Side−S


とうとう、『櫻井』の父親に連れ出されて、パーティーに出席する羽目になった。


メインは『本宅』の斗真のお披露目なのだが、オレは斗真の優秀な『学友』で、ゆくゆくは斗真の右腕になるであるからとパーティーの主だった出席者達に紹介するつもりらしい。


『本宅』の斗真とは、同じ大学の、同学年で同じ学部だが、顔を合わせれば無視され、殆ど口を聞いた事もないのに、そんなオレが『学友』だとは聞いて呆れる。



どうせ、オレのことは『愛人の息子』だということは、ここにいる連中には既に知られているだろうに、表向きだけでも『学友』だと押し通すつもりなんだろうな…


「このパーティーの出席者達は似たりよったりで、叩けばホコリの出る人間ばかり。まぁ、私も人様のことはあまり言えないけどな。翔もこういう場に慣れておいて欲しいし、付き合いというものを学んで欲しい。」


『櫻井』の父はそう言うと、オレの肩を『ポン』と軽く叩き、人の輪の中に入って行った。



ぼんやりとパーティー会場の隅で一人、ソフトドリンクを飲んでいたら斗真に声を掛けられた。


「なぁ、気に入った女は見つかった?」

「は?」


「この会場には自分の娘を使って、櫻井グループと何とか繋がりを持とうとしているヤツが何人かいるだろう?ほら、あそこにも…」

グラスを持ったまま、斗真が指差した。


「あぁ、そういう人達なんだ?」

オレには興味が無いことだし、関係無いと思っていた。


「俺はお袋のお眼鏡に適った女には興味が無いし。今夜は俺好みの女を持ち帰るから、お前も自分好みの女でも持ち帰ったら?」


オレには雅紀がいるから、どんなに着飾った女がいても、声を掛ける気すら起こらなかったから、返事をしなかった。


「まさか…自分には心に決めた人がいるとか、言うんじゃないよな?」

「…それが、何か?」


「そんな女は『愛人』にでもするんだな?親父みたいにさ?」


斗真は捨て台詞を残すと、オレに背を向け足早に女の元へと戻って行った。





…つづく。