1043. ツィゴイネルワイゼン(80)/泥の河(81)/駅 STATION(81)/蒲田行進曲 | 同世代名画館DX

同世代名画館DX

昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

大学生になり、東京へ出て来た1980年、私は都内の名画座で映画を観まくった。1年間で80回、映画館へ足を運んだ。
その頃出会った映画たち。どれも、それまでのミーハー的映画から一歩進んだ作品ばかり。だんだんと映画通になって来たのだ。


「ツィゴイネルワイゼン」は、鈴木清順監督の一世一代の大傑作。
清順監督と言えば、わが専門学校時代の恩師にして、仲人もしていただいた方。その先生に対して失礼ではあるが、先生の作品はわけがわからないものが多い。一般的にね。
これも最初はわかんなかった。でも、何度も観てるうち、面白くなって来た。摩訶不思議な世界が癖になる、そんな稀有な作品だ。最近では何度観ても飽きない一本になった。
キネ旬1位も、今は当然と思える。スゴいぞ、先生!「陽炎座」と「夢二」も面白い。


「泥の河」は、翌年のキネ旬1位。
寡作で知られる小栗康平監督の第1作。宮本輝の短編小説を、モノクロで綴る抒情的映像は、ほとんど完璧。
まだ少年時代から十年余りの多感な年齢。当時は「砂の器」に匹敵する感動を覚えた。
小栗康平監督全集でしか買えないDVDは、今回取り上げた作品群の中で唯一持っていない。


「駅 STATION」は、高倉健主演・降旗康男監督コンビによる最高傑作。
このコンビ作は、「冬の華」「居酒屋兆治」「夜叉」「あ・うん」「鉄道員」と、どれも素晴らしいが、倉本總脚本による本作が、飛び抜けている。
片想いだの両想いだのってレベルを超えて、大人の恋愛とはこういうものかと二十歳の私は思い知らされた。♪魚は炙ったイカでいい~、という「舟歌」とともに心にいつまでも残る名画だ。
任侠映画時代の健さんを知らない世代にとっては、これや「幸福の黄色いハンカチ」でファンになった人も多いのでは。


「蒲田行進曲」も、キネ旬ベストワン。
角川映画が初めて評価された作品。娯楽大作を多く手掛けた深作欣二監督の、異色の傑作。
深作監督は、「復活の日」「魔界転生」「火宅の人」と、実に多彩なジャンルで楽しませてくれた。市川崑監督とともに、私が最も信頼、尊敬する監督だった。
今の奥さんと3回目のデートで観に行った。つかこうへいの舞台へも行った。こんなに笑って、こんなに泣かされた映画もない。思いがけずハッピーなラストには、拍手喝采した。


80年代の日本映画は、続々と傑作を生み出した。明日も、選りすぐりの傑作映画を上映!