Oliver Anthony - Rich Men North Of Richmond

 

  • 奇跡的な大ヒット
 音楽シーンを追っている人にとって、今年いちばん衝撃的だったのはオリバー・アンソニー(Oliver Anthony)の登場ではないでしょうか? 見たことも聞いたこともない髭のおじさんの、カントリー風の弾き語りが突然ビルボードホット100のトップ。しかも曲のタイトルは「Rich Men North of Richmond」。だじゃれ?
 
  • オリバー・アンソニーとは?
 ググるとウィキペディアのページがありました。
 やはり無名のカントリーミュージシャン。しかも音楽を作り始めたのが2021年。
 5年間鬱病に苦しみ、アルコール依存症に。
 「音楽がいかに人々の人生の助けになっているかを知った」から音楽を作り始めたようです。
 
  • 「Rich Men North of Richmond」
 YouTubeチャンネル用の曲を依頼され、4時間で書き上げたのが「Rich Men North of Richmond」。(プロとしての初めての仕事。)
 「リッチモンドから北の方角の地域(ワシントンD.C.)に住むリッチマンたち」という意味で、「奮闘する労働者の視点から政治家、税金、福祉、その他の問題を扱っている」。
 2023年8月8日にYouTubeにアップロードされ、すぐに拡散。
 アンソニーはチャート履歴を持たずにビルボード ホット100のトップになった初のソングライター、存命中にデジタルソングセールスのトップ50に13曲をチャートインさせた初の男性ソングライターになりました。(より多くの曲をチャートインさせたマイケル・ジャクソンの記録は死後のもの。)
 
  • 政治の世界で話題に
 この曲は一部の保守派(おそらくQアノンなどの陰謀論系?)から賞賛され、共和党大統領討論会でも議論されたようです。
 というのも、この曲の歌詞には右翼によくある論点が含まれていると見られているようです。低賃金、食料問題、インフレ、高い税金、児童の人身売買(ジェフリー・エプスタインと彼の私有島への言及のようです。これがQアノンの陰謀論の一つか?)など。
 しかし民主党の議員でも好意的に受け止められていたり、けっきょくのところ、この曲の反響が大きいので政治家も言及して支持につなげようとしているのでしょう。
 アンソニー本人は「私は政治に関して常に中立である」「政治に巻き込もうとするやつらに悩まされている」「右派が私を自分たちの仲間だと決めつけようとしているのが見えるし、左派が私の評判を落とそうとしているのが見える。そんなことはやめるべきだ」と感じているようです。
 また「貧しい人々に対する攻撃」と解釈する人もいるらしく、「わたしの歌はすべて貧しい人々を擁護している」と話したらしいです。
 
  • 8月17日のフェイスブックの投稿。
 「わたしの曲はメンタルヘルスの苦しみから書かれたものだ。これらの曲は大勢の人たちと深いところで繋がっている。それはこれらの曲を歌う人は、だれもが本心から感じている言葉で歌っているからだ。編集もない、事務所の力もない、ごまかしもない。ただの馬鹿とギターだ。」
 
  • まとめると
 「なんでこれ売れたんだろう?」から今回いろいろ調べて驚きの連続でした。
 労働者の気持ちを代弁する歌詞が共感を呼び、大ヒットしたと見るしかありません。(そして政治というのは生活そのものを左右するので、労働者の気持ちを代弁することも政治的なことだと考えざるをえないです。)
 このたった一つの素朴な曲が人の心をつかみ、社会に問いかけ、大きな反響を得たわけですから、音楽の力を再認識させるできごとでした。
 時代を代表する曲の誕生ですね。
 とはいえみんな移り気ですから、オリバー・アンソニーが長く音楽活動を続けていけるかはなんとも言えませんが。