Side−S


ヒロキさんの話だと、オレの所有していた車のブレーキに細工をするよう指示したオンナは、何一つ咎められることはなく…


直接、細工を手掛けた男は保釈金で仮釈放されていて、何処に行ったのかその行方は分からなかった。恐らく、保釈金を支払った人間にでも匿われているんだろう。


理不尽とは、こういうことなのだと思った。


何でも金で解決するのかと、自分の無力さが悔しかった。腹立ち紛れに、ソイツのことを調べてみようと思った。


オレには『父』から渡されたカードがある。いつもは生活に必要な物を買う時にしか使っていなかったが…


『目には目を』『金には金を』だと、調査機関を頼み、カードで支払った。金の力というものを、オレは思い知った気がした。



「翔さん、これは…?」

「あぁ、それはこの間、オレの車のブレーキに細工したヤツの調査表だ。」


「俺…この男、知ってます。」


いつもは冷静なヒロキさんとは思えない程、声が震えている。


「コイツ、まだこんなことをしていたのか…!」

「ヒロキさん…?」


「コイツは…『北見モータース』にいる時に、誠司さんに…迷惑ばっかり掛けてた。人の良い誠司さんは…騙されて、コイツに金を貸してた…。その金は全部ギャンブルに注ぎ込んでたっていうのに…」

「…えっ?誠司さんにって…?」


『誠司さん』って、雅紀の『お父さん』に?


「コイツは今、何処に?何処にいるんですか?」

「何処にいるのかは…分かんないけど…」


「探し出してぶん殴ってやりたいっ…!」


見る見るうちに、ヒロキさんの顔は怒りで赤くなっていた…。






…つづく。