Side−S
昼飯を食べに行こうと、雅紀に誘われた店に入ると、そこには智にぃと、潤にぃと和也が待っていた。
食事を済ませると、オレは母親の墓参りの帰りにあった出来事を三人に話した。驚くだろうと思っていたのに、返ってきたのは「やっぱり、そうだったんだ。」と、オレには予想外の言葉だった。
オレの『実母』の墓参りに行く前に『犯人』を誘き出すんだと、雅紀は三人を前にして意気込んでいたらしい。
「どうしても、翔ちゃんを守りたかったの。」
「だからって、無茶すんなよ…」
あの時オレは、本当に生きた心地がしなかった。だが、それは十年前にオレが石段に突き落とされ大怪我をした時に、雅紀に同じような思いをさせてたんだなと思い、それ以上は言えないでいた。
「俺も止めるには止めたんだけど…」
「まーくんは、翔ちゃんのことになると、突っ走ちゃうからね?」
「だよな?まぁは全然こっちの言うことなんか聞いてくれないし、どんだけこっちがハラハラしてても、お構いなしだしさ?」
三人にオレの肩を持たれたのが気に入らなかったのか、雅紀は少し不機嫌になった。
「それより、まーくんが俺たちを呼び出したのって…」
「まさか、『犯人』が分かったって報告のためじゃ…」
「そんな理由で呼ばないってば…」
「…じゃあ、理由は他にある、ってこと?」
「実は…ね?」
オレは雅紀に言われるまま、車に智にぃ達を乗せて着いた先は…
「この家を…借りようと思ってて…」
「は?」
「一軒まるまる…借りる…ってことか?」
「でも、それって…翔ちゃんと二人で住むってことでしょ?」
「そうだけど…ちょっと違うの。」
「…うん?」
「何が違うんだ?」
「この家に…時々泊まりに来て欲しいな…なんて…思ってる。」
「泊まりに…?」
「それは…」
「オレたちに…ってこと?」
「……うん。だから…みんなの部屋もあるんだ。」
「…雅紀?」
「翔ちゃんと二人で暮らしてても、時々は智にぃにも、潤にぃにも、和也にも…遊びに来て欲しくて…」
「まーくん!」
「まぁ…!」
「ま…さき…!」
三人が雅紀を取り囲んで、嬉しそうに笑っているのを見ていたら、オレも嬉しくて…
「『兄弟』って…いいな」
思わず、呟いていた。
…つづく。