女子中学生 


1年ほど前から朝に起きられなくなった。6時に母親が起こしても布団から出るまでに1時間ほどかかる。起きられない日は昼まで寝ている。


長期休暇を挟み、一度は良くなっていたが、また半年ほどしてから再発。


前日の夜には学校に行く気持ちがあるのだが、朝になるとどうもダメなようだ。人間関係は悪くないのだが、少し学校生活に問題を抱えている。


布団に入るのは21-22時で、寝つくまでに30分ほどかかる。夢をみるのは週に1-2回。

中途覚醒はなく、熟睡感あり。朝に起こすとイライラしている。


感情の起伏が激しく、ヤル気が起こらない

食欲あり、お菓子は毎日よく食べる。

大便は1日に2-3回。普通便。手足、腹が冷えやすい。体力はない方。冷飲を好む。


脈は弦。左胸脇苦満あり。心下痞なしで心水音を認める。舌はやや張舌、淡白色で紅点が舌肉全体にポツポツみられる。



これは「ある問題」が原因で学校に行く気が出てこないのでは?と考え、舌や脈からもそれらが窺える。


病位は肝と考え、肝気鬱結を取り除き、脾胃を温める方剤ということで柴胡桂枝乾姜湯を。そしてストレスにより脳に活性酸素が蓄積していると考えられるので、それを除く健康食品をお渡し。



7日後

朝は起きられないまま。便は1日1回になった。

5:30に起こして2時間ほどグズり10時までまた眠る、ような感じ。起きて1-2時間は頭が働かない。足先が冷える。緊張で掌に汗をかく。


舌は張舌ではなくなり、淡白色のままで手前にやや歯痕あり。


頭が働かないことや舌診より、腎虚を疑い鹿茸製剤を服用してもらったが効果なし。



ありゃりゃ。これは困った。

虚証であることは間違いないのだが、病位が違っているのだろう。

ここでもう少し話を聞いてみると…


休日でも起きられない。寝つきは時間がかかり、食事はすぐに満腹になる。

体力はない方だが、普通に遊んだりの活動はできる。

昼以降になると元気で今まで通りの活動が可能。



ここでふと以前勉強したことを思い出した。


肝は「罷極の本(罷=疲であり、人は肝が正常に機能することで疲労に耐えられる)」と言われる。四肢がだるく身体に力が入らない、精神的に疲労し頭がクラクラするというのはすべて肝気がのびやかに流れていない象である。

肝気虚の診断項目
1.気虚症状を呈するもの、例えば精神的疲労と無力感・呼吸促進または話したがらない・舌の肥大または歯痕を伴う・脈は虚で無力など
2.情緒及び思考活動の変化、例えば憂鬱で機嫌が悪い・思考力が鈍い・多夢で物事に怖気やすいなど
3.肝脈の分布部位に不快感が現れる、例えば胸脇苦満・よくため息をつく・下腹部の下墜感など
4.女性では生理不順・生理痛・月経閉止など

上記4項目のうち3項目の症状を呈するものであれば肝気虚と診断できる


上記は「漢方の臨床」からの引用であるが、引用元が何号だったのかまでは記録していない。
ある問題に対するストレスにより肝気鬱結が長期化して肝気虚となり、現症があるのだろう。

朝の起床の時刻は肝が主っており、肝気が上昇することにより頭にエネルギーが届き、活動が可能となる。
また、朝は起きられなかったり活動できないが、午後になるとしっかり活動できるということも肝気虚であることの証左となる。

そこで肝気虚を治すべく、「漢方処方の構成と適用」に記載されている肝気虚を改善させる方剤を朝夜に、寝つきを良くするために某液体製剤を夜のみに服用させた。


3週間後
朝から登校できるようになった。
冒頭に記した「ある問題」が解決したことも要因としてあるだろうが、これまでは母親が起こしてもグズグズしていたのが、スッと起きられるようになったとのこと。また、よく外出して活動的になった。ついでに液体製剤で月経痛がなくなったとのこと。それまでは月経痛がなかなか強かったようだ。

上手く成果が出たことに胸を撫で下ろし、肝気虚に対してはしばらく漢方薬でエネルギー補給しないといけないので続けるよう指示。

まだ中学生なので、これからでもリカバリーは十分に可能。学校生活を楽しんでもらいたい。



こじかんぽう