知ってる人は、
「化物語」の戦場ヶ原ひたぎの声で読んでみよう(笑)

「用事って、何かしら?」
「なあ、祐貴子、
俺はお前が好きなんだ。
お前だけが好きなんだ。
もう、他には何も要らないから、
俺と付き合ってくれ!
いや、結婚してくれ!!!」
「・・・」
「な、
この通りだ。
何でもするから、
俺を受け入れてくれ、
頼む。」
「何でもするのね。」
「ああ、もちろんだ。」
「じゃ、
私の前から消えて。
そしたら、心の隅で覚えておいてあげる。」
しばらく無言の時間が流れた。
「そうか、
ごめんな。
消えるよ。」
そうは言ったものの、高志はしばらく動けなかった。
「押してもダメ、
引いてもダメ。
俺って、不器用なんかなぁ。」
高志は独り言をつぶやいた。
もちろん、それで祐貴子の気を引こうというのではない。
本当に、何度交際を始めようとしても、
ためらっていれば友人に奪われ、
強気に出れば逃げられる。
恋が向いてないのか、自分に魅力がないのか。
高志には絶望しかなかった。
「悩み相談ならするわよ。」
祐貴子が言った。
「いいよ、
今更、同情されるのもつらい。」
「そうじゃないわ。
私の仕事がカウンセラーなの、忘れたの?
ちゃんと料金はもらうから。」
高志は2千円を払った。
祐貴子と一緒に居られる30分を買ったのだ。
可能性にかけたのではない。
別の新しい展開があるかもしれないと思ったのだ。
ベンチに座ると、
祐貴子が質問してきた。
「高志さんは、今までも恋愛は失敗続きだったのね?」
「ああ、まあ、そうだ。」
「まあ、
あまり上手な口説き文句じゃないけど、
全然ダメって訳でもないわ。
顔も悪くないし、性格も問題なし。
服装や仕草にも致命傷はないから
その時の女の子の気分とか、相手の好みとか、
単にタイミングの問題なんじゃないの?
待って欲しいときに迫ったり、
言って欲しいときに引き下がったり。
数多く打てば、そのうち当たると思うわよ。」
「まあ、そういうことあるだろうし、
感じも分かるけどさ、
今、俺を振った本人に言われるてもなあ、
説得力が無いよ」
「振った本人でなければ、
説得力ある訳でしょ?
だったら原因解明。
あなたはタイミングが悪かっただけ。
いつかは受け入れてくれる人も居るわよ。」
「確かにね、
今までだって結構頑張ってきたし、
少しはうまくいくこともあったよ。
でも、
彼女って感じまでいかないんだ。
タイミングだけじゃなくて、何かが俺に足りないと思うんだ」
「贅沢ね、
少しは付き合えたなら上出来じゃない」
「そうかもだけど、
ちゃんと結婚したいし、
本当の恋人が欲しいんだよ」
「本当の恋人って何?」
「だから、俺だけを好きで、
俺だけが好きで、
それがずっと続くという彼女。」
「気持ち悪いけど、否定はしないわ。
人にはそれぞれ意見も好みもあるから。
そういう男の人が好きな人もきっと居ると思うから、
あとは、出会いがあるか無いかってことよね」
「そうなんだよ。
だけど、どこにいけば会えるか分からないんだよ」
「それが本質ね。」
「うん」
「簡単ね。」
「うん」
「そんな物好きも
世の中には居るかもしれないけれど、
あなたの前に現れる確率は、
海に出た鮭がカエルに出会うくらいかしら。」
「海にカエルは居ないだろう?」
「あら、物知りね。
でも洪水で流されてきたりして、
もしかしたら出会えるかもしれないじゃない?」
「そんなに低確率かな?」
「たぶんね」
「はあ、
やっぱり俺には理想の彼女はできないのか」
「・・・」
「ごめん、
君に頼んだつもりじゃないから」
「当然ね。
でも、黙ったのはね、
気が付くかなぁ、って思ったからよ」
「気づく?」
「そうよ。
カウンセリングの基本は説得じゃなくて、
『気づかせ』だから」
「何に?」
「読み返して、考えてみたら?」
「・・・、
つまり、
あなたには理想の彼女は出来ないのよ」
「はぁ、はい。」
「だったら、
理想じゃない彼女を作ればいいんじゃないかしら?」
「理想じゃない彼女?」
「簡単よ。
食わず嫌いを無くせばいいんだから。
選択肢は、
ほら、
いっぱいあるじゃない」
彼女は、通りを行き過ぎる老若男女を指さす。
老人子どもばかりか、
同姓までストライクゾーンに入れろと言うのか?
この女は。
「無理?」
「普通に考えればそうじゃないかな?」
「だったら妥協してもいいわ。
日本人、20代+5歳くらいでいいかしら。
もちろん女性で。」
「うん」
「そしたら、あなたの友人や仕事関係だけでも
50人くらいは候補が居るでしょう。」
「だけど、手当たり次第に声かける訳にはいかないし」
「あなたは私のどこに惚れてくれたのかしらね?」
「美貌?
若さ、
それとも身体かしら?」
「何言ってんだよ。
そんなんじゃねえよ」
と言いながら、やっぱり美貌はあるかな?とか高志は思った。
性格は最悪だけど、身体だっていい感じだ。
「いずれにしても、
そんな見てくれだけで私に告白したのだとすれば、
とんだお門違いって事よね。」
言葉もなかった。
それとも俺は、
こんな風に虐げられて喜ぶマゾだったのか?
「気付いたかしら?
あなたが本当に求めていたモノが。」