□相談□

 現在、当社は自動車部品加工業を営んでおり、一部構内下請で業務請負業も
行なっておりますが、今後は当社の業務実績を活かして、取引先からのニーズ
に応えていくために、派遣業の分野に進出していきたいと考えています。とい
いましても、派遣業のことは何も分からないのが実情であり、独特なノウハウ
が必要ともいわれる派遣業への進出には、多くの不安があります。派遣業を始
めるにあたって求められる適性とは、どのようなものなのでしょうか?


 □回答□

 人材派遣業は、働く意識の変化や、少子化による人材難、社会保険等の問題
により今後もニーズの拡大が予想され、社会的な貢献度も高いビジネスだとい
えます。また、仕入れも技術力もなくても開業できて、短期成長が可能な業種
であることから、多くの人が注目しています。ただ、起業したいと思う人なら
誰でも人材派遣業を目指せばよいというものではありません。
 人材派遣業への進出を検討しようとするとき、適性を判断する目安としては
次のような項目が挙げられます。

1 中堅以上の会社で、部下を持って働いたことがある。
2 企業がいかに成長するかは、ヒトをいかに育てられるかにかかっていると
思う。
3 起業するなら、すぐにも法人化したい。
4 部下が仕事をやり遂げたり、成長していくことに大きな喜びを感じる。
5 ずっと事務所で仕事をするより、顧客先を飛び回って仕事をする方が向いて
いる。
6 自分は面倒見のよい方だとまわりの人からはいわれる。
7 仕事上、最低限必要な法令は当然遵守しなければならないと思っている。

 まず、派遣業には独特の雇用管理が求められるため、部下を持って働いた経験
が問われます。業種を問わず、勤務経験はきわめて大切だと思います。

 派遣業は、企業に人材を提供することそのものに意味があるのでなく、人材の
教育・育成を手がけ、企業に人材の活用方法を提案することにこそ、意味があり
ます。

 派遣業には、許可もしくは届出が必要ですが、一般労働者派遣事業の許可基準
をみるかぎりでは、法人形態で事業を行なうことを予定していると考えることが
できます。特殊な事業がないかぎり、対外的な信頼性を考慮しても、法人の形で
事業を行うことが望ましいと思います。

 人材の指導育成を企業の成長のために必要な手段だととらえるだけでなく、社
員自身の立場に立って、その成長に喜びを感じるという姿勢が大切だと思います。

 派遣業はいくら知識やノウハウがあっても、事務所にいるだけでは成立しませ
ん。昨今はインターネット上での登録やマッチングも盛んですが、ビジネスの幹
の部分は、やはり直接クライアントに訴えかけることによって成り立ちます。そ
の意味での行動力が必要です。

 顧客や周囲の人からどんな印象の人だととらえられているかということも、意
外と重要です。やはり、派遣業の世界で成功している人は、面倒見のいい人とし
て評価されている人が多いようです。

 そして、何よりもコンプライアンスの遵守という部分が重要です。派遣業は法
的なしばりが強い許認可業種である上に、そもそも派遣業じたいが高い倫理観が
求められる仕事です。コンプライアンスの部分がおろそかになると、事業活動じ
たいの成否が問われることになります。