〜雅紀の章

翔にぃとカラダを繋げるようになってから…

ボクは時々、不思議な夢を見るようになった。


それは…


テレビで見るお侍さんとは少し違うけど…

なんだか昔の武士…っていうのかな、そんな人が時々夢に出てくるようになった。



翔にぃは、どこかのお城のお殿さまで、ボクは家来みたいで…

翔にぃのお殿さまの後ろを歩いている夢だったり、翔にぃのお殿さまに抱っこされたり…


でも、翔にぃが二人いて…

ボクには翔にぃと、『もう一人の翔にぃ』の区別が付いてた。

何となくだけど、『匂い』と『足音』が違う。


夢の中の翔にぃには、左腕に黒子がなくて、今ボクの隣にいる翔にぃには黒子がある。それは夢の中の、『もう一人の翔にぃ』と同じところにある。


これって、どういうことなのかな?



夢の中で時々ボクの名前を呼ぶ『もう一人の翔にぃ』の声は、どこか聞き覚えのある声で…


でも、翔にぃの声とはやっぱり少し違う。


翔にぃの声は優しくて甘くて…ボクは時々蕩けそうになる…。



『もう一人の翔にぃ』の声は、見守ってくれてる、そんな感じがした。



就職が決まった翔にぃは、高校受験を控えてるボクのために勉強を教えてくれてる。

それは、ボクの部屋だったり、翔にぃの部屋だったり…。


お互いの家の、お互いの部屋を行き来していた。



ある日、翔にぃはネットで頼んだっていうキャスター付きの姿見を買って、部屋に置いてた。


「…どう?雅紀…」
「どう?って…なにが?」


「ふふ…。まぁ…見ててよ?」


翔にぃは、ベッドと向かい合わせに姿見を移動させると、「ここに座ってみて?」
と、その場所を『トントン』と軽く叩いた。


「…こう?」

ボクは、姿見の正面になるように座った。



「……しようか?」

翔にぃは、ボクの耳元に低く囁いた。







…つづく。