Side−A


『コトリヲ ミツケタ』


明らかに不審なメール。


しかも、発信元が和真だとは…



和真のスマホは未だに見つかっていないから、あの日、和真本人が持っていたと思ってほぼ間違いないだろう…。



だが、和真ならこんなメールを送らない筈だ。

『無事でいる』


そう送ってくる。





『コトリヲ ミツケタ』




「メールを翔くんのスマホに送ってきたところを見ると、『コトリ』は翔くんのことでほぼ間違いないだろう…。」


誰もがそう思った。


「送り主は『滝沢研究所』のヤツだよ!きっと…」

「ニノがそう思っても証拠はない。」


「でも…!」

「分かってる。和真のことも含めて『滝沢研究所』の誰かが、翔くんにメールした。確かにそう考えるのが自然だ。翔くんが俺たちにメールを見せることも、送った奴にとっては想定内…。そして…相葉ちゃんが立てたあの『翔くんがクローン人間』だという仮説。あれが真実味を帯びてきたな…。」


俺は自分で立てた仮説なのに、当たっていなければいいのにと、初めて思ってしまった。


「取り敢えず、何処から発信されたのか、基地局を調べてもらおう。考えるのは、それからだ…」

「そうですね…。大野さん、翔くんの身辺警護を強化してもらえますか?」


「そうだな。探偵事務所の周りは相葉ちゃん一人では限界がある。松岡警部補に頼んでみよう。」

「お願いします…。」



「翔くんは、どうしてる?」

「今やっと少し落ち着きました。でも、不安な気持ちは、そう簡単には無くならないと思います。」


「…そうだな。しばらくは側についててくれるか?」

「もちろんです。」


「今夜は、我々が探偵事務所の周りの警護に当たる。翔くんのこと、頼むな?」

「はい…。」


「これからは長丁場になるかも知れない。今夜は相葉ちゃんもしっかり寝とけよ?」

「……はい。」



翔くんの部屋のドアを開けた。


ベッドに横になっていても、目は瞑っていない。


「雅紀さん…」

「うん?どうした?眠れないの?」


「…うん。」

「一緒に寝よっか?」


「……。」

「こんな時くらい、甘えてもいいんだよ?」


「…手を」

「…うん?」


「握ってて…もらえますか?」

「ふふ…。いいよ?そうだ…腕枕してあげる。」




腕枕をして翔くんを抱き寄せると、翔くんの甘い匂いがした。



こんな時に不謹慎だが、俺は翔くんのことを愛おしいと思った。








…つづく。