両神山(りょうかみさん。りょうがみさんではない)
1723m。日本百名山の中では低い方の部類だ。
山の名前は八日見山(ようかみさん)を
由来とする説が流布されている。
ヤマトタケルが筑波山から8日眺めて、
ここまで登ってきたというのだが、
おそらく筑波山から両神山は識別できない。
富士山みたいに特徴的な山ではないのよねぇ。
だから、深田久弥の「日本百名山」にある、
やおがみさん(8つの大蛇(おろち)を意味する)の
方が真説っぽくて好き。
途中にあった竜頭神社奥宮があったが、
「りゅうず」じゃなくて「りょうかみ」と読むそうだ。
現在は麓にある両神神社にイザナギ、イザナミの
2柱が祀られている。
次の日曜日、17日に仙丈ヶ岳に登る予定なので
ちょっと時間と天気のタイミングか良かった13日に
トレーニング代わりに登ることにした。
日帰りできる場所で手軽な山はと考えて、
日光白根とか大山も考えたんだけど、
移動時間がそこそこかかるしなぁ、
ということで、同じ県内の両神山を調べ始めた。
日向大谷口がメインなんだけど、
ここは標高差1300m、標準時間10時間という、
低山にしてはあり得ないロングコースなのよね。
で、調べたら中津川の林道が再開されて行ってきた、
という記事を発見。
見てみると、コース概要は次の通り。

標高差800m程度なら、登り2時間ってところ。
距離も手軽で、駐車場所が自宅からちと遠いけど、
無料になるし、これならOKってことで、決定。
自宅からは片道2時間で着くので、
前日移動はやめて、早起きして出かけた。
駐車場に着いたのは6時30分くらい。
5時の予定が、登山届けを朝書いてて遅くなった。
というのも、県内滑落事故が最多という山なので、一応ね。
とはいうものの、登山口はやけに不穏な看板がたくさん。

▲登る前に死亡とか読ませないで欲しい
他にも、6月某日クマが出没とか、
行方不明者捜索のお願いとか、
薄暗い登山口で、ちょっと足がすくみます。
ま、今更引き返せないので、7:50登山開始です。
八丁峠までの道は杉の植林の中を歩くハイキングコース。
通行量が少ないのでやや荒れがちですが、
スれてないので全然問題なし。50分で尾根道に出ました。
後は尾根筋にそって行けばいいだけです。
リサーチ不足その1
八丁峠から少し進むと鎖場がでてきますが、これは想定内。
3000m級の山なら別ですが、埼玉ですよ。
クサリがあれば登りやすくなることはあっても、
恐れることは何も無い。
腕力の無い運動不足の人にはお勧めしませんが、
周りに木の生えてる鎖場なんて、余興程度のもんです。
と思ってたんですよね。
初心者向きではないとは聞いてましたが、
これは結構というか相当大変でした。
クサリ場に等級とかレベルとかあるんですかね?。
調べたんですが、見つけられなかった。
で、勝手に作ってみました。

八丁コースは、20箇所30本以上の鎖があるそうで。
難易度は4~7、所により8と9があります。
こんなコースを1時間で踏破出来るはずがない。
帰ってきてから検索し直したんですが、
最初のコースタイムの記事は見つからず。
他の人は片道2時間から3時間でした。
800mという標高差も見かけのもので、
累計標高差は1100m以上が真相らしい。
上り下りが繁雑すぎて、
性能のいいGPSでないと正確には
計測できないんでしょうね。
こうなると、準備運動とかの山ではなくて、
自分にとってはフルスペックのガチの山でした。
ま、昔から身が軽いことを自負してたので、
そんなに緊張も気負いも無かったんですが、
ピークが多く、クサリ場のお代わりの連続です。
それでも頑張って1時間ほど行くと、
「←両神山」の札がありました。
おお、もう着いたのか、意外に早かったな
とか思って登ると、
そこはまだまだ、全然手前の
行蔵峠とありました。

▲9:34
もう100m行った6ピーク目が西岳でした。
まだ西岳なの?

▲9:47
で、ここから何と100m弱下って、
替え玉のクサリ場がどーんときます。
しかもレベル6以上のクサリ6本(たぶん)。
一気に登れなくて4本目で休憩をとった位です。

▲ここら辺が鎖場の本骨頂

▲10:21竜頭神社奥院
上ったところにあったのが
竜頭神社奥院。小さい祠ですけどね、
ちゃんとお参りします。
で、ふと見ると木の下に山の中には不似合いなモノが。
「え、まさか?、パソコン?」

なんと、ノートパソコンが画面を閉じて置かれてました。
さっきまで誰かが作業してて、
画面閉じたママ、忘れていった感じ。
とは言うものの、ここはそんなに人が通りません。
下の駐車場には3台しか車がなかったので、
多くても5人程度じゃないかなぁ。
実際、全員単独登山者だったので、
自分を入れて4人だけでした。
さて、どうしようと思いましたが、
とりあえず、先を急ぐことにしました。

▲10:47 お代わり鎖場 直登20-30m?
竜頭神社のピークを降りて
お代わりの鎖を登り直すと、
今日初めての人に出会いました。
もう頂上まで往復したそうで、
あと少しという嬉しい情報。
残りの鎖場を克服すると、やっと東岳。

▲11:12
あとは丘陵地帯のような尾根道で少し安心。
と思ってると最後に2本のクサリがあるのですが、
まあ、レベル5前後。かるくいなすと頂上でした。
でも登山口からなんと4時間かかりました。

▲11:51

▲頂上1723m

リサーチ不足その2
頂上に着くと、意外に人が多い。
軽装な人も居るので聞くと、
「白井差新道」から2時間弱で登った、と
なんですと?、2時間?
頭の中で情報検索して思い出しました。
この道は私有地を通る登山道で、
色々トラブルがあって一時期閉鎖してたんですね。
最近は通行料を払うと使えるのでした。
私有地のためか、検索によっては出にくいのです。
忘れてたゎ。
そーかぁ、2時間なら千円払う価値はあったなぁ。
しかも、帰りは下りのみでしょ?
私はまた30本の鎖を上り下りするんですよぉ、
のこぎり型の尾根の縦走路は、
行きも帰りも基本同じですからねぇ。
ちょっと、いえ、
すごく自分のリサーチ不足を呪うのでした。
愚痴を言ってても帰れないので、
15分後に、仕方なしに戻り始めます。
東岳に着くと、
頂上で記念写真を撮ってくれた人が休んでました。
少しお話をして先に出ましたが、
これが今回の運命の出会いでした。

▲12:48東岳から戻る尾根筋を望む
それはさておき、
竜頭神社奥宮に着きます。
自分は山に行くとゴミは拾って帰るんですがね、
さて、このパソコンはゴミ扱いしていいものかどうか。

▲古い缶ビール、ワンカップ酒り割れたガラスなど
何なんでしょうね
山で、ノートパソコン。
USBも付いてるので、古臭そうとはいえ10年位。
XpかVistaの時代かなぁ。
朝に見つけた時は露にぬれてたので、
昨日今日の忘れ物でないことは確実。
持ち帰るのは重いし、
かなりためらわれたんですが、
そんなに人気の登山道ではないし、
ここから2kgのゴミを持ち帰る物好きは
まず居ないだろうということで、
持ち帰りました。
放置期間も長そうだから、
起動できる確率は低いだろうなぁ。
とか、考えながら
重くなったザックを背負って、
再び、クサリ場に臨みます。

▲13:00

▲13:05

▲13:19

▲13:37 名物のキレットみたいな岩場、上を歩くのは危険w

▲13:39 なかなかの高度感、落ちたらただ事では済まない
前述しましたが、
ここでは滑落事故が絶えなくて、
今年も一人亡くなってたはずです。
なかなか厳しいクサリもありますが、
命に関わるような危険な香りはしないのですよ。
でもね、帰りの温泉で思い知りました。
頭を洗ってたら、腕の筋肉がつったのです。
あ、これか!と思いましたね。
慣れない筋肉を使うと、
つったり痙攣したり、力が入らなくなるんですよ。
これだけのクサリをこなす経験なんて、
日常生活でも山でもそうそうありません。
1本1本は何とかなっても、
連続しているうちに握力がなくなって・・・
つると力も入らなくなるし、
かといって、クサリを使わないと
降りられない場所も多いので無理をして・・・
自分も1回足を滑らせて宙吊りになりました。
ちょっと痛い思いをしただけですみましたが、
10m以上クサリ場が続く箇所もあるので
ほんとにタイミングですよね。
油断は大敵です。

▲たぶんクマさんのウンチ

▲14:14西岳を望む

▲14:32行蔵峠

▲14:55第3ピーク

▲15:10第1ピーク
リサーチ不足その3
さてさて、西岳からピークを数えて6つ目、
このピークが最後かなぁと思って頂上を過ぎると
なんと道が2手に分かれてます。

▲ 右へ→

▲ ←左へ
危ない危ない、
この右の道は往路では気付かなかった。
ここでは左の道を進みます。
最初の地図をみて分かるとおり、
帰り道は逆時計回りです。
左手の谷を回り込むように尾根が続きます。
右に折れるということは、
小鹿野の町の方向に降りてしまいます。
それに、左の道には目印のピンクのテープもあります。
こういうポイントを逃さないことが
道迷いを防ぐポイントなのだよ。
でも、迷いやすいポイントだな、ということで、
念入りに写真を撮りながら進みました。
降りて先に進むと、
またまたクサリ場があり登りです。
なんだよ、まだ登りが残ってたかぁ、と
嘆息を付いた瞬間です。
「あれ?」
と驚いたような声を
クサリ場の上から掛けてくれたのは、
東岳で追い抜いた、かの人でした。
「え、いつ追い抜いたんですか?」
と、と言うオラに対して、
「いやいやいや、追い抜いてないですよ、
だんなさん、逆走してますよ」
?????????
なんですと????
逆走???????
バカな、オラはまっすぐ戻っていたはず?
生まれて初めて完璧な逆走でした。
ほんと、キツネに化かされるとはこのことです。
何が何だか、分からない。
でも、たしかに、1本道で
かの人に追い抜かれるはずもないし、
オラはきびすを返します。
すぐに、ほんの数分前に踏みしめた岩を確認します。
何が起こったのか?????
そしてもう一度さっきのピークに登り、
間違えそうになった分岐の箇所に戻り合点しました。
じつは、こんなふうになっていたのだ。

A地点が第1と第2ピークの間の谷の最下位地点です。
オラは朝行く時には、知らず①を通っていたようです。
A地点では③のトラバース(回り道)らしい道は認識してました。
帰りに試してみようかとも思ったんですが、
道迷いの危険があるので、
素直に②の直登の道を選んで進みました。
Aからはクサリ場のある②の登り道しか目にはいりません。
戻った時にも①の道は意識できないでいます。
そして登ったところのB地点で分岐に出会ってしまい
混乱したのです。
来る時に②への分岐は認識してなかったからです。
でも、Bの下にピンクリボンを見つけて、
方向性(尾根伝いに左方向にいけばいい)ともあいまって
下ってしまったのです。
BからC方向はほんの少し平らな道だったのも、
判断ミスを助長しました。
朝にCからBへ、そして①に進む際には、
②の道は木の陰だったり方向が違っていたりで、
ほぼ気付けない道だったのです。
その後、Cを通って進むと、A地点からトラバース③を通って、
かの人が登ってきました。
「あれ」と、また叫ぶことになりました。
かの人は②にも気付くことなく、③の道を来てしまったというのです。
オラに会わなければ、道に自信がなかったようです。
西岳までには5つのピークがあり、
ピークを通る場合と、トラバースする場合があります。
やっかいなのは、
微妙な踏み跡のある道らしき箇所がいくつかあることです。
その1つがこれです。

▲鎖もあるのに、ここはテープの道からは外れる
これは第3ピークの次のボトムにあるチャートの岩です。
真っ平らなので、踏むと滑ること間違いなし。
お陰で痛い尻餅をつくことになりました。
この道は、少し先にクサリ場が見えるので
元々は道だったらしいのですが、
今は右にトラバースがあり、
ピンクのテープもそっちに付いてます。

▲石が見えたら谷側にトラバースするのが正解
でも、踏み跡はあるし、視線にはクサリが見えるし、
間違えない方がおかしい。
ほんと、山というのは、落とし穴だらけです。
B地点では、オラはもう少し慎重になるべきだった。
ピンクのテープを過信しすぎてて、
違和感を吟味してなかったんですよね。
この違和感にこだわり、
慎重になる姿勢が山では大切です。
見なかったはずの道がなぜあるのか、
ほんとにその道は小鹿野方向に行くのか?
よくよく周りを見渡そう。
山の形からは一目瞭然だった
前回は疑問に思いつつのルートロストでしたが、
初めての完全な道迷いをしてしまいました。
今回のはちょっとショックだゎ。
知らない山の中で方向性を見失ったら、ほんと命取りです。
ともあれ、こうしてオラ達2人は、
その後は特に支障なく駐車場まで降りていきました。
ほんと、2人は出会ってなければ、
色々と面倒な事になっていたかもしれません。
温泉に入って一休み
降りてきたのは3時50分、
ちょうど8時間の山行でした。
まったくのガチの登山となってしまいました。
途中、ダムの写真を撮り、

▲中津川を堰き止めている滝沢ダム
温泉で両腕がつるという初体験をし、

▲大滝温泉 ツルツルする泉質
秩父市内のBOOKOFFによって、
帰りました。
さて、3日後には、南アルプス仙丈ヶ岳に挑戦です
後日談
拾ったパソコンは、
やっぱり届け出た方がいいだろうと思い直し、
地元の川越警察に行きました。
壊れ物を持ち込んでは迷惑だろうと思い、
落とし主が現れない場合は引き取る旨を申し出たのですが、
パソコンは個人情報満載なので、引き取れないとのことでした。
ま、動く可能性は低いし、
動いても10年前のパソコンでする仕事はないしね、
両神山でパソコンを遺失した人は、川越警察にお尋ねください。