絶望ライン工chというYouTubeチャンネル(工場勤務や収入に嘘はないと思うものの、絶望を誇張したコメディ動画のチャンネル)があって、いつも楽しく観ていたのですが、ベルギー出張だといって友だちと海外旅行している動画がアップされたんですよ。
それが先週の動画。
すると今週の動画の冒頭で、絶望ライン工が「一部の視聴者が先週の動画内容に怒り、チャンネル登録を解除したようです」というような報告をしたんですね。
この絶望ライン工chは派遣の工場勤務の少ない収入で生計を立てている、その日常を配信するチャンネルです。
貧しい生活でぱっとしない日々を過ごしてますよ、というていの動画。
だから「海外旅行なんて行きやがって、絶望ライン工なんて嘘じゃねえか!」と怒る人が現れたわけです。
まあ驚きましたね。そんなのめり込んで観ている人がいるんだ、と。
それと同時に「文化の盗用」という言葉が思い浮かびました。
白人富裕層が、ラッパーやギャングなどの黒人貧困層の文化やファッションをまねると、よくその言葉で批判されるんですよ。
動画に話を戻しますと、ほんとうに絶望しながら生活している層の人にとったら「絶望ライン工は自分たちの仲間ではなくて、まねをしているだけ」と実感させられたわけです。
「文化の盗用」を現実に感じた人たちですよ。
ぼくはインターネット上とはいえ「文化の盗用」の現場を見たと思って妙な高揚感がありました。
いまいち実感に欠けていた言葉がリアリティを持ちました。
外野からすると「なんでこれで怒るの?」と理解できないものでも、当事者になると大きく傷ついてしまう。
「文化の盗用」は当事者でないと理解するのが難しいものなんですね。
それでこの動画の続きがすごかった。
なんと友だちがベルギーの音楽フェスに出演するという理由で、絶望ライン工はビデオ撮りのため同行していたのです。
しかもそのフェスが電子音楽のフェスで最大級、チケットもなかなか取れないという最高に格の高いトゥモローランドというものらしく、驚きました。
もうフェスの頂点のひとつでしょうね。
出演シーンや舞台裏、絶望ライン工との関係性やらで感動しました。