三重県鈴鹿市の特定社会保険労務士&行政書士・小岩広宣です。


いよいよ先週の金曜日(10月3日)から、臨時国会の本格的な論戦が始まりました。

早々に提出された労働者派遣法改正案についても、さっそく衆院予算委員会で取り上げられています。

法案自体の質疑は厚生労働委員会で行われますが、国会の花形である予算委での動きはやはり大きな影響があります。

3日の山井和則氏(民主党)の質疑を少し整理しながら、気づいたことをまとめます。




山井氏

「正社員と派遣労働者の賃金格差は顕著で、規制改革緩和者からも反対意見があり、6割の派遣労働者は正社員を希望する不本意派遣
「前国会で首相は『派遣労働者を増やすべきとは考えていない』と答弁したが、今はどうか?」


(→のちに厚労相も触れているように、派遣労働者として働いている人の実態については、さまざまなデータがあると思います




安倍首相
今回の改正によって派遣労働者を増やすべきとはまったく考えていない


(→改正案を読むかぎりでは、間違いなく派遣事業所を減らすための政策変更だと思います)




山井氏
リーマンショックで数十万人が解雇されたなど、派遣制度には問題が多い。首相はなぜ、派遣労働者を増やすべきでないと考えるのか?」


(→リーマンショック後のいわゆる「派遣切り」については、偏重報道も指摘されていることから、慎重な検証が必要だと思います)




安倍首相
働き方には多様性が必要だが、『派遣労働者の6割は正規になりたい』という要望が実現できるように努力すべきだ」


(→「働き方の多様化」のキーワードが、安倍政権の政策の本音だと読み取れる気がします)




山井氏
女性の派遣労働者は妊娠を機に解雇される。今回の改正案は派遣労働者を増やす目的ではないのか?」


(→女性の育児休業後の復帰は重要な問題ですが、派遣法改正案とからめるにはもう少し具体的な論拠が欲しい気がします)




塩崎厚労相
『6割』というのはネット調査であり、政府として総務省とつくったデータでは半々だ(4割はあえて派遣を選んでいる)」
「今回の改正案では、できるかぎり正規雇用になる措置を派遣元にも派遣先にも課している
「正規雇用化を推進しつつ、派遣労働者の立場を守ることに配慮した改正案だ」


(→「6割」というデータが確立した統計でないことは、業界では広く知られています。改正案で新たに課せられる措置については、もう少し具体的で明確な説明が欲しい気がします)




山井氏

「今回の改正の趣旨は、派遣労働者を増やすことにあるのか、減らすことにあるのか?」


(→派遣労働者数の今後の推移にのみ論点を絞った質疑は、やや改正案の本質から離れているように感じます)




安倍首相
さまざまなニーズに応えるための改正であり、派遣労働者を増やす目的ではない」


(→改正案への賛否の立場に関わらず、この答弁は妥当なような気がします)




山井氏
結果的に派遣労働者が増えたらまずい。本当に減らしたいという趣旨の改正なのか?」


(→派遣労働者が増えたら困るという立場は分かりますが、同じ質問に終始している気がします)




安倍首相
「今回の改正案は、派遣労働の固定化を防ぎ、正社員化を含め、キャリアアップを支援する内容だ」
派遣労働者の数はさまざまな要因に左右され、いちがいに改正によっては決まらない


(→改正案の内容についてはやや概略的過ぎますが、派遣労働者の数についての答弁は妥当だと感じます)




山井氏
「各新聞報道を見るかぎり、どう考えても『派遣労働者を増やす』ための改正案だ」


(日経「見直し案決定。企業制度利用しやすく、継続受入可能に」
産経「正社員から派遣社員への置き換えを防ぐ目的で派遣期間に上限を設けてきた従来の原則を事実上転換。規制緩和により労働者派遣市場の活性化をはかる」
読売「無期限派遣を了承。制度の重点は現在の労働者保護から派遣の活用拡大に転換される」
毎日「遠のく正社員。派遣3年、全業種で撤廃。雇用政策見直し加速」
朝日「派遣無期限受入れ。生涯派遣に不安。あきらめた結婚。遠い正社員」)


3年の上限をなくすと派遣労働者は増えるはず。先ほどの答弁と矛盾する」


(→新聞報道の見出しについては、毎日、朝日とそれ以外とでは、ずいぶんテイストが違うように感じます)




塩崎厚労相
改正案をめぐる論点は、新聞の見出しだけで判断できない
「今回の改正案は、26業務、自由化業務を問わず、同じ派遣先での就業は3年までとし(個人単位の期間制限)、派遣先でも同じ業務では3年までとする(事業者単位の新たな期間制限)他の雇用形態にはない新たな規制を盛り込む」
「今回の改正によって派遣労働が利用しやすくなるとはいちがいにいえない」


(→新聞見出しについての答弁は妥当。期間制限についての説明に関しては、やや棒読み調だったので、もう少し大臣の言葉で説明すべきだと感じました)




安倍首相
「現行は『係』を変えたら継続就業できるが、改正後は『課』を変えないといけなくなるため、人を変えれば3年超えていつまでも派遣できるのは誤解だ
「受入企業は過半数労働組合の意見聴取が必要であり、正社員化に向けて受入企業に新たな義務を課す」


(→「係」から「課」への変更の説明は分かりやすい。過半数労組等の意見聴取は問題のある制度だが、その点への質問者からの突っ込みはなし)



山井氏
「今回の改正は派遣を増やすのか、減らすか?」


(→反対の立場からは、もう少し突っ込みポイントがあったように感じます)



安倍首相
正社員化に向けて派遣元や派遣先の義務を強化し、正社員化や派遣労働者のキャリアアップに資する法改正だ


(→首相の答弁としては安全運転だと感じました)



山井氏
「結果的に派遣労働者は減るのか?」


(→予算委とはいえ、少し演出的すぎる繰り返しに感じます)



安倍首相
派遣労働者の増減は、さまざまな要因によって決まっていく


(→ひと言で答弁されると、反論しづらい論点ですね)



山井氏
「先ほどの答弁と矛盾しているのでは?」


(→新聞報道以上の根拠がなかったのが惜しく感じます)



塩崎厚労相
「政府の役割は派遣労働者の労働条件を守ることだ。正社員になりたい人には十分条件を整えていく


(→おそらく具体的、実効性に欠く部分があると思いますが、大義名分から入ると反対しづらいですね)



山井氏
世界の常識は均等待遇であり、派遣は臨時的一時的雇用だ。今回の改正では均等待遇は入っていない。派遣期間が3年から拡大して生涯派遣となる懸念が強い」


(「均等待遇」という壮大なテーマに斬り込むには、残り時間がなかったように感じました)





(感想として・・・)


正直な感想としては、攻守それぞれが準備不足で、やや噛み合わない議論だったということ。

質問者の山井氏は元厚労政務官で、現在は衆院厚労委の理事であり、派遣法改正案に関してもある意味キーマンです。

ただ、予算委とはいえ決め手となる材料がなく、繰り返しの多いパフォーマンスに終始した感は否めません。

一方、塩崎厚労相にとっては大臣として初の国会論戦でしたが、派遣法に関してはやや準備不足の印象もあります。

むしろ安倍首相の方が、改正案の趣旨を正面から伝える切れ味のよい答弁が見られた気がします。

今週も続く予算委、そして厚労委での質疑に注目していきたいものです。





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