40代 女性

主訴は蕁麻疹


4ヶ月前から汗をかいたりお風呂に浸かったりすることで全身に発症する。川などに浸かることでも、浸かった部位に蕁麻疹が出た。

病院では抗ヒスタミン薬を処方されて服用しているが、汗をかくとやはり蕁麻疹が出るが、痒みはマシになる。

緊張して汗をかいても蕁麻疹が出る。


発症時の皮膚の様子は、少し膨れた赤みのある小さいものが数個出てくる。水疱はない。

1-2時間で引く。 川の時の蕁麻疹は、大きい赤みで大きく膨れた。

手足にポツポツ、体幹部は全体的に出る。



食事や二便は問題なし。

ストレスは強く、それが原因でキューッと胃の痛みが出てくる。

とある疾患で2ヶ月に一度の採血を行なっているが、コレステロール値と貧血の数値がかなり悪い。


舌は淡紅色で嫩細舌、全体に浅く裂紋、白苔あり。脈は細数。


皮膚疾患に関しては、皮膚の状態を見ることが病態把握の大きな手がかりとなる。これは東洋医学のみならず、西洋医学でも同じなので、出たり引いたりの状態ならば、スマホカメラや動画で発症時を撮っておくと医療者は助かります。



さてさて、まずはいつも行っている病態把握から。

分類法はいくつかあるが、基本的にこじかは『気血水理論』を重視しており、そこから他の理論を重ねたり詳細分析を行っていく。


発症時の共通点を探ってみると、「お風呂」「川」「汗」と、全て『水』が関与している。


そして痒みをもつイコール『熱』が関与している。

お風呂での、運動での熱はわかるのだが、川や緊張では熱は外部因子としてはないので内部因子としての熱と考えるのが妥当。。


とするならば、『熱』と『水』この二つを繋いでイメージしていくと…


・お風呂や川により毛穴を通じて水が皮膚に侵入し、それらの水が今度は毛穴を通じて出ていくことができずに鬱滞して熱を帯び、結果として赤みをもった小さなプツプツが痒みを伴って発生する。

・発汗においても、十分に発汗できておらずに鬱滞した水が上記の機序で蕁麻疹を発生させる。


と考えられる。

病位は皮膚であることから肺の疾患と捉えられる。


とするならば、肺経の清熱利水剤ということで、越婢加朮湯を選択。赤みをプツプツ、痒みを抑えると同時に発汗も抑制することを期待して。


これだけでも症状は改善すると思うが、これは標治であり、大元は肺気が弱いことから毛穴からの排泄能が弱っていることから発生していると考えられるので、補肺気を担う玉屏風散をセットで服用。


痒くなるのが堪らなく心配のようで、最初のうちは病院の抗ヒスタミン薬も併用してもいいが、途中から漢方薬のみにするよう指示。



1週間後

病院の薬を止めるのが怖くて併用しているまま。しかし夜間の発汗は止まった。


玉屏風散により、衛気が補われたことで発汗が止まったと考えられる。痒みも発生していないようだ。病院の薬を本日から止めるよう、越婢加朮湯を前回の半量にし、玉屏風散はそのままの量で継続。


さらに1週間後

温泉に入っても痒みはなかった。当然他の時でも大丈夫。


念のために玉屏風散のみを1週間分服用させて終了。



蕁麻疹は日常的に見られる症状だが、原因はひとつではない。

気温差で発症する場合や、食べたものが合わなくて発症する場合も。それらの場合に上記の方剤を服用しても治る可能性は低いだろう。蕁麻疹に対してどれもこれも抗アレルギー薬や塗布薬とせずに、ちゃんと原因(病因)を考えて、それに見合ったものを使いましょうね、ってことです。


こじかんぽう