40代 女性
主訴は2~3カ月前から続く、背中やや右側の痛み。
痛みは1日中続き、入浴や身体を動かすなど、何をしても痛みが続く。患部を押しても不変。
何かに集中している時には痛みを忘れるが、立ってても横になってても変わりなし。が、車の運転など座っていると痛みを強く感じる。立位体前屈をすると痛みはなし。
眠っている時は痛みはないが、起きている時は痛みのレベルは10のうち8。痛みとしては鈍痛。天気や体調に関係なし。
食欲は十分あり、毎晩焼酎を嗜む。ストレスは強く睡眠は5~6時間。仕事中はトイレに行く機会があまりない。
また以前から貧血を指摘されており(Hb9.8でなかなかの大物)、病院にて鉄剤の注射を打ってもらったが調子が悪くなり、もうどうしようもないと医師から匙を投げられていた。
舌を拝見すると薄い舌。何より顔の血色が悪い。胸脇苦満はナシ。他には足首以下のむくみが気になるようだ。また冷えはなく、むしろ足は温かく感じるとのこと。
さてさて、どう対応していこうか。。。
以前から何度かこのブログに書いている通り、人間は「気・血・水」から成っており、これらのどれか又は複数の異常によってさまざまな疾病が発生する。
今回の症例に関しては
・ストレス…気
・貧血…血
・足のむくみ…水
であることは容易に結びつけることができるだろう。
ストレスによって気の巡りが悪くなり
それにより血液や水分の循環が悪くなる。
逆に貧血で血が足りないことで気の巡りが悪くなる。むくみがあるということは気の巡りが悪い
もしくは水分の過剰摂取による。
これら一つ一つの現象を、頭の中で理論的に関連付けることができるよう組み立てて治療に臨むことが、漢方臨床家としての腕の見せ所となる。
患部は筋肉もしくは筋であり、金匱要略によると、痛みの原因は
1.患部に水分や血液不足によるもの
2.患部に不要な水分が溜まってしまっている
と記されている。
この場合はどちらだろうかと考えると、貧血であることから1.の可能性があり、むくみがあることから2.の可能性もある。
しかし
特に体全体がむくんでいるわけではなく、舌も胖大でもない(むしろ逆)。よって2.の可能性は消去。
そして1.の可能性を軸として病因病機を組み立てていくとなれば・・・
「貧血により患部に栄養を運ぶための血液が届かず、またストレスにより気の巡りも悪化しているためそれがさらに悪化」
と考え(本来、貧血には気虚の面もあるのだが)、疏肝理気の四逆散と補肝血である桃紅四物湯の合剤である血府逐瘀湯をチョイス。
とりあえず1週間分も飲めば効果は出るはず、と伝えて帰宅後早速服用するよう指示。
すると服用1回のみでいきなり背中が楽になったようで、神効を実感したとのこと。
仮に血府逐瘀湯で効かなかったとなれば、2.の原因をベースとしていき、その根拠を問診などで求めて利水薬を処方するであろう。もちろん、結論ありきではなく再度詳細を訪ねて他の病因を考える可能性も大いにある。
こじかんぽう