第62期王位戦挑戦者決定戦、羽生さんは残念でした。
     
いよいよ、豊島さんと藤井さんがタイトル戦で 顔を合わせることとなりました。
 
藤井さんが時代を築くまでの間は、4強で推移するのでしょうね。
 
 
本書は、岡村啓嗣氏による 羽生善治さん永世七冠の写真集です。
 
<帯>   直観力、 読み、 大局観 は いかに磨かれたのか!
            忘れる、 先のことを考えない、 決断する。
        15歳から現在までの33年間を撮り続けた珠玉の写真集<永久保存版!!>


 
『疾走(デビュー~名人獲得)』
15歳でプロになったものの、当時は情報も少なく、大先輩の顔もわからないこともあるような時代でした。
1989年、19歳3ヶ月で初タイトル竜王獲得。
1991年3月、棋王獲得以後、2018年12月21日竜王位失冠まで無冠の年はなくなります。
 
『錬磨(七冠獲得~先輩棋士方との対戦を繰り返した二十代)』
1996年2月に七冠を獲ったことで、全棋士の心の中に眠っていた獅子を起こしたような気持ちになりました。
もともと僅差のなかで戦っていることもあり、勝機がこちらに振れればあちらに振れることもあります。
年間89局を戦った2000年頃が、体調の面では一番厳しかったと思います。
 
『死闘(同世代との対戦の記録)』
藤井猛さん、丸山忠久さん、郷田真隆さん、佐藤康光さん、森内俊之さん・・・。
タイトル保持者同士がこれだけ近い世代で競い合うのは、将棋の長い歴史の中でも珍しいことだと思います。
とりわけ森内さんとの対戦には強い思い入れがありました。
 
『他流(将棋界を離れた異分野の方々との交流)』
棋士でこんなに喋ることになるとは、夢にも思いませんでした。 黙って考えるのが仕事のはずでしたから。
直接プラスになるような内容ではないのですが、発想や考え方、気持ちの切り替え方など、間違いなく糧になったと思っています。
 
『泰然(台頭してきた若手との対戦も含めた最近の日々)』
やはり、大きく印象的なのは、藤井聡太さんの登場です。
2018年の朝日杯で、あんなに多くのフラッシュを対局前に浴びたのは、初めてのことです。
スターが出れば、子どもは必ずそこに集まります。 スターの存在は非常に大きな意味のあることです。
私(羽生さん)はまだ将棋をわかっていません。
将棋は、やればやるほど深淵が見えなくなります。
その瞬間に見えるものを見て進むしかないのです。
 
『あとがき』
羽生さんが二十代前半の頃はよく酒席をともにしました。
羽生さん人生初(で最後?)の二日酔いは 私(岡村啓嗣氏)との酒席だったそうです。
羽生さんを公私に渡って撮ってきましたが、今でも悔いているのが「島研」を撮り逃したことです。
33年の間に撮影した何万枚の中から選んだ百点余りの中に、なぜか羽生さんが負けた時の写真が多いことに気づきました。
それは 勝敗を超えた美しさと哀しさ、つまり人間のもつ素晴らしさが見てとれる「純粋な世界」であり、それを体現しているのが羽生善治その人なのでしょう。
 
 
羽生さんと藤井聡太さんのタイトル戦はあるのでしょうか?
見てみたいものです。
 
 
<もくじ>
序章  
まえがき 羽生善治
第一章 疾走(デビュー~名人獲得)
第二章 錬磨(七冠獲得~先輩棋士方との対戦を繰り返した二十代)
第三章 死闘(同世代との対戦の記録)
第四章 他流(将棋界を離れた異分野の方々との交流)
第五章 泰然(台頭してきた若手との対戦も含めた最近の日々)
終章 思考---AI×人間
あとがき 岡村啓嗣
参考文献 『直感力』PHP新書
  『捨てる力』PHP新書
  『決断力』角川新書

 

 

  『大局観』角川新書
  『適応力』扶桑社文庫
  『結果を出し続けるために』日本実業出版社
  『迷いながら、強くなる』知的生き方文庫
  『将棋から学んできたこと(挑戦する勇気 文庫化)』朝日文庫

 

 

  文藝春秋ムック『羽生善治 闘う頭脳』文藝春秋(文春文庫)

 

 

  『永世七冠 羽生善治』宝島社
  山中伸弥氏共著『人間の未来 AIの未来』講談社
  岡田武史氏共著『勝負哲学』サンマーク出版
  NHKスペシャル取材班共著『人工知能の核心』NHK出版新書
   
 
            PHP研究所
            著者:羽生善治、 撮影:岡村啓嗣
            2018/7/5 発行