1044. 家族ゲーム(83)/戦場のメリークリスマス(83)/Wの悲劇(84)/南極物語(83 | 同世代名画館DX

同世代名画館DX

昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

大学3年生の春休み、当時はまだ高価だったビデオデッキを買って、私は自主映画を制作した。
大学卒業後は就職をせず、映画の専門学校へ進み、ここで8ミリや16ミリの映画を撮った。映画監督を本気で目指して、日々脚本を書いていた時期である。
その頃、日本映画は新しい監督の登場や、製作や興行のシステムに変化が著しかった。そして、世界的に評価される作品も現れていた。
そんな頃の、はずせない4本。


森田芳光監督は、この頃の私の憧れであり目標だった。その才能が一気に開花したのが「家族ゲーム」。
主演はわがヒーロー、松田優作。アクション俳優優作が、ピストルを箸に持ち替えて、演技賞を独占した記念すべき作品だ。
それまで観たこともない映画だった。大いに笑わせてもらったけど、何が言いたいのかわからない。それが最初の感想だった。いまだに充分理解出来たとは言えないかも…。
伊丹十三、由紀さおりなど、異色キャストの怪演も面白かった。キネ旬1位。


この年のカンヌ・パルムドールは、今村昌平監督の「楢山節考」だったが、私は絶対に「戦場のメリー・クリスマス」の方が数倍良かったと今も思ってる。「楢山…」は嫌いだ。
「愛のコリーダ」以来、カンヌに執念を燃やす大島渚監督は、この作品で獲れなかったことを一生悔やんでいるだろう。今村、邪魔すんなよ!
デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、という二度と集まらない異色キャスト。特にたけしのラストシーンは忘れられない。
これも最初観た時はよくわかんなかったなあ。


「映画は脚本だ」と言ってたのは黒澤明。それを信じて勉強してた私に、この言葉をあらためて痛感させたのが「Wの悲劇」。
夏樹静子の原作を舞台劇に押し込み、これにダブるストーリーを本筋に持って来た見事な二重構造。この手法に刺激を受けて、真似たシナリオをいくつか書いたりした。
澤井信一郎監督は、これで一気に名声を得たし、主演の薬師丸ひろ子は女優開眼と言われた。また、三田佳子がこれで助演女優賞を総なめにして、再ブレイクの切っ掛けとなった。
「顔ぶたないで!私、女優なんだから」は流行った。


現在の日本映画を、間違いなく支えているのは、TV局製作のヒット作だ。その走りとなったのが「南極物語」。
当時、56億という日本映画としては驚異的な興行成績を上げた。以後、フジテレビは「ビルマの竪琴」「子猫物語」「優駿」「タスマニア物語」とヒットを連打。
映画としては、冗長な動物ドキュメントもどきといった感じだが、個人的には大好きだ。ラストは健さんが涙を見せるのだぞ。感動だ。


どれも何度観たかわからない作品ばかり。この頃の日本映画は面白かった。
明日は、その映画業界に少しだけ足を突っ込んだ頃の、忘れられない日本映画たちを紹介する。