「九艘泊を歩く」(下)
貝崎の麓に廃村がありました、漁師の番屋かとちょっとトキメキましたが、崖崩れで使えなくなったキャンプ場でした、バンガローはまだ使えそうでした。
使われなくなったトイレを使わせていただいて海に戻ると人影が見えるではないですか、恐る恐る近づくと緑頭巾を被ったおばあちゃんです、写真を撮りながら話しかけました、「ツブ採ってるだよ、煮てダシ取るとうめんだよ、サルか、この辺はエサ場だ、俺らも餌付けしったんだが、今はやってねえけどナ、この岬登っていぐどサルいるど」てなことを言っていたと思います、なにせ半分以上は判読不能なのですから。
ありがとうを言って立ち上がると、今度は紫頭巾のおばあちゃんが大きなハサミを持って近づいてきます、ボクも好きですね、また話しかけながらシャッターを押しました、おばあちゃんはハサミを器用に使ってツブを採っていました、緑頭巾のおばちゃんはカマを使っていました、この後です、しばらく経って紫頭巾のおばちゃんが大きなハサミを振って呼んでいます、何かまずいことでもやったかなとビビリながら戻っていくと、
「ほれ、アワビ採ったから喰え!、海で洗って喰っちまえ、腹の入っちまったら密漁も分かんねべ」と言ってハサミで半分に切ってくれました、早速食べてみると、いやー、海水の塩味とアワビのコキコキ感が絶妙のコラボレーション、はっきり言ってこんなにうまいアワビは食べたことがありませんでした、お礼を言おうとおばあさんを見ると、すでに岩場を歩き去っていました、紫頭巾のおばあちゃん、ホントにありがとう、ホントにうまかったよ。
これで終りではありません、今度は茶頭巾のおばあちゃんです、このおばあちゃんは鉤棒のようなものを使っていました、使う道具も三者三様ですね、
「アイゴ採ってるんだ、アイコでねえ、アイゴだ、その辺のウニは採って喰ってもいいど」足元を見ると黒い物体がウジャウジャいました、全部ウニでした、何個か採って食べました、小さいけど正しくウニでした、おばあちゃんありがとう。
「通行止め」を抜け出して九艘泊を歩いていたら、おじいちゃんに捕まりました、干してあるタラを指して「昔は山ほど獲れたもんだがな、今はさっぱりだ」いつごろですかと聞くと「昭和17~8年ごろかな」ホントに昔話でした。
「おにいちゃん、なんで九艘泊てゆうが知ってッか」ここから話が長くなりましたが、要約すると、
津軽の三厩から源義経が北海道に渡ろうと海に漕ぎ出したが、逆の風に流されてこの浜にたどり着いた、その時の船が九艘だったので九艘泊という名前が付いたとのことでした。「津軽に義経寺(よしつねでら)ってあるべ、あそッから流されたんだよ」、なんかホントっぽいよね、おじいちゃんありがとう。
気が付くと午後2時を回っていました、先を急がないと、おじいちゃんはもっと話したかったようでしたが、ごめんね、おじいちゃん。
この続きはまた明日、コウ
