Side−S

先輩の三宅さんと、屋上に二人きり…。

途中の自販機で買ってもらった缶コーヒーを手にした。


「俺が奢るの、って珍しいんだよ?」
「あ…ありがとうございます。いただきます。」

「フフ…。ホント素直だな?櫻井って…」
「あ…どうも。」

三宅さんは、缶コーヒーをひと口飲むと、
「じゃあ…本題に入るね?」って、笑ってる。

「櫻井は、さ?真面目じゃん?あと…人と話すのが苦手、とかもないし…。」
「…はい?」

「森田は、さ…。ちょっと、取っ付きにくいじゃん?」
「…あ…あの。」

「気を使わなくていいよ?ホントのこと言って?」
「…少し…苦手…かな?」

「フフ…。やっぱり…な。」
「…すみません。」


「あ…別に謝んなくていいの。森田はああ見えて、そのまんまだから…。」
「…あの」

「俺さ、同期なの、森田と。あいつ、入りたての頃、当時キャップだった東山さんからしょっちゅう叱られてたんだ…。」
「東山部長から?」

「今の部長からしたら、想像つかないかもしんないけど…。今の櫻井みたいに、森田は記事を書いても書いても、オッケーが出なくてさ…。」
「……。」

「森田はかなり落ち込んでた。でも東山さんから、『見込みがあるから叱るんだ』って、言われてからは、食らいつくように踏ん張ってた。」
「…そんなことが。」

「森田は櫻井を見てて、新人の頃の自分を重ねてたんだと思うよ?口下手だから、あれはあれで、アイツなりの励まし方なんだけど。」
「…えっ?」

「まぁ…。東山さんの励まし方って言うか、叱り方のほうが、もっと凄かったけどな?」
「…そう…でしたか。」

「それと、次の取材のことだけど…。」
「…はい。」

「『ヒント』は『人脈』」
「『人脈』?」


「そっ!まあ…頑張って?期待してるよ!」

三宅さんはオレの肩を『ポン!』と軽く叩くと、一足先に屋上を降りて行った。



…人脈かぁ。


……よぉし!行くか!


オレは、勢いよく缶コーヒーを飲み干した。




…つづく。