これは、
小さい頃の私と、母の話です。
私が2才の時、父が病気で天国に旅立ち、
以来、
母はシングルマザーとして、私を育ててくれました。
父親がいない事で、不自由をさせたくないと、朝から晩まで、ずっと働いていて、
寂しいこともたくさんありましたが、
どんなに忙しくても、朝ご飯と晩ご飯は
必ず、手作りのお料理を作ってくれました。
私が、幼稚園の年長の頃です。
その日は朝からスゴく暑い日だったのですが、
クーラーが壊れていたこともあり、窓を開けて過ごしていました。
その日、
母は久しぶりのお休みの日で、朝ご飯を私に食べさせた後すぐ、母は寝てしまいました。
せっかく二人で遊べると思っていた私は、
ガッカリして、退屈で、
一人で壁に向かって、星の形をした、
お気に入りの小さなスーパーボールをぶつけて
遊び始めました。
そのスーパーボールは
母と二人で遊園地に遊びに行ったときに買ってもらった、私の宝物でした。
ポーン、ポーン、
小気味良く、私の所に戻ってくるボールが楽しくて、
少し
強く、壁に当たってしまった時です
私の大切なスーパーボールが
窓の外に
飛んでいってしまいました
「あーーーーーーッ!!」
大きな声をあげた私に驚いて、母が飛び起きて
「どうしたの!?」
「星のボールが落ちちゃった~
「また買ってあげるから。」
「やだやだ!あのボールじゃなきゃやだ
ワガママを言って泣きじゃくる私。
母は困った顔で
「分かった
と言って、ボールを探しに行きました。
炎天下の中、
小さな星のスーパーボールを懸命に探す母。
お昼になっても
ずっとずっと探してくれている母に、
内心、ワガママを言ってしまったことを後悔していました。
「ゴメンなさい。もういいよ」
その一言が、なかなか言えなくて、
ずっと母を見ていたとき、
パラパラパラ
と、急に、雨が降ってきました。
雨は、あっという間にザーザー降りになり、
母はびしょ濡れになりながら戻ってきて
「雨、降ってきちゃったから、また後で探しに行くからね
と言ってくれました。
それでも、何も返事をせずに、素直になれない私を見て、
母は、悲しそうな顔をしていました。
家に戻ってから、疲れたのか、私は少し眠ってしまいました。
どれくらい経ったでしょうか。
母が私を起こし、
「ベランダに行ってみようか
ベランダへ出てみると
目の前に、大きな虹が架かっていました。
「わぁ~!キレイ
「ね~
母と二人、虹をずっと見ていた私は
「ママ、ボール、もういいよ。ゴメンなさい。」
やっと、素直に謝れた私は
何故だか、涙が止まりませんでした。
母も泣き笑いの顔で、優しく私の頭を撫で、
ホットケーキを焼いてくれました。
母が焼いてくれたホットケーキは
甘くて、優しい味がしました。
あの夏の日の落とし物は、
結局見つからなかったけれど
あの日見た大きな虹と
ホットケーキの味は
今でも、
私にとって宝ものです。
