「翔ちゃん、ちょっと起きてよ!」
不機嫌そうな声が、ベッドの男を起こす。
「まさきぃ…なんだか重いんだけど…」
寝ぼけ眼のまま、掠れた声の男が言う。
「は?なに言ってんの?重いのは、翔ちゃんの上に猫が乗っかってるから!それより…翔ちゃん!」
「…んあ?」
「もぉ!猫を拾って来ちゃダメだって、何度言ったら分かるの?」
『にゃうぅ〜』
「…だって、可愛いから…つい」
「いっつもそう言って僕の病院に連れて来て…!ったく、ウチの病院はペットホテルと違うんだからね?」
『僕の病院て、こっちの雅紀は獣医師なのか?』
「あ…!でも、この猫は違うよ?オレの後をくっついて来たんだ…」
「どっちにしろ、ウチにいるのは変わんないでしょ?この子を診察したら、『ユエ』に連れて行ってよね?」
『「ユエ」って、猫カフェのことだな?』
「もぉ…!役職が付いて出張がちになって、猫の面倒もなかなか見られなくなったから、飼ってた猫を手放したのを忘れたの?」
「…覚えてますぅ。」
「一度だけならまだしも、三度も拾って来て…。」
「今度で…四度目…かな?」
「分かってるんなら、顔を洗って!さっさと動いてよね?」
『ここの雅紀も、翔ってヤツを尻に敷いてるんだな…』
「ね〜こちゃん♡」
『にゃ…(なんだよ?)』
「オレのこと、好きになっちゃって、うっかり付いて来たんだよねぇ?」
『にゃ?(いや、違うぞ!)』
おれはウチの雅紀が『交尾』に目覚めて、翔としょっちゅう『イチャイチャ』してっから、やってられなくて家出したんだ。
人や猫の影の中でしか生きられないカラダになってからというもの、少し不自由だったが…
昨日はたまたま、ぼーっとしてた猫がいたから、ちょっと乗り移って散歩してたら…
「フフ…可愛いなぁ…。でも、飼えないんだよなぁ…」
『なんだ?コイツ…』
「う〜ん…ごめんねぇ?連れて帰れないんだよぉ…?」
『よし…今夜の宿はコイツに決めた。』
…って、後をくっついて来たまでは良かったんだが…
「名前…なんてつけようかなぁ…」
『おれの名前は「みやび」だ!』
「太郎…次郎…いや…三郎?」
『「みやび」だって、言ってんだろうが!』
「しぃぃーっ!雅紀にバレたら怒られるから…静かにしようね?」
『は?なんだ?ここん家も雅紀がいるのか?』
「一緒に寝ようね?おやすみぃ…」
…で、翌朝起きると
「しょおちゃぁん!なんなの?この猫は!」
…やれやれ
ぼちぼち、退散するとしますか。
『ニャア(ちょっと!どこに行くのよ?)』
『いや…家に帰るんだけど?』
『勝手にあたしの体を乗っ取っておいて、それはないんじゃないの?』
『え?お前…オトコのはずじゃ…』
『こんなオトコで悪かったわね?』
『い…いえ、そんなつもりは…』
『ちゃんと飼い主ちゃんの所に帰してよね?』
『え?お前飼い猫だったの?』
『首輪があるでしょ?どこ、見てんのよ!』
『肉で埋もれてて、見えなかったな…』
首輪を『翔』と呼ばれてたヤツに見つけてもらえるようにアピールをしてみたら、ようやく気がついてくれて…
『ニャア…(もう、二度としないでちょうだい!)』
…へいへい
その猫は、この家の『雅紀』と『翔』に連れられて、無事に飼い主の元に送り届けられ…
おれは再び、おれの家の『雅紀』と『翔』の元へと帰ったら…
「翔ちゃ〜ん♡」
「雅紀ぃ♡」
『………。』
もうしばらく、外にいるかな…
今夜は三日月に金星が寄り添うんだそうな…
いい夢が見られますように…
🌙🌟
Good Night😹
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