

 

あれは、私はあの頃は仕事しか頭にありませんでした

 

それと久美さんと何の関係があるのですか

 

実は特別室の鍵は私があけました

もう、同じことを繰り返したくないからです

娘は心の病にかかっていました

私はそれを見抜けなかった

私がいけなかったのです

 

それで、斎藤先生はどうされるのですか

 

病院内で内部告白します

理事長にも全て話します

 

ふふふ

もう遅いわよ

理事長先生もね

いろいろあるのよ

 

わかりました・・・

 

ふふふふ

 

 

 

 

とある場所にて

 

 

事は順調に進んでいるかしら

 

はい、指示どおりしておりますから

 

それならよろしいです

 

 

 

翌日

 

 

鈴美さん、今日は僕と一緒に病院へ伺いましょう

 

はい

 

あら、福ちゃんいらっしゃい

もう、理事長の決済がおりたの

私の病院が購入することが決まったということよ

 

下地先生

久美さんに会わせて下さい

 

駄目よ彼女は精神状態が良くないから

それに、MRIはどうでもいいの

私と久美さんとどっちが大事なの

ふふふ

 

 

「僕は久美さんを守ります、MRIの契約はいたしません、その事をお伝えに参りました」

 

 

下地さん、どういうこと

一体、これはどういうこと

 

ええ、どうして福ちゃん

 

鈴美さんどうしたんだ

何を慌てているの

 

社長、MRIを販売しなかったら会社は運営していけないじゃないですか

 

鈴美さん

君は最初から他の医療機関には営業をするように村原営業部長に指示していなかっただろう

実は昨日、そのことを村原君から聞いたんだよ

 

鈴美さん、私はどうすればいいですか

 

下地さんは黙っていて

 

それじゃ困るわ

契約が成立したら利益の一部を私がもらうことになっていたじゃないですか

 

そういうことだったのか

鈴美さん

 

そうよ、仕方ないわね

これは復讐でもあるのよ

私は片川さんと交際していました

あのMRIは全てといっていいくらい片川さんが開発したもの

社長は少しお手伝いしたくらいじゃない

どうして、ことあるばかりに二人の夢だと私に話していたの

片川さんは昨年、病気で亡くなってから結局、MRIはあなたのものになった

あれは片川さんが作ったものよ

あなたが開発した物じゃないわ

 

そうだったのか

でも、どうしてここの病院だけ営業になったんだ

 

それは社長の性格がわかっていたからよ

 

福ちゃん、ごめんね

私はおつき合いしている人がいるの

 

そういうことよ

社長

 

最初から計画していたことだったのか

もういい、MRIの開発は白紙だ

下請け予定の業者にも私が謝罪する

 

それでいいのかしら

会社は経営していけないわよ

 

鈴美さん、僕はもう会社はどうでもいい

久美さんを守る

 

駄目よ

私が退院を許可しないから

でも

やっぱり退院させてあげる

だって報酬をもらえないのでしょ

鈴美さん

 

そういう訳にはいきませんよ

下地先生

 

斉藤先生どうして

 

僕が警察に全てを話した

あなたの違法な医療行為も全てね

田中さん達も証人になってくれる

 

そんな・・・

 

もうすぐ警察の方々がみえられるよ

 

 

数日後

 

久美さん

退院してから大丈夫だった

 

はい

 

福山さん、会社はどうなるのですか

全て私のせいです

 

そんなことはないよ

久美さん

 

また、新たに会社を設立することにする

僕達は鏡の中に写った偽りの自分をみていたのかもしれない

 

 

久美さん

花束を落としたよ

 

私がですか

 

ああ

これは僕の気持ちなんだ

よければ僕と本当の自分を作っていかないか

 

私でいいのでしょうか

まだ、私は薬の副作用で夜も眠ることができません

 

大丈夫だよ

僕が久美さんを支える

どんなに辛くてもいつも僕がそばにいる

久美さんを守っていくよ

今から鉄道公園に行こう

 

はい

 

着いたよ、初めてここで会った時と同じように満天の星空に天の川が流れている

今日も眠れなくていい

ずっと僕がそばについていてあげるから

もう、大丈夫だよ

久美さんはもう鏡の中の少女じゃない

二人で歩いて本当の自分達を見つけていこう

僕が守り続けていくから